アニメ監督と、監督作品における常連声優について考えてみる

 
私は映画を観るのが大好きです。
で、色々な作品を観ていると、特定の役者さんを使い続ける監督というのが存在することに、ある日ふと気が付くわけです。
ジョン・カーペンターにおけるカート・ラッセルとか、ティム・バートンにおけるジョニー・デップとか、ウディ・アレンにおけるダイアン・キートンスカーレット・ヨハンソンとかとか。
そういう映画監督ほど、個性的な作品が多く良作や傑作が沢山ありますし、また、常連俳優をスクリーンの中から探し出す、なんて映画好きならではの楽しみもあります。
 
アニメの世界でも映画と同じく、同じ声優さんを自身の作品に起用し続ける、というアニメ監督さんがいらっしゃいますね。
そこで、ちょっとシネフィルっぽい目線から、「この声優さんは、この監督のアニメで出演されていることが多い」と自分が感じた組み合わせを、いくつか羅列してみました。
 
出演回数を計測したわけではなく、あくまで、自分の「イメージ」「印象」だけで書き出したものなので、人によっては全然違う、なんてこともあるかと思いますが、「あ〜この人は、××監督の作品を、こんな印象で観てるんだ〜」くらいの感覚で読んでいただければ幸いです。
 
 

谷口悟朗監督作品

スクライド 5.1ch DVD-BOX (期間限定生産)

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谷口悟朗作品 = 保志総一朗
 
無限のリヴァイアス」で「相葉祐希」、「スクライド」で主役の「カズマ」、「ガン×ソード」の「ミハエル」、「コードギアス 反逆のルルーシュR2」でナイトオブラウンズの一人「ジノ・ヴァインベルグ」を演じ、谷口作品の常連声優のイメージが強い、保志総一朗さん。
特に、「スクライド」での激しい役どころは、従来のイメージを一新し、演ずる役柄の幅を広げることにも成功しました。
他、谷口作品だと、「プラテネス」にも出演されている…みたいです(私は、未見)。
 
 

赤根和樹監督作品

ヒートガイジェイ 1 [DVD]

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赤根和樹作品 = 千葉紗子白石涼子藤原啓治
 
赤根監督のアニメを見ていて、個人的に強く印象に残るのは、やっぱり千葉紗子さん。
監督が代表作である「天空のエスカフローネ」から一転して、男っぽい作品を作っていた時期に「ヒートガイジェイ」で、ヒロイン「キョウコ・ミルシャン」役を演じ(後期エンディングの主題歌も担当)、2005年の「ノエイン もうひとりの君へ」では、主人公の親友である「長谷部アイ」と、アイの未来の姿である「アマミク」役を。ゆうきまさみの原作漫画をオリジナルの解釈でアニメ化した「鉄腕バーディー DECODE」「鉄腕バーディー DECODE:02」では主役の宇宙人捜査官「バーディー・シフォン=アルティラ」を演じられています。
主役を張った「鉄腕バーディー」では、「バーディー」「幼少期のバーディー」、地球での仮の姿である不思議系アイドル「有田しおん」と、声質と性格が異なる三役を演じられていて、見ごたえ抜群です!
 
また、白石涼子さんと藤原啓治さんの活躍も目立ちます。
お二方は「ノエイン」では、それぞれ「トビ」と「郡山京司」役で、「鉄腕バーディー」では、「千明和義」と「室戸圭介」役で、赤根作品に出演。
特に、白石さんは、「鉄腕バーディー」の一期では、殺人マリオネットの「オンディーヌ」、二期では宇宙人逃亡者の「タセラ」役と、シリーズ毎に千明以外の役も演じ、藤原さんとモブキャラの声も担当するなど、その演技力が監督から高く評価されている印象を受けます。
藤原さんは、「ヒートガイジェイ」にも出演されていましたよね。赤根作品に出てくる、おっさんキャラといえば、藤原啓治(笑)。
 
