「にゃんこい!」 アニメオリジナルエピソードで描かれた、それぞれの恋心

 

 
にゃんこい!」ニャンコ07匹目!「暗くなるまで待って」
何故か、オードリー・ヘプバーン主演のサスペンス映画からタイトルが取られたエピソードですが、当然、本家のようなシリアス色は皆無のアニメオリジナル回。
 
演出にワタナベシンイチさんが参加をされたからか、潤平が妙にスケベなキャラになっていたり、従来のエピソードに比べるとベタなギャグが多用されたりと、若干異色さを感じさせる回でした。
正直、今までのコメディの方向性と、今回のエピソードでのコメディの方向性のディティールが、食い違いを起こしてしまっている印象も受けましたが、逆に言えばワンクールのアニメでこういう異色の回が存在し、変化が見られるのも、それはそれでおもしろいかなと。
 
また、そうしたエピソードだからこそ、観た後に印象に残る部分もあり、ちょうど折り返し地点で放送されたという点も含めて、なかなかに興味深いエピソードだったと思います。
というのが、修学旅行先の京都でのドタバタコメディを描いた「暗くなるまで待って」ですが、エピソードの中で強調されていたのは、潤平と楓、そして加奈子の恋愛関係。この三人の付かず離れず、微妙な距離感の恋愛感情を考える上で、このアニメオリジナル回は、なかなかにおもしろい回だったと言えると思うのです。
その辺りについて、今回は感想文を書いてみます。
 
 

■潤平と楓と加奈子。三人の距離感

男の子の主人公一人に、可愛くて魅力的なヒロインが多数。一見、ハーレムもののラブコメに見えて、その実、「にゃんこい!」の主軸は潤平の楓に対するブレのない、一途な恋心だと思います。
そこで、微妙になってくるのが、他のヒロインたちの物語における立ち位置。持ち前の異常な鈍感さのせいで、女の娘の恋愛感情に気付かない潤平ですが、彼に好意を抱く女の娘は増える一方。しかし、潤平の思い人は、楓ただ一人。となると、潤平と楓の恋にとって、彼女たちは障壁なのか、それとも橋渡し役になってくれるのか…。
 
ある時には、他の女の娘と付き合っていると楓に勘違いをさせたり、またある時には、もどかしい二人の距離を縮めようと手助けをしたりと、他のヒロインが潤平と楓の距離感に与える影響は様々。それこそ、その立ち位置は、猫の目のようにコロコロと変わります。
 
そんな中で、最も微妙な立ち位置にいるのが、潤平に恋心を抱きながらも、親友の楓の恋の手助けを行おうとする住吉加奈子
 

 
楓にデレデレする潤平の態度に苛立ちながらも、楓が傷つけば潤平と共に京都の街を巡ることを提案し、二人の関係にそっと手を差し伸べる加奈子。 
アニメ版では、小林ゆうさんのキャラクター性も加味されて、超ハイテンションなキャラクターとなった凪先輩による、文字通りの「乱入」はあったものの、基本的には「暗くなるまで待って」では、潤平、楓、加奈子の三人を軸に話が進行します。
 

 
終盤の河川敷で夕焼けを見るシーンは、そんな三人の関係を巧いこと描いたなかなかに秀逸な見せ場だったなと。
河川敷に溢れるカップルを見て、楓を意識する潤平と、潤平を意識する加奈子。そして、それに気付かない天然さを持つ楓の魅力。何と言うか、三人が三人とも、もどかしくて、イジらしいとしか言えないんですが、アニメオリジナルのエピソードでも、この辺りはなかなかに印象的な見せ方をしていたなぁと思います。
 
それにしても、「にゃんこい!」は、夕焼けを印象深く見せる演出が多いですね。良いロケーションするなぁ〜。
 
 

■潤平と楓。そして、二人を取り巻くヒロインたち

加奈子が潤平を強く意識したり、一度は潤平を諦め、後輩である楓のサポート役に務めることを宣言した凪先輩が、再び潤平の恋人宣言をするなど、潤平の周囲にいる女性たちの動きが妙に慌しかった「暗くなるまで待って」。
個人的に、他のエピソードとのディティールの違いを最も強く感じたのがこの部分なんですよね。
というのが、第6話の「ミルク&ビター&シュガー&スパイス」で描かれた加奈子と凪の姿との間に微妙な隔たりと温度差を感じてしまったから。 
第6話は、桐島姉妹の物語への参加をメインに据えたエピソードでしたが、その中でも個人的に最も印象深かったシーン。
 

 
潤平が猫に放った暴言を、自分が怒鳴られたと勘違いし、その場から楓が走り去ってしまうというギャグ。
これは、第1話の「ブサイクな猫と呪われし高校生」でも、全く同じギャグが使われていました。
 

 
第6話で行われた物語の反復。お笑いで言うところの「天丼」。違ったのは、この後の展開。
潤平に怒鳴られて沈み込む楓。楓が傷ついたのは、6話分のエピソードを通して、彼女の心の中で潤平が特別な存在へと密かに変化をしたからです。
また、潤平は潤平で、第1話では、楓に誤解を与えてしまったまま、気まずい気持ちで次の日を迎えましたが、第6話では、楓を傷つけてしまったことで加奈子や凪によるお仕置きを受け、自らの言葉で楓の誤解を解きます。
 

 
結果的に、潤平と楓の距離をアジャストした加奈子と凪。
物語のスタート地点から、確かな変化を遂げている、潤平と楓の気持ちと、その手助けを行う他のヒロインたちとの関係性が非常に上手く描かれた場面だったと思います。
 
この辺りで整理された関係性が、第7話では再び混沌としてしまった感はありますが、果てさて今後のエピソードでは、どういった展開を迎えるのでしょうか?
 
 

■まとめ

「暗くなるまで待って」はアニメオリジナル回であることに加えて、演出のワタナベシンイチさんの個性も加わってか、シリーズの中ではちょっと異色なエピソードでした。
そんな中でも、潤平とヒロインたちとの距離感を上手く描いていたところはありましたし、恋の行方の不確定性も加わって、今後の展開を期待させる部分もあったかな、と。
ともあれ、折り返し地点を迎えた「にゃんこい!」ですが、これからも目が離せないですね。
 
 

■おまけ

元々、超ハイテンションでスピーディーなラブコメ作品である「にゃんこい!」。
そのため、他作品で見られるような、ワタナベシンイチさんの強烈な個性は隠れがちだった気がしますが(最早、伝説のエピソードになりつつある第4話「美しい人」に比べると、ちょっと大人しめにすら感じました)、そこはやっぱりワタナベシンイチ
 

 
バスガイドさんが「思いっきり『はれぶた』だよ!」とか。定番中の定番。お約束の鉄板ネタ。ナベシンご本人登場とか。
 

 
いざ、就学旅行に出かけんとする潤平の鞄の中身が、何故かコケシと剣玉とマヨネーズ(しかも、中身が飛び出てる)にペンチ(やっとこ?)と、学業の延長線上にある旅行には到底必要とは思えないものばかり。こういう細かいけれど全く意味のない(笑)ナンセンスなギャグは、如何にもナベシンらしいなぁと思いました。
 

 
金閣寺のモノマネをする女子高生。は…花澤香菜さん?
 
 
 
<関連URL>
■「にゃんこい!」 テンポの良い作劇の中に映える、もどかしい二人の距離