大和屋暁氏のインタビューとピープルズ・ツリーから読み解く「HEROMAN」の魅力的なシナリオ

 

 
熱い! 熱過ぎるよ! HEROMAN!!
 
ジョーイたちとスクラッグとの戦いもいよいよクライマックスに突入し、更に熱とエネルギーを増しているテレビアニメ「HEROMAN」
余りのテンションの高さに、コレを作ってるスタッフの内の何人かは「漫画『キン肉マン』で、ウォーズマンのベアクローをコメカミに受けたラーメンマンの如く血を噴き出してブッ倒れ、再起不能状態になっているのではないかと心配になるくらい、おもしろい!
もう、何ていうか、キャラクター、動画、ストーリー、演出…そういったアニメーションの楽しさ、魅力がギッチリ詰まったアニメだと思うんですよね「HEROMAN」って。
 
さて、本作に関しては毎話感想文を書いてきた当BLOGではありますが、本編は遂にスクラッグのボス、ゴゴールとの決戦を迎え…という状態で前回のエピソードに関しても何を書いてもネタバレになりそうなのと、正直、心の底から「もう、とにかく見てください!」としか言い様がない状態なので、今回はちょっと趣向を変えたエントリを書いてみたと思います。
 
 

■「HEROMAN」の脚本家、大和屋暁さんのインタビューがおもしろい!

「HEROMAN」のファンである自分は、本編だけでなく雑誌やネット上のスタッフインタビューなんかも色々と見させていただいているんですが、本作でシリーズ構成を手掛けられている大和屋暁さんのインタビューがおもしろかったのでご紹介を。
 
■「HEROMAN」特集 シリーズ構成 大和屋暁さんインタビュー(アニメ!アニメ!)
 
内容には関しては短めの記事の中にも、現在までの「HEROMAN」の全てのエピソードを執筆されている脚本家さんの口から、本作に関する興味深い話が色々と。
これまた本編同様に「見てください!」なんですが、その中でも興味深い発言を本作の感想を絡めながらちょいちょいピックアップさせていただきます。
 
先ずは、何よりも気になるのがこの発言。
 

―今までわりと子供向けの作品が多くて、でもどこかちょっとひねりが利いているとの印象があります。そんな中で、『HEROMAN』は非常にストレートな物語となりました。本作で王道ということは意識されたのですか。
 
大和屋:それは意識しています。最初のデビューしたてのころ佐藤順一さんや関さん(関弘美プロデューサー)に言われました。
「変化球ばかり投げようとするな」と、「まずは真っすぐをちゃんと投げられないと、変化球を投げても効果はない」みたいなね。恥ずかしがらずに速い直球を投げるというのが今回の目標です。

 
「速い直球」というのは、「HEROMAN」の作品イメージに対して何とも言いえて妙、かつ含みのあるキーワード。スピーディーな展開とストレートで真っ直ぐなストーリー。何とも魅力的でファンの心を掴んで離さない「HEROMAN」のシナリオに対してのシナリオライターさんのこの言葉は非常に納得です。
 
そして、それを「恥ずかしがらず」にやる、その粋とカッコ良さ。更に、そのストレートなシナリオに「深さ」が存在しているのも「HEROMAN」の素晴らしいところ。
 

― いま毎週テレビを見せていただいて、1話を見たときに、これは典型的なヒーロー物かなと思ったんです。けれど先に進むに連れ、こんなのだったのかとかなり驚かされています。シンプルだけど奥が深いという印象です。

 
上記は、大和屋さんの言葉ではなく、作品を見たインタビュアーさんの感想ですが、これは観ている人なら大人・子ども問わず皆が抱く印象ではないでしょうか?
例えば、直近のエピソードである第07話レジスタンス」で行われた「力」を持ったキャラクター同士の対比というのも、直球の中で「深さ」が光る描写だったと思います。
 

 
超人的な力を持った各キャラクターの対比とそれぞれがエピソードの中で辿る運命のコントラスト。ネタバレになるので多くは語りませんが、直球のストーリーを軸にしつつ、そこから生まれる奥の深さやエモーション、そういった部分でも人を引き付けるエネルギーがあるのも「HEROMAN」の凄いところだと思うんですよね。
 
「引き付ける」といえば、各エピソードのラストにおける「引き」が凄いのも「HEROMAN」というアニメの大きな特徴。それに関しては、
 

大和屋:来週も見なきゃと思わせるように基本、引きにはこだわっています。

 
と発言をされていて、あぁ、やっぱり意識されていたんだな、と(笑)。
あの、衝撃的なシナリオ展開とアメコミ調の「TO BE CONTINUED」の「絵」のカッコ良さは堪らないものがありますからね。
 

 
前回も書きましたが、特に第06話バックラッシュでの敵の本拠地に乗り込むジョーイたちを描いたラストカットの観ている側のアドレナリンを大放出させるような異常なカッコ良さなんかは特に印象的。
こういう「キャラクター」や「絵」「アニメーション」も、シナリオとガッチリ噛み合っているんですよね〜。
 
 