また、90年代に「天空のエスカフローネ」で主役を演じた坂本真綾さんが、「鉄腕バーディー」の「中杉小夜香」役で、赤根作品のヒロインとして戻ってきた、っていうのもファンとしては非常に感慨深かったりしますね。
 
 

■平池芳正監督作品

平池芳正作品 = 斎藤桃子
 
「同じ声優を使い続けるアニメ監督」といえば、平池芳正監督。
SF美少女アクション「SoltyRei」で、単独監督デビューを果たした平池監督は、次作である「スケッチブック 〜full color's〜」でも、浅野真澄さん、桑谷夏子さん、伊藤静さん、田村ゆかりさん等、「SoltyRei」に出演していた声優陣を、引き続き起用しました。江知永さんや、能登麻美子さん、田坂秀樹さんもそうですよね。
 
中でも、新人ながら「SoltyRei」で主役に大抜擢された斎藤桃子さんは、「スケッチブック」で原作漫画の人気キャラクターである「空閑木陰」や、その他多くの動物キャラ、モブキャラの声を担当。ファンの間に、強い印象を残しました。
 
また、上記の二作品に出演されている、広橋涼さんや、大原さやかさん、中田譲治さん、下野紘さんに至っては、佐藤順一監督との競作である「カレイドスター 新たなる翼」からの付き合いでもあります。映画、ドラマの文脈で見立てたら、三谷幸喜さん辺りに例えられそうな徹底ぶりですね。
未だ、監督作品は2本にも関わらず、脇を演技力の高い実力派声優で固めながら、主役キャラには、新人声優を起用するなど、そのヒューマニズム溢れる作風とも相まって、早くも独自の「色」を確立している平池監督。声優さんの起用法に関しても、どうやら強いこだわりがあるようですね。
 
 

小林治監督作品

BECK〈DVD-BOX I〉

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小林治作品 = 掟ポルシェ
 
BECK」「Paradise Kiss」「魔法遣いに大切なこと 〜夏のソラ〜」と小林治監督作品にクレジットされているのは、漢気啓蒙ニューウェーヴバンド、「ロマンポルシェ。」のヴォーカル(と、説教)担当の、掟ポルシェ氏!
今のところ、小林作品には、皆勤賞なのかな? どのアニメでも、劇中で何ともいえない「味」を醸し出している「い〜キャラ」を演じられています。
 
特定の声優さんではなく、ミュージシャンを自身の作品に使い続けているというのが、何とも小林治監督らしいですよね。
 
 

新房昭之監督作品

さよなら絶望先生 特装版1 [DVD]

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新房昭之作品 = 新谷良子沢城みゆき松来未祐
 
ハチャメチャな演出と、アナーキーなギャグが異彩を放つ、新房昭之関連の作品の中でも、特に名前を目にする機会が多いのが、新谷良子さん、沢城みゆきさん、松来未祐さん。
 
新谷さんは、「ぱにぽにだっしゅ!」で「宮田晶」役、「ひだまりスケッチ」で「沙英」役、「さよなら絶望先生」「俗・さよなら絶望先生」で「日塔奈美」役、「まりあ†ほりっく」で「桃井サチ」を演じ、「さよなら絶望先生」のwebラジオでは、パーソナリティーを担当するなど、新房作品には欠かせない声優の一人です。
演じる役どころも、ドジっ娘ツンデレ、ツッコミ担当、ロリッ娘とバラッバラ。正直、主役級のキャラは、「ひだまりスケッチ」の沙英さんくらいなのですが、アニメを見ていると毎回、妙に印象に残る役どころだったりします。
 
