「ファンサービス」の意味は、パンチラ、乳揺れ?−海外おたく用語を見てみる。 

 
前回、英語圏での「ストライクウィッチーズ」の反応に関するエントリーを書かせていただいたのですが、その中で一つおもしろいネタがありましたので、ご紹介いたします。
 
今回は、英語圏での「fanservice(=ファンサービス)」という言葉の使い方についてのお話です。
 
具体的には、Wikipediaの「Strike Witches」の項目で、以下のように使われていました。
 

This is part of the reason the Witches do not wear pants while on standby (providing a vehicle for much of the series' fanservice.)

 
最初は単純に、「fanservice」=「ファンサービス」かな? と思ったのですが、テレビアニメという表現分野の特性上、ここは「サービス・カット」と訳をした方がよりシックリくるようです。
ただ、「fanservice」という単語が、自分の中で妙に引っかかったので、より詳しく調べてみたのですが、その際に分かった、ちょっと興味深い話。
 
日本で「ファンサービス」といえば、芸能、スポーツ、芸術文化といった世界で活躍をされている著名人が、ファンに対して行うアピールという意味で使われる場合が多いと思います。
 
例えば、テクノポップ・アイドルのPerfumeが、ブレイク後に、廃盤になっていた過去作品を収録した編集盤を発売したのですが、そのタイトルが「Fan Service」でした。(同名のDVDも販売されています)
 

Fan Service ~Prima Box~(DVD付)

Fan Service ~Prima Box~(DVD付)

 
このように、「ファンサービス」という言葉は、芸能界や一般のマスコミでも頻繁に使われている言葉です。
 
ところが、海外で使用される「fanservice」という言葉は日本のそれとは違い、非常に限定的かつ偏った意味を持つようなのです。
 
Wikipediaで「Fan service」の項目を見てみましょう。
 
 

■Fan service - Wikipedia

Fan service (ファンサービス, fan sābisu?), fanservice, service cut (サービスカット, sābisu katto?), or simply service (サービス, sābisu?), is a vaguely defined term primarily used for Japanese anime and manga to refer to elements in a story that are unnecessary to a storyline and are designed to amuse or excite the audience with sexually-derived content. The term can be applied more generally to something that is done solely to please fans.

While the term is used primarily with respect to Japanese animation, any gratuitous nudity or sexual exposure may be considered to be fan service. Note, that where nudity or sexual exposure is to be expected, it would not usually be considered fan service, e.g. nudity in a pornographic movie would not qualify.

Use of the term is sometimes derogatory when used in criticism of clumsy, pandering use of visual fashions, or if the stories lack substance, such that fashions are the only thing notable about a series. Many fanservice treatments can be creative and unique, and hence an audience unfamiliar with the fandom of a story may not understand these treatments ("easter eggs") or their meaning. This term is, however, occasionally used in the video gaming community, notably by players of MMORPGs. The meaning remains mostly the same―content added for the sake of fans and not for any actual gaming value.

 
以下、例の如く、私の稚拙な英語力を用いたインチキ訳です。
長文でなおかつ、下手な訳のせいで、読みづらい…上に、そもそも間違いだらけかもしれませんが、お付き合いいただければ幸いです*1
 

ファンサービス、サービス・カット、あるいは簡潔にサービスとは、日本のアニメや漫画で、ストーリーには直接関係のない性的なニュアンスで視聴者を楽しませたり、興奮させたりすることを目的とした、物語の中での要素に対して使われる曖昧な定義の言葉です。この言葉は一般的に、ファンを喜ばせる為になされた表現に用いられます。
 
この言葉は、主に日本のアニメに敬意を表して使われます、(ストーリー上)必要のない裸や、性的な露出こそが、ファンサービスであると言えます。※注.(表現上)裸や性的な露出が当たり前である場合は、それはファンサービスではありません。例えば、ポルノ映画に出てくる裸などがそうです。
 
こうした言葉は時に、(アニメ作品の)コスチュームが過激すぎるといった的外れな批評や、劇中でコスチューム以外に見るものがなく、ストーリーが薄っぺらい場合などに、軽蔑的に使われます。ファンサービス表現の多くは、創造的でユニークなものです、それ故、作品に親しみのない視聴者は、そうしたおまけ要素に気付かず、それが何を意味しているのかも分かりません。そもそも、ファンサービスという言葉は、テレビ・ゲーム、特にMMORPGのファンの間で使われるものでした。この意味では、ゲームの内容とは関係なく、ファンのためのおまけ要素を表す言葉として、今も使われています。

 
上記の解説を読む限り、どうやら、英語圏で使われる「fanservice」とは、アニメや漫画のちょっぴりエッチなシーンに対して使われる言葉のようなのです。
 
これは自分の妄想でしかないのですが、「fanservice」とは、英語圏に本来あったものではなく、「Anime」のように和製英語が逆輸入されて、海外のおたくコミュニティーの中で定着した言葉なのではないでしょうか?
 
