「にゃんこい!」のテンポの良さと、作品が持つコミカルなスピード感

 

 
提供クレジットでボーカル曲が使用され、1話と2話では提供バックのイラストを担当されるなど、本編登場前からファンの注目を浴びていた小林ゆうさん。
そんな小林さんが演じる一ノ瀬凪も遂にストーリーに本格的に登場をし、ますます目が離せないにゃんこい!」
 
その一ノ瀬凪がメイン回となった第4話「美しい人」ですが、「にゃんこい!」という作品が持つテンポの良さと、個性的な演出が全面に出ていて、色々な意味で突き抜けた素晴らしい回でした。
 
なので今回は「にゃんこい!」のテンポとスピード感について考えつつ、遅ればせながら、第4話の感想文を書いてみたいと思います。
 
 

■「にゃんこい!」のテンポの良さと、ヒロインたち

にゃんこい!」が始まってから、ずっと魅力的に感じていたのが、その圧倒的なテンポの良さです。
しかも、ただ単にスムーズに話を進めていくというだけではなく、そこにキャラクターの魅力を引き立てる工夫や、コメディ作品としての笑いの要素なんかも加えて、もの凄く緻密にシナリオが構成されている印象を受けます。
 
例えば、第4話までで潤平を取り巻く4人の女性キャラクター…メインヒロインの楓、幼馴染の加奈子、お姉さんキャラの千鶴さん、そして楓の先輩である凪…が出揃ったわけですが、このヒロインたちの登場の仕方もなかなかに凝っていたように思うのです。
 
1話〜4話を振り返ってみると、第1話のAパートでは、潤平と猫たちの間でストーリーがドンドン進んでいき、Bパートに突入してから潤平と楓の交流がスタート。第2話の学園祭のエピソードは、1話で登場しなかった加奈子が主役のメイン回で、第3話のAパートでは、1話と2話にちょっとづつ出ていた千鶴さんが本格的に登場をし、Bパートでは楓との出会いを描く潤平の回想シーンに突入。そして、3話のラストで「引き」として登場していた凪が、第4話ではメインになり…といった具合に、この辺りも非常にテンポ良くキャラクターが物語に配置をされていたことに気付きます。
 
4話を使って、4人のキャラクターが出てくるわけですから、各回でヒロイン一人にスポットを当てて話を進めていくという方法もあったのでしょうが、そこで敢えてAパートとBパートというテレビアニメの構成を巧みに用いつつ、各ヒロインの個性や潤平との関係を描いていく上手さ。そして、千鶴さんのように1話丸々メインとして描かれていないキャラクターでも、事前に顔出しを行い伏線を張るなどして、印象を薄めないようにするといった工夫が、見ていてとにかく気持ちがいい。
各キャラクターの魅力を過不足なく描き、なおかつ作品のテンポの良さを大事にしてストーリーを進めていく上手さですよね。
 
このテンポの良さ、見せ方やシナリオの上手さっていうのは、「にゃんこい!」という作品の大きな魅力になっているように思います。そして、この小気味良さを、「にゃんこい!」のもう一つの魅力であるコメディの方向に大きく振り切ったのが、第4話「美しい人」だと思うのです。
 
 

■第4話「美しい人」 コメディシーンのドライブ感

第4話「美しい人」での、コメディシーンのテンポの良さ、そこから生まれるドライブ感はかなり強烈です。そして、そこに大きく貢献をしているのが、映像面における数々の見せ方の工夫。
 
例えば、1〜3話では比較的使用が控えめだった、アニメーションを使用した場面転換
 

 
猫のキャラクターを用いて、作品の可愛らしさやポップさを保ちつつも、画面はドンドン切り替わり、時間は凄いスピードで経過をしていく。スピード感に加えて、楽しさも同時に味わえる見せ方の上手さが目を引きます。
 