沢城みゆきさんは、「ぱにぽに」で「芹沢茜」役、「ひだまりスケッチ」で「大家さん」役、「絶望先生」で「関内・マリア・太郎」と「ことのん」(笑)役、「まりあ†ほりっく」で「寮長先生」の声を担当。
幅広い役どころを演じられる、巧みな声質の使い分けと、高い演技力の持ち主なので、色々な作品に出ていらっしゃる声優さんですが、「ネギま!?」や「絶望先生」での飛び道具的な使われ方を見るにつけ、「監督から、愛されてるな〜」という印象を受けます。
 
松来さんは、あの独特な声が新房ギャグとの親和性が高いのか、メディア、吉野屋先生、藤吉晴美、志木絢璃、与那国さん、とこれまた新房作品には多数出演。
 
新房監督は、声優をネタにするというギャグを劇中で頻繁に使用しますし、アニメ化する作品も多数のキャラクターが登場するモノが多いので、本当に沢山の声優さんが監督作品にクレジットされているのですが、個人的に「新房作品」というので印象が強いのは、上記のお三方だったりします。この辺は、人によって変わってくるかもですね。
 
あと、新房作品の常連声優さんですと、斉藤千和さん(「月詠」と「ぱにぽに」の二つの作品で主役)、野中藍さん、小林ゆうさん、男性では、神谷浩史さん、杉田智和さん、といったところでしょうか。
 
 

山本寛監督作品

らき☆すた 1 通常版 [DVD]

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山本寛作品 = 立木文彦、くじら
 
実質、監督作品は今のところ「かんなぎ」だけなんですけど、「らき☆すた」での立木文彦さんとくじらさんの飛び道具的な起用のインパクトが強すぎです。
山本監督といえば、格闘技イベント「PRIDE」のナレーションで格闘技ファンの間で絶大な人気があった立木文彦さんを、逆輸入的にアニメファンに知らしめた張本人。
かんなぎ」に出てきた老夫婦も、このコンビでしたし、今後の監督作でも、このお二方は出演されるでしょうね、きっと。
 
 

大地丙太郎桜井弘明監督作品

CROMARTIE HIGH SCHOOL [DVD]

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大地、桜井作品 = 齋藤彩夏
 
十兵衛ちゃん」や「おじゃる丸」の「貧ちゃん」、「セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん」のナレーションや「魁!!クロマティ高校」最終回の「ゲロたん」など、大地作品や桜井作品のコメディーセンスに、あの個性的な声で彩を加えるのが、齋藤彩夏さん。
 
自分の中で、大地、桜井アニメといえば、齋藤彩夏さん! というイメージがあったんですが、ネットでちょっと調べてみたら、「こどものおもちゃ」や「今、そこにいる僕」にも出演をされていたんですね。
クロ高最終回の「ゲロたん」は笑ったな〜。
 
 

■まとめ

…う〜ん、楽しすぎてキリがないのでこの辺で。
こうやって、観てみると、同じ声優さんを使い続けるアニメ監督さんって、映画と同様、個性的な作品を作られる方が多い気がしますね。それだけ、作風が確立しているってことなのかな? また、常連である声優さんの顔ぶれから、アニメ監督の個性を図る、という見方もできそうです。こういったところに注目してアニメを観るのも、なかなかおもしろいかもしれません。
新房監督辺りは、観る人の声優さんに対する思い入れや、好きな作品で印象が大きく分かれそうですね。
 
「このアニメ監督なら、この声優」なんて組み合わせが他にもありましたら、コメント欄などで教えていただけると嬉しいです。
 
 
<関連エントリ>
■アニメ番組の主題歌におけるタイアップは、もはや悪ではない
■新房昭之、山本寛両監督の作品にみる、とんねるずの面影
 
<関連URL>
■アニメ監督と常連声優(岸・新房・谷口とか)(みまつや@生きてるぶろぐ様)
07年の時点で、アニメ監督と声優さんについて書かれているBlogのエントリです。数字が出ている分、多分こちらの印象の方が、うちよりも正しいと思います(笑)。そうか、谷口作品には若本さんが、常連なんですね〜。言われて気がつきました…。