シリアスとユーモアの狭間で転がるストーリー - 「HEROMAN」第04話「タマ」

 

 
相変わらず、トンデモないおもしろさのテレビアニメ「HEROMAN」
これまでも、ジョーイの勇気に散々泣かされ、ヒーローマンのダイナミックなバトルにエキサイティングさせられで、胸が高鳴りっぱなしだったのですが、第04話「タマ」もこれまたグレートなエピソードでした。
しかも、コレまでの作品のディティールとは、ちょっと違う角度でおもしろかったので、今回も熱っぽく感想文をば!
 
 

■全体に漂う、どこかコミカルなイメージ

これまでの流れを振り返ってみれば、先ずタイトルの響きからして異色のエピソードだった「タマ」
 
第01話「ビギニング」、第02話「エンカウンター」、第03話「インヴェイジョン」と来て、突然「タマ」ですからね。テキスト表記にしてしまえば同じカタカナでも、イングリッシュとジャパニーズ、日本語と英語。ここで突然タイトルのフォーマットを崩したことで生まれる違和感とおもしろさ。
この響きの違和感というのが、そのまま本エピソードのカラーにも繋がっていたように思います。
「タマ」というサブタイトルの何となくコミカルなイメージと響きの通り、ユーモアに満ちた描写が多数目についた第04話。
 

 
そこで大活躍だったのが、マシュー・デントン。スクラッグが地球侵略を開始するきっかけを作ってしまったことで、前回のエピソードでは相当に気落ちをしていたものの、街や人々を守るために、そして自分が起こした行為への「責任」のために、この人も立ち上がる。
思えば、第02話ではジョーイに迫るスクラッグに敢然と立ち向かうなど、この人も実は勇敢なハートを持っている人なんですよね。
そういう意味では、マシュー教授もジョーイやヒーローマンと同様に、この物語におけるヒーローの一人と言えるのかもしれません。
 
とはいえ、相当な変人として通っているマシュー教授。持ち前の科学の知識を生かして、宇宙人やヒーローマンの謎を解明しようとするものの、ラボの中で繰り広げられるジョーイやサイとのズレたやり取りの数々が本当に見ていて楽しい。
 

 
それは、宇宙船の中に侵入したウィルとニックのコンビにしてもそう。とにかく、勢いだけで突っ走るガキ大将と、臆病なクセにそれに従ってしまう舎弟という、藤子不二雄の漫画に出てくるガキ大将キャラクターみたいなノリとイメージで宇宙船の中を進む彼らのやり取りも、劇中の切迫した状況に反してどこかユーモラスな響きがありました。
 
宇宙からの侵略者の脅威にさらされ、街は破壊され、日常が崩壊した風景の中で、悲惨さや暗さを描くのではなく、敢えて明るい彼らのやり取りを描く。ジョーイたちの「強さ」を感じると同時に、見ている側としては安心をおぼえるところではあります。
 
 

■迫り来る「タマ」の恐怖!!

そんな、どことなくコメディーチックな展開の中でも、着実に侵略の魔手を伸ばしていくスクラッグ。
サブタイトルでも堂々フューチャーされていた新兵器「タマ」の不気味なインパクトは十分。
 

 
前半のジョーイとマシューたちのやり取りのノリを受けてか、こんなコミカルな描写を挟みつつも、意思というものを感じさせることなく、ひたすら無機質に街を破壊し尽くしていく「タマ」がジワジワと迫り来るシュールな恐怖感。
 
中でも、自分が凄いな〜と感じたのが、マシューが考えた作戦が物の見事に空転をする瞬間のシークエンス。
本来だったら、知恵が暴力を抑え込み、カタルシスに溢れた大逆転が描かれるところなのに、相手を嘲笑うかのような圧倒的な暴力の前に人類の叡智がアッサリと敗北をするこの絶望感。
直後にマシューが思わず、
 

「ナンセンスだーーー!!」

 
と絶叫をしたように、侵略者の攻撃力は理不尽なまでに圧倒的。
ただ、そんな圧倒的な力に対して、大切な人たちを守るために、あるいは責任のために、諦めずに対抗するジョーイたちの姿はひたすらに感動的です。
 
とはいえ、敵は余りにも強大で…。
これまでの戦いでは無敵の強さを誇っていたヒーローマンが、今回はボロボロになりながら、そして新たな力を発揮した上で「守る」ことはできても「勝つ」ことはできなかった。いや、「守る」ことができただけでも十分だったのかもしれませんが、そこで「あの」引きですからね。かなり、絶望的な状況を引きずったままでのTO BE CONTINUED。
毎回毎回、思うんですけど「HEROMAN」の毎エピソードのラストはネクストへの繋げ方、「あ! 次も見なきゃ! 次も見たい!!」って思わせてくれる引力は本当に凄いですよね。
 
今回のエピソードでは、コミカルなシークエンスを多用しつつも、侵略者の脅威にジリジリと追いつめられていくシリアスな切迫感が、非常に巧みに描かれていたように感じます。
それでも、決して過剰な暗さや重さはないんですよね。序盤のジョーイとマシューのやり取りや、コメディーチックな描写が、シリアスなドラマ性との間で絶妙なバランサーになっている。
その辺りの上手さや、エンターテイメントとしての完成度に本当に感心させられました。
 
 

■まとめ

第04は、これまでの作品世界のカラーに、ユーモアのセンスを加えて、その中でドラマの進行も描いた凄いエピソードだったと思います。次週の放送も、本当に楽しみです! 
 
 
 
<関連エントリ>
■「HEROMAN」の中で描かれる、主人公ジョーイのヒーローとしての自覚と決意について