音楽で選ぶ2000年代を象徴するアニメ10本

 
■ゼロ年代を代表するアニメ10 karimikarimi選 選考が難航(karimikarimi様)
■ぼくのゼロ年代アニメ・ベスト10(愛・蔵太のもう少し調べて書きたい日記様)
 
上記のエントリを拝見して、2000年代のアニメ音楽を象徴する作品を10個選出してみるのもおもしろいかなと思い、自分なりに選んだ10作品を並べてみました。
 
 

ケロロ軍曹


 
先ずは、「ケロロ軍曹」。
元CINEMAのメンバーで、ムーンライダーズ鈴木慶一氏の妻でもあった、80年代ジャパニーズ・テクノポップシーンの重要人物、鈴木さえ子さんが劇中のBGMを担当。アニメ自体の楽曲も非常に豪華な内容になっており、それだけでも10作品の内の1作として選ぶには充分ではないかなと。
それに加えて、時流のお笑い芸人さんとのタイアップ楽曲の数々。
なだぎ武さんと友近さん(ディラン&キャサリン)、麒麟(平仮名表記で「きりん」名義)、ハリセンボン、NON STYLE、おぎはやぎ、藤崎マーケットアンタッチャブル若槻千夏さんとのユニット)、次長課長(「JK」名義)、そして現在のエンディングを担当している小島よしおさん…と、2000年代のお笑いブームを回顧する意味でもおもしろい作品だと思うんですよね。
2000年代に登場した新しいプロレスのスタイル「ハッスル」を掲げて、小川直也がその中に名を連ねていたのも如何にも時代性が出ていておもしろいかなと。
 
 

月詠 -MOON PHASE-


 
元々、自らのアルバムに水木一郎御大を招いて「マジンガーZ」のエンディング曲をカヴァーするなど、日本のアニメや漫画文化に非常に熱心だったフランス人DJ、Dimitri From Paris
そんな彼が、日本人女子高生(?)の声をサンプリングした自身の楽曲「Love Love Mode」をセルフリメイクした、Neko Mimi Modeでアニメファンに与えたインパクトといったら…。
日本のアニメや漫画文化が海外に与えた影響と、この後に続くシャフト作品における捻りまくった楽曲センスの数々(「まりあほりっく」のYMOカヴァーとか、「さよなら絶望先生」の大槻ケンヂさんとか、「夏のあらし!」の面影ラッキーホールとか…)を象徴するアニメ作品ではないかなと。
劇中曲の波のトリコになるように菊地成孔氏が作曲に携わっているのも見逃せません。
 
 

灼眼のシャナ


 
2000年代のアニメ主題歌におけるトレンドの一つとして、エロゲーの歌い手さんたちのメジャー化が挙げられるのではないかと思うのです。
米倉千尋さんや奥井雅美さんのような所謂「アニソン歌手」や、J-POP楽曲とのタイアップといった、90年代のアニメ主題歌群とは異なる、KOTOKOさんや、川田まみさん、MELLさんのような新しいアニメソングの歌い手たちのメジャーシーンへの登場は、エロゲー文化に疎く、彼女たちの出自を知らなかった自分のような人間にはかなりの衝撃でした。
そういった新しいアニメソングの歌い手さんが参加をされたアニメ作品は山のようにあるわけですが、その中で1作品選ぶとしたらコレです。劇場版でのスペシャルユニットLove Planet Fiveなんかは、ユニット結成の意義も含めて、そういった楽曲群の一つの集大成的イメージなんですよね。自分の中で。
 
 

巌窟王


 
イギリスのパンクバンド〜ニューウェーヴバンド、The Stranglersの中心人物であるJ.J.Burnelが主題歌とスコアの一部を担当したアニメ作品。
フランス人の血が流れるイギリス人としてこの世に生を受け、ソロアルバムでは汎ヨーロッパ的な思想と世界観をテクノ的なアプローチで表現する一方で、三島由紀夫と空手に心酔し、日本のニューウェーヴバンドをプロデュースするなど、親日家としての側面も持つジャン=ジャック・バーネル。
激しさと知性が同居するその音楽性が、耽美と狂気が入り混じる「巌窟王」という作品の世界観をより強固に観る者に印象付けました。
プロのミュージシャンが携わったアニメ作品といえば、他にもサムライチャンプルーなんかがあるわけですが、そんな中で「巌窟王」を選んだのは、10年後、20年後の音楽史、ロックミュージック史を見てみた時に、やはりそこにはThe StranglersとJ.J.Burnelの名前が刻まれているだろうという考えと、前述したJ.J.Burnelの国境観や音楽的傾向のアンビバレンツな魅力が作品に非常にマッチしているように感じたためです。
 
 