Wikipedeiaでは続けて、「性的な表現」、「コスプレ」、「オマージュ」という3つの項目を設けて、それぞれの具体例を紹介しています。
 
「コスプレ」ではアニメのキャラクターのコスチュームに関して言及をし、主なコスプレの種類についてリスト化をしています。「MOFUKU」「MIKO」「Hadaka apron」といったローマ字の羅列が並んでいる様は、潔すぎて清々しさすら感じさせますね(笑)。
 
「オマージュ」では、アニメや漫画といった表現分野ではなく、タランティーノティム・バートンの作品、「マトリックス」といった映画における、元ネタ探しやトリビアのような、劇中でのおたく要素に対しての解説が行われています。
実写映画でも「fanservice」という言葉は使われるようですが、引用例を見ている限り、この用法もやはり、多分におたく的なニュアンスを含んでいるようです。
 
一応映画ファンとして「オマージュ」の項目に書かれた用法、表現も多分には気になるのですが、あんまり艶っぽい言葉が出てこず、やる気がでないので(笑)。
最初に書かれている「性的な表現」の項目について詳しく見てみましょう。
 
 

■性的な表現

典型的なのは、視聴者の心をくすぐる(通常は女性の、時には男性の)ヌード姿や、肉体的な魅力を強調した、きわどい性表現です。同性愛者には、また異なったファンサービスがあります。
 
多くの映画や、80〜90年代のアニメ、最近では多くのテレビアニメで温泉(日本の温かい泉です)旅行というかたちで、あるいは休日のエピソードの「お約束」として、シャワーシーンが用いられます。近頃は、シリーズの中でも特別なエピソードとして、普段着姿との比較のために、南国のシチュエーションでキャラクターの水着姿を見せたりします。
 
アニメではパンチラと乳揺れという二種類の定番ファンサービスがあります。
 
ファンサービスはほとんどのアニメに浸透をしていますが、OVAエイケンや、天上天下といった作品がその最たる例です。ナルトやBLEACH、ワンピースといった少年向けのアニメでさえ、時に、性的なファンサービスを用います。同様に、スタジオ・ファンタジアAIKaナジカ電撃作戦が、パンチラアニメの典型例として、よく知られています。
 
3番目の例は、永井豪がキューティー・ハニー(1973〜1974)で初めて用いた、裸になっての変身シーンです。
 
ファンサービスの有名な例の一つとして、アニメ映画ストリートファイター2春麗のシャワーシーンがあります。このシーンは後に、米国版にてカットされてしまいますが、DVDの発売時には追加されました。
 
初めて、パンチラが出てきた作品は、1963年の鉄腕アトムです。ただし、これはファンサービスに見えますが、性的な表現としてではなく、コメディーとしての表現のようです。

 
異なる言語で書かれているとはいえ、Wikipediaという集合知を前提としたツールを用いて、「曖昧な定義の言葉」を何とかして明文化しようとしている様が何とも微笑ましく、かつ同じアニメファンとして胸を打つものがあります。
エイケン」や「ナジカ電撃作戦」といったコアな作品名を列挙しながらも、漫画表現の始祖として手塚治虫にまで言及しているのも興味深い。
 
ただ、議論のテーマが、パンチラについてだというのが何とも…。
 
しかし、ファンサービス(=サービス・カット)には、パンチラと乳揺れの二種類の定番があり…なんて一文、こうやって体系化されると、何だか妙な説得力がありますね。
 
 

■「fanservice」をwebで検索してみると…。

ちなみに、「fanservice」を画像検索してみるとこんな感じです。
 
<使用例>

Sunrise fanservice GO! = サンライズ作品のお色気シーン、キタコレ!みたいな感じ?
 
画像検索の結果を見た限りでは、「Sexual」「Cosplay」「Homage」と三つの用法がありましたが、やはりアニメの「Sexual」な表現を形容する際に用いるのが一般的なようですね。
 
またwebで検索をして見つけた、「Anime Fanservice Image Gallery」というサイトでは、日本のアニメのfanserviceのキャプ画像を多数展示しています。
※18歳未満は閲覧禁止!
Fate/ Stay Nightのように比較的新し目の作品から、80年代のHentai Animeまで網羅していて、言いようのないグルーヴ…というか、何だか異様な迫力を放っています。
いや〜、色々な意味でギリギリですね。*2
 
 

■まとめ

海外のアニメファンには、性表現が比較的オープンな日本のアニメは、かなり特異に見え、そうした要素を明文化、系列化しようと整理した結果、それらの言葉を表現する単語として「fanservice」という概念は生まれたのではないでしょうか?
 
海の向こうでも、アニメのキャラクターのちょっとエッチな姿にドキドキしている仲間がいるのだと思うと、何だか親近感がわいてきます。
 
でも、最近じゃ日本も規制が厳しいんですよねぇ…。
海外アニメファンのfanserviceに対する需要を満たすためには、日本のテレビ局は、もっと頑張るべきだ!
とりあえず、Tokyo MX辺りが!
  
来週もサービス、サービスゥ!(←言いたいだけ)
 
 
 
 

*1:本当に、下手な訳ですいません…。間違いや勘違いがありましたら、コメント欄等でご指摘いただければ幸いです。

*2:いや、アウトだろ。