描き文字による演出が凄いエロ漫画 - みた森たつや「みえないさん」

tunderealrovski2009-09-27

 
最近、描き文字に注目をしてエロ漫画を読むことに凝っているんですが、現在発売中のコミックメガストア11月号」に掲載されている、みた森たつや先生の「みえないさん」という短編が、漫画内で描き文字を非常に効果的に使用していた上に、出てくるヒロインのキャラクターが思いっきり自分好みで、描き文字的にもヒロイン的にも非常にオイシイ作品でした。
 


 
なので、雑誌が店頭から消えてバックナンバー化してしまう前に、ちょっと感想を書いておきたいと思います。
 
 

■先ずは、簡単にストーリーのご紹介を…

大学生の北浦くんは「アパート並に安かった」という破格の家賃の一軒家に引越しをし、広い家を利用して大学のサークル仲間の溜まり場にしたりと、気ままな一人暮らしをエンジョイしていました。
しかし、家賃が安いのにはやはりそれなりの理由があったようで、程なくして家には様々な怪奇現象が起き始めます。
そして、段々と「その手のモノ」に対する感覚も鋭敏になってきた北浦くんは、とうとう家の中で胸をはだけた女の幽霊を目撃してしまうのです。
 


 
…が、北浦くんは「触らぬ神に祟りなし」とばかりに、徹底的に無視を決め込み、見なかったことにしてしまいます。
そのため、幽霊の「みえないさん」は自分の姿が誰にも見えていないと勘違いをし、調子に乗って露出を段々とエスカレートさせていくのです。
 
北浦くんがご飯を食べている前で素っ裸になったり、お風呂場で「くぱあ」をやったり…といった回想シーンを挟んで、日に日にその姿もハッキリとし始めていく幽霊のみえないさん。
遂には、触れることができるようになるまで実体化が進んだみえないさんは、ある日北浦くんと接触をしてしまいます。実は自分の恥ずかしい姿が、ずっと相手に見えていたことを知ったみえないさんは…。
 
「みえないさん」は、「幽霊」という人外のキャラクターをヒロインに据えビザールな漫画世界を構築しつつも、ギャグタッチで明るくストーリーが展開していく様が実にみた森作品らしい、ハートフルで楽しい漫画です。
 
 

■「みえないさん」における描き文字の演出

この作品の中で特におもしろいのが、描き文字によるみえないさんの台詞の演出です。
 
最初にみえないさんの姿は北浦くんには見えていないわけですが、「人に見られたい」というみえないさんの気持ちによって次第にその姿はハッキリとしていきます。この時点ではみえないさんには台詞が一切ないのですが、今度は北浦くんと「話がしたい」と思うことで相手に気持ちが伝わるようになるのです。
その時の台詞は、全てフキダシなしの描き文字で表現をされています。
 


 
幽霊と人間という違いはあれど、お互いの気持ちが通じるようになった二人の距離は一気に縮まるのですが、それにつれて声までハッキリと聞こえるようになります。
すると、みえないさんの台詞はフキダシ付きの描き文字で描かれ始め、最終的には写植による台詞へと段階的に変化していくのです
 


 


 
劇中ではみえないさんの北浦くんに対する、「見られたい」「話したい」「触れられたい」という強い思いにより二人の距離が徐々と近づいていくことで、幽霊であるみえないさんの実体化が進んでいき、その存在感は増していきます。
 
劇中での、みえないさんの身体が「見えない → 見えるようになる → 触れられるようになる」という視覚、身体面での進展と、「コミュニケーションが取れない → 相手の心の声が分かるようになる → 話している声が聞こえるようになる」という聴覚、心情面での進展、そしてみえないさんと北浦くんの距離感という3つの要素が見事にシンクロをしていて、短編ながらも登場人物の関係性に非常に深い奥行きを与えることに成功しています。
 
そしてその過程における質感を、台詞やフキダシの有無、描き文字と写植の使い分けによって段階的に表現をした作者のアイデアと漫画表現の巧さが本作では光っています。
 
 

■まとめ

序盤ではヒロインが一切喋らないぶん、主人公のモノローグを中心に物語は進んでいくのですが、それによってコミカルな作品の雰囲気に、若干のセンチメンタルな空気感が添えられているにも好印象です。
 
私は、みた森先生の漫画が好きで結構昔から追いかけているんですが、「みえないさん」はみた森先生の短編作品の中でも一番か二番目くらいに好きな作品でした。
みた森先生って自分の中では作劇、作画共に常に安心をして読める、安定した作家さんというイメージなのですが、時折、漫画の中にこういうおもしろいテクニックを使った冒険を挟み込んできてくれるのが、また堪らないんですよね。
 
あと、個人的に幽霊っ娘が大好きなので(笑)。幽霊さんがヒロインで出てくるエロ漫画でお勧めの作品とかあったら、コメント欄なんかで教えていただけると物凄く嬉しいです!
 
僕と彼女のホント (ヤングチャンピオン烈コミックス)

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さらくーる 第1巻 (マンサンコミックス)

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みた森先生が連載をされていたゲーム四コマ雑誌(双葉社の「コミック ゲーム王国」)とか、ホントに子どもの頃に好きで読んでいたんですけど、アレも取っておけば良かったといっつも後悔をしています…。
「パラレルぱとろーるポプラ」とか「闘神伝」のパロディ漫画とか大好きだったのに。…母親っていうのは、何であんなに子どもの大事なモンをポイポイ捨てちゃうんでしょうね…(遠い目)。