涼宮ハルヒの憂鬱


 
なんと言ってもハレ晴れユカイ。ED曲を真似て踊る映像がネット上に溢れました。
Youtubeのような動画サイト誕生以降のアニメ主題歌のアプローチっていうのものを考えた時に、やはりコレは外せないかなと。
キャラクターソングが軒並みオリコンランキングにランクインとか、劇中歌のマーケティング方法など、同じく京都アニメーションの作品であるらき☆すたけいおん!といった作品が起こしたムーブメントの雛形的な作品ですよね。
と、同時に畑亜貴さんの代表的な仕事という意味でも、10作の中に入れたい作品。
 
 

ギャラクシーエンジェル


 
自分の中での声優ソング枠です。
2000年代の初期に作られるも、各種メディアミックス(というか、そもそもアニメ版もメディアミックスの一部だったわけですが…)と幾度かに渡るアニメ化によって、息の長い作品となったギャラクシーエンジェル
主演声優によるユニットエンジェル隊のCDも、各種ソロ曲、デュエット曲、ドラマCD、ラジオ番組などの他種メディアの主題歌…と戦略的なマーケティングによって膨大な量がリリースされました。
他にも、ミュージカル化や各種タイアップ楽曲などなど…「いったい、『Eternal Love』だけで何ヴァージョンあるんだよ!?」と叫びたくなる程のムチャな展開は、如何にもブロッコリーらしかった。
あとは、やっぱり歌い手としての新谷良子さんにスポットライトをあてた功績は大きかったな、なんて。
 
 

鋼の錬金術師


 
ポルノグラフティASIAN KUNG-FU GENERATIONなど、OP、EDでタイアップされた楽曲が次々に大ヒット。更にそれらを収めたコンピアルバムも、これまた大ヒット…と、作品が持つ価値とは別の部分でも強いインパクトとコマーシャルな影響力を持っていたアニメ。
単純に後から見た時に、当時の歌謡曲の流行や状況を振り返ることができると思うんですよね。
J-POP楽曲との強い結びつきを持ち、タイアップ曲やコンピがヒット…というと、他にも機動戦士ガンダムSEEDBLOOD+といった土曜6時のTBSアニメや、NARUTOBLEACHなんかのジャンプ系アニメなんかもそうですよね。
 
 

BECK


 
ミュージシャンが声優としてアニメに参加をしたり、インディーズ系のバンドが楽曲を提供していたのが「BECK」。
個人的には、90年代半ばくらいから巻き起こったインディーズブームの集大成的なイメージがある作品です。
実際、「BECK」がアニメ化される少し前くらいから、その辺の音楽シーンの風景がちょっとづつ変化をしていった印象があるんですよね。ナンバーガール辺りのジャパニーズオルタナティヴに影響を受けたバンドが一斉に登場をしだしたりとか…。
そういった記録としても外せない一本です。
 
 

交響詩エウレカセブン


 
音楽的な語彙とテクノ、ダンス・ミュージックの数々を作品の世界観や設定にふんだんに盛り込んだ「エウレカセブン」。
2000年代のアニメで、なおかつ音に溢れ、サブカルシーンとの結びつきも強かった。
 
 

魁!!クロマティ高校


 
すいません。最後の一本は、完全に自分の好みです…。
野中英次先生の原作漫画を、何故か桜井弘明監督がアニメ化。案の定、ハチャメチャな演出とギャグの数々によってデタラメな改変を施され、原作漫画とはまた趣の異なるアニメ作品として生まれ変わったわけですが、その際、音楽を担当したのが日本のプログレバンド美狂乱
…何故、「魁!!クロマティ高校」でプログレ…? 確か、一部の楽曲では桜井監督と共演もしてましたよね。
DVDやCDのジャケットでの、ロック・ミュージックのパロディも楽しかった。
個人的に非常に音楽面で強いインパクトを受けた作品です。
 
 

■まとめ

「2000年代ってこういうの流行ってたよね」とか「2000年代のアニメ音楽で、こんなおもしろいものあったよね」なんて後で振り返った時に思えるような作品群を選んだつもりですが、自分の目の届いていない作品や、途中でこぼれ落ちている作品も多々あると思います。
あとは、自分の思い違い、勘違いで書いてしまっている部分もあるかもです…。
 
何より、ハロプロ関連のアニメが丸っきり抜けているし、各種キャラソンがヒットしたテニスの王子様なんかを無視している時点で片手落ちもいいところなのですが、「音楽好きが見た、音楽的魅力に溢れたアニメ作品」といった具合に一つの価値観として見ていただけると幸いです。
 
最近だと、化物語のようにネット発のミュージシャンによるアニメ主題歌なんて流れも、如何にも2000年代っぽいなと思ったのですが、それなんかは今後より一般的になっていくのかなと。
まぁ、来年、再来年…と、2010年代。これからのアニメと音楽を巡る冒険がどういう方向性で向かっていくのか、今から非常に楽しみですね。