こういう直接的な時間の経過の表現に加えて、劇中で効果的に多用をされていたのが、文字情報を使った演出の数々です。
 

 
フキダシや文字を巧みに使用して、キャラクターの感情表現や心理描写、ストーリーの進行を加速させる。映像面でもシナリオ面でも、こうした文字を使った演出の数々が第4話のテンポの良さに与えていた影響というのは、相当に大きかったように思います。
 
また、劇中で大々的に使われていた、大袈裟でコミカルな演出の数々。例えば、加奈子に殴られた凪がリングの上で大の字になったり、凪が潤平に楓を巡っての決闘を申し込むシーンで背景に用いられた、雷鳴の轟きからのお花畑への転換など、イメージシーンを使用したキャラクターの動きや感情表現の見せ方や、
 

 
或いは、これまで以上に大胆に絵を崩して見せるリアクションの表現。
 

 
こうした場面でも、フキダシや文字を使用した演出が加わることにより、更にパワフルに、よりコミカルに、見ている側に作品の笑いのグルーヴが伝わってきます。
 
こうした個性的な演出に加えて、各声優さんの演技力の魅力を存分に味わえたのも、「美しい人」のおもしろさ。
にゃんこい!」という作品において、「いい味」出しまくりの主人公を演じる浅沼晋太郎さんのコミカルな演技や、劇中で強烈な個性を発揮していた、凪役の小林ゆうさん。
小林さんに関しては、凪の男っぽいイメージから声優に起用をされたのかな、なんて単純に考えていたのですが、感情表現や音域のふり幅が激しい小林さんの声とキャラクターが、まんま4話での凪のキャラクターの落差に合致していて、思わず大笑いしてしまいました。
 
 

■まとめ

とにかくテンポの良い「にゃんこい!」ですが、「美しい人」はシリーズを通して見てみても、突出したエピソードとなり得るかもしれません。元来の作品のテンポ感に加えて、個性的な演出や、声優さんの演技が加わることで、各キャラクターの言動やギャグに更にコミカルさが増したテンポの良さは、見ていてとにかく痛快で気持ちが良い。
 
もう、何度も何度も録画したものを見返しているんですが、全く飽きることがありません。ひたすらスピーディーで展開ビシバシ。車が猛スピードで走る、航空機が猛烈な速度で加速する、そういった物理的な速度とは別の、「にゃんこい!」という作品が持つ圧倒的なスピード感は、ドラッギーな中毒性すら有しているのかもしれませんね。
 
 

■おまけ

にゃんこい!」は、BGMの使い方にも凄くセンスを感じていて、毎回注目をして見ているんですが、今回は凪を家に送り届けた際に、「義理と任侠の世界に生きていらっしゃる方々」に囲まれた時のBGMが、布袋寅泰「Battle Without Honor Or Humanity」まんまで、もう、その絶妙なメロディの換骨奪胎っぷりに思わず笑ってしまいました。
 

 
クエンティン・タランティーノの「KILL BILL」のサントラに使われて有名になった曲ですが、元々は布袋も出演をした阪本順治監督の映画「新・仁義なき戦い」のメインテーマですからね。「義理と任侠の世界に生きていらっしゃる方々」との相性は抜群。オリジナルの深作版「仁義なき戦い」のテーマ"っぽい"曲も「にゃんこい!」では使われていますし、この辺のBGMのお遊びと曲の良さってのはホントにおもしろいと思います。
 

 
あとは、「夏目友人帳」のニャンコ先生"っぽい"猫とか、「咲-Saki-」の清澄高校、麻雀部"っぽい"人たちとかが出てきてたのも、如何にも川口監督らしいパロディ感覚というか、やっぱりこういうのは見てて楽しいなぁ〜と。
 
 
 
<関連エントリ>
■「にゃんこい!」におけるコメディの構造と、豊富なリアクション芸の描写について
 
<関連URL>
■パロあり、お風呂あり、小林ゆうここにあり!いろんな意味で突き抜けてしまった(笑) 『にゃんこい!』 第4話(まごプログレッシブ:Part2〜Scenes From A Memory〜)