「ささめきこと」 第4話で描かれた男性性の退場劇 - 男の子は去って、女の子は残った

 

 
ささめきことの第4話「4+1」を見ました。
純夏と汐が、朋絵とみやこのカップルと出会い、女の子が好きな女の子の為の部活「女子部」設立に向けて動き始めたことで、今後の物語の盛り上げを予感させるエピソードになっていたと思います。
 
劇中では、「女子部」という存在が登場したことで、より「女の子が好きな女の子」の存在にフォーカスが当てられた感じですが、そういった中で女子だけの空間を描く上手さ、そして朱宮以外の男子の存在感を物語からフェードアウトさせていく過程が非常に上手く描けていたなぁ〜と感じました。
 
今回は、ちょっとその辺りについて感想文を。
 
 

■男子と女子を分け隔てるもの

「4+1」は、先ず話のスタートからして、女子更衣室から始まります。
 

 
学校の中で男子が絶対に入れない場所、女子しか入ることができない場所。女子しか立ち入ることが許されないのは、純夏と汐が、朋絵とみやこといった「ささめきこと」の登場人物たちの心の内と一緒です。
そんな男子立ち入り禁止の領域から始まったエピソードでは、男子の姿が極力透明で無個性な存在として描かれ続けていたように思います。
 
廊下で転んだみやこを、男子が取り囲むシーンなんかはその最たる例。
 

 
男子全員が色の抜けたデフォルメされた姿として描かれ、そこに割って入る朋絵は色の付いた存在として描かれる。
無色と有色、デフォルメされた身体とそうじゃない身体の対比。朋絵はみやこにとって特別な思い人な訳で、その存在を際立たせる見せ方としては比較的オーソドックスな方法論だと思うんですけど、よく見ると、朋絵の後ろに写りこんでいるモブの女子も、男子とは違って色の付いた存在として描かれているんですよね。
 
つまり、特別なのは女の子であって、男の子はそうじゃない。みやこと朋絵にとって、また純夏や風間にとっても、女の子は好意や愛情の対象に成りえるけれど、男の子はそうじゃない。
このシーンでの男子と女子の描き方っていうのは、きっと彼女たちの目線によるものなんだと思います。
 
でも、彼女たちが通ってる学校って共学校なんですよね。そこにいる人間の大多数は、同性への秘めたる思いや、葛藤に煩わされなくてもよいわけです。
 

 
「4+1」では、物語が進展をするロケーションに屋上が使われていましたが、カメラは先ず一番初めに男子と女子が入り交じってバレーボールに興じる姿を映し出します。これなんかは、もうそのまま純夏のような同性への「ささめきこと」に悩むことのない平均的な男女の象徴で、主人公たちとの対比になっているのかなと。
 
そんな屋上に、みやこと朋絵に話を付けに行く純夏。自ずから墓穴を掘り、汐への思いを露呈してしまったところで、話は急展開し朋絵の崇高な(?)女子部設立の理念が語られ始めます。
 

「女子部。
それは止むを得ず、共学校に入ってしまった女の子が好きな女の子の為の部活。
男子になぞは目もくれず、話にも上らず、放課後のひと時を女の子だけで、ばかりで楽しく美しく過ごすのさ!」

 
ここで、見せ方としておもしろかったのが、女子部設立に燃える朋絵の後ろで、男の子たちがゾロゾロと屋上から出て行くところ。
 

 
女子部設立という目標ができたところで物語のピントは「女の子が好きな女の子」にグッと絞り込まれ、男の子は物語から退場をしてしまう。この辺の見せ方なんかは、本当に象徴的で上手いなぁ〜と思います。
 
と、ここまでは「男子がいない女子の空間」について書いてきましたが、その逆もまた然りで、一度は自身の空手道場に戻った純夏が、この「4+1」では練習に顔を出しません。
 

 
学校とは正反対に、男しかいない空間になってしまう空手道場。
 
こうしたいくつかの象徴的なシーンや演出によって浮かび上がってくるのは、「ささめきこと」に登場をする男性と女性、それぞれが存在するテリトリーの断絶…っていうと言葉が強すぎますけど、二つの性を隔てる境界線みたいなイメージですよね。
 
 

■BGMが喚起する「女の子が好きな女の子」のイメージ

また、視覚的な部分ではなく聴覚での演出に耳を澄ませてみると、ピアノとストリングス中心だったBGMが、今回のエピソードでは女性のコーラスが入った讃美歌チックな曲が多用されていることに気付かされます。
アニメの「ささめきこと」を見ている人たちが、そこから連想するのは、お嬢様が通うような清楚なミッション系の女学校であったり、もっと言うと「マリア様がみてる」とかその辺りの「女の子が好きな女の子」が出てくる物語のイメージだと思うんですよね。
 
賛美歌が流れるような学校には、女の子が好きな女の子が沢山いそうなんて、物凄い勝手な思い込みだと思うんですけど、それでもああいうBGMを耳にしてまうと反射的に「女の子が好きな女の子」っていうのを、これまた勝手にイメージしてしまう。
 
だからこそ、みやこと朋絵のようなキャラクター、女子部というキーワードが出てきて、物語のテーマが強調され始めた時点で、ああいった曲を使うっていうのが合点がいくし、この辺も見せ方の上手いところだなと思うんですよね。
あと、やっぱり、蓮実重臣さんのBGMは素晴らしいなと。
 
 

■まとめ

こうやって、ツラツラと書いてみると、改めて「4+1」は「女の子が好きな女の子」という物語のテーマを絞り込むのに、物凄く上手い見せ方をしていたエピソードだったなと実感します。
 
そして、その中で活きてくるのがジョーカー的な存在である朱宮の存在ですよね。
ささめきこと」という物語の中に存在する男子と女子の隔たり、その間を自由に行き来できる、女子部の4人の中に加わって「5」になることはできなくても、「4+1」のプラスイチになれる朱宮の存在感が際立ってきたエピソードだったとも思います。
 
 

■おまけ

劇中ではコミカルな絵を多用して、ギャグタッチで描いていましたけど、純夏の葛藤っていうのが見ていて、もう…ですね…。
 

 
やらなきゃいけないのは、自身の秘密にしている汐への想いを伝えることなのに、みやこと朋絵にその秘密を握られて、しかも自分自身も朱宮の秘密を利用して、女子部設立に奔走するって…。
もう、見てる分には、何やってんだ! としか言い様がないんですけど、この辺のそれぞれの秘密を通じて生まれる人間関係っていうのも、他の人間が彼女たちのテリトリーに入り込めない理由になっているんですよね、きっと。
 
 
 
<関連エントリ>
■テレビアニメ「ささめきこと」 劇中での、ささめかない音楽について
 
<関連URL>
■男性が作る、少年漫画的百合物語としての「ささめきこと」(たまごまごごはん)
■「生徒会の一存」と「ささめきこと」は、とても似ているという話(karimikarimi)