大和屋暁さんのルーツに関して少し

と、ここいらで「大和屋暁」という脚本家さんについて、自分が知っていたこと、今回新たに知ったことについて少し。
大和屋暁さんといえば、自分の中では銀魂To LOVEるという2つのジャンプアニメの印象が強くて*1、師匠である浦沢義雄さんと同様にギャグのテイストが強い人だなぁ、という印象を持っていました。
 
自分は、「おそ松くん」平成天才バカボン」「丸出だめ夫といったフジテレビの日曜夕方6時枠のギャグアニメ、それから魔法少女ちゅうかないぱねま!」「不思議少女ナイルなトトメス」なんかの不思議ヒロインシリーズなどなど、浦沢義男さんが脚本を手掛けられたアニメ・特撮で育った世代なので、それに近いテイストのある大和屋さんのシナリオやコメディのセンスには、かなり意識をして作品を観ていました。
 
「HEROMAN」にもそういったコメディの要素、笑いのエッセンスというのは良く出ていて、シナリオの中でも独特の味を作品内にもたらしていますよね。
 


 
レジスタンス」で敵の基地に忍び込むという緊張感のあるシーンでも決して「笑い」は忘れない。
超ショボい理由でヒーローマンを変身させるデントン博士に、リナやジョーイに怒られるヒーローマン(で、この後のヒーロマンの顔がまたいい!)といった愉快な描写の数々。
これが、ハードの展開の中で一服の清涼剤になると同時に、シナリオの中で緊迫感の緩急を作る絶妙なスパイスになっているように思います。こういう「HEROMAN」のギャグセンス、私大好きです!
 
で、ここからは今回大和屋さんについて調べてみて新たに知ったことなのですが、この方、私が大ファンである鈴木清順監督の作品の中でも特にフェイヴァリットな映画「殺しの烙印」の脚本を書かれた大和屋竺さんのご子息なんですね! これは、本当に驚きでした。
 

 
「殺しの烙印」は、「殺し屋ランキング」が存在する世界の中で、殺し屋同士がNo.1の座を賭けて争いを繰り広げるヴァイオレンス・アクション映画。製作元である日活がロマンポルノ路線へとシフトする転換期に作られた映画で、宍戸錠演じる殺し屋が、鈴木清順が作り出す独特のヴィジュアル・エロティシズムの映像美の中で殺し屋同士の闘争に身を投じていく姿が描かれます。
 
そして、この映画の脚本を担当していた製作グループの中心人物が大和屋竺氏。
「HEROMAN」と「殺しの烙印」という2つの作品を繋ぐ意外な縁と巡り合わせのおもしろさ、そして自分が好きなモノ同士が結ばれた嬉しさ。
 
まさか清順映画と「HEROMAN」が繋がるとは…大和屋竺さんは実写映画だけでなくルパン3世」のようなアニメ作品の脚本も書かれていますし(そして、映画版の「バビロンの黄金伝説」では鈴木清順が監督を務めています!)、浦沢義雄さんも大和屋竺さんの弟子らしいので、ピープルズ・ツリーとしては凄く自然なことなのかもしれないんですが…いや、恥ずかしながら今まで知らなかったので、本当に驚きました。
 
RAMONESMETALCHICKSなんかの音楽面でのリンクも含めて、自分の好きなものがドンドン繋がっていく喜びがあって、そういう面での喜びや発見にも事欠かないアニメだな、と思いますよ「HEROMAN」。本当に面白いな〜。
 
 

■まとめ

今回は、「HEROMAN」の脚本家である大和屋暁さんについて、アレやコレやと書かせていただきました。
こうして改めて自分のイメージなんかを整理しつつテキストにしてみると、やっぱり、シナリオの良さと、それを最高にカッコ良い絵で見せるアニメーションの力が際立つ作品だな、と。
あとは、やっぱりキャラクター! これに関してはまた改めて熱っぽく語ってみたいと思います。
 
自分が好きなもんで、映画の話なんかも絡めてみましが…いや、でも本当はそういう前知識がなくても本当に面白いアニメなんです! 「HEROMAN」は! まだ、未見の方は是非是非ご覧になってください〜。
 
 
 
<関連エントリ>
■シリアスとユーモアの狭間で転がるストーリー - 「HEROMAN」第04話「タマ」
個人的に、シナリオの凄まじさを色濃く感じたエピソード。前半のユーモアとタイトルのコミカルさに反して、後半のシリアスな展開のギャップが凄い!
 
<関連エントリ>
■やべえ、「HEROMAN」の面白さをどう伝えればいいかわからねえ!
■「HEROMAN」を見ていると「こんなセリフ一生に一度は使いたい」と思うよ。(たまごまごごはん)
たまごまごさんによる「HEROMAN」エントリ。これまた、熱い! こういう台詞を、カッコ良く見せちゃうのが「HEROMAN」の凄さですよね。サイの「南無三!」とか異常に耳に残ってるな〜。
 

*1:後は、BONESとのタッグということでやっぱり「ソウルイーター」。名(迷)作と名高い「カブトボーグ」は自身の不勉強のために未だ見ておりません…すいません。