2011年の夏アニメを振り返って - プロレス的な…余りにもプロレス的な「輪るピングドラム」

 

 
季節がら、夏アニメを振り返っての感想で拙BLOGを更新。
 
それがテレビの中であれ、ネット放送の中であれ、夏から始まったアニメは7月からの"ワンクール"という期間を経てそれぞれの最終回を…或いはそれが2クールものの作品ならば折り返し地点を迎えているわけですが、今期もおもしろいアニメが多かったですね。
私は、「夏目友人帳」と「猫神やおよろず」が特にお気に入りの作品となりました! ああいう、エモーショナルなアニメ作品、大好きなんですよね、私。
 
ところで、夏に放送を開始したアニメ作品を観ていく中で、多くの人が目を付けたのが今季のアニメ作品とプロレスの不思議なシンクロニシティではないでしょうか? "アニメ"と"レスリング"を結び付けた作品が、2011年の夏アニメには余りにも多かった。というか、夏アニメがプロレスそのものでした。
 
アニメファンであり、プロレスファンである自分として、コレは見逃せない! ということで、今回のエントリではその辺についてのアレやコレやを書いてみたいと思います!
 
(注:以下、真面目に読んでいるとバカを見ます。"プロレス馬鹿"を見ます。剛竜馬ばりだぜ! ショアッ!!)
 
 

■プロレスそのものだった夏アニメ


 
新日本の夏の風物詩であるG1 CLIMAXのリングに、人気アニメ「探偵オペラ ミルキィホームズ」の主演声優が登場」し、"アニメ"と"プロレス"が日本最大手のプロレス団体で不思議なクロスオーヴァーを見せた2011年の夏。
 
そんな中で、夏に放送が開始されたアニメとレスリングが深い結びつきを見せたのは、まさに必然の理だったと言えます。
まず、"夏アニメ"で"プロレス"といえば、やっぱりこの作品を外すことはできないでしょう。そう、まよチキ!ですね。
 

 
主人公の妹である紅羽がプロレス技の使い手という設定の為、各種プロレス技やプロレス漫画のパロディが劇中で用いられたこの作品。その技のチョイスもいちいちプロレスもののツボを突くものばかりで、ファンをニヤリとさせてくれました。第一話の冒頭で出てきたトライアングル・ランサーなんて、現在進行形で新日本プロレスを観ていないと絶対に出てこない必殺技ですからね。
 
私も最初に観た時は、てっきり佐々木健介ストラングルホールドαだと思ったんですが、よくよく観てみたら紅羽役の花澤香菜さんが「トライアングル・ランサー」と叫んでいたという…。井上亘! 多分、この娘さんならオラシオン・フレイムとかスピアー・オブ・ジャスティスといった亘の他の必殺技も使いこなせるはず! 花澤さんは今すぐに青義軍入りすべき! スーパー・ストロング・マシン平澤光秀(現:ヒデオ・サイトー)の横に並び立つ花澤香菜! 試合後に、永田さんと一緒に亘にビンタをかます花澤香菜!!
 

けいおん!」の次は、「せいぎぐん!」だって!!(越中詩郎調)
 
そして、「まよチキ!」と同じく、劇中にプロレス技が多数登場をするバカとテストと召喚獣が夏アニメに"二期"としてラインナップされていたのも忘れてはいけません。
また、伝説のズンドコプロレス団体「WJ」からタイトルやキャラの名前を拝借した「だぶるじぇい」がスタートしたのも、この時期ですし、「R-15」に至っては、そのタイトルを見た誰しもがWJ出身の若き天才プロレスラー、中嶋勝彦の必殺技である頭部へのニールキック"R-15"を連想したことだと思います。というか、多分そこから取られてます(キッパリ)。
 

中嶋勝彦の必殺技"R-15"
 
こんなプロレスLOVEに満ち溢れたアニメが大量に、しかも同時期にやっていたというだけでも驚きですが、夏アニメとレスリングを繋ぐ作品は決してコレだけではありません。しかも、日本のプロレスだけではなく海外のプロレスとも密接に関わり合い、深く影響を受けていたのです!
 
 

WWEが夏アニメに与えた影響を考える

例えば、セイクリッドセブンなんかは、正にそうした海外のプロレスが持つニュアンスを劇中で描き切ったアニメ作品ですよね。
「え? セイクリッドセブンにプロレスの描写なんてあったっけ?」とお思いでしょうが、よくよく考えてみてください。
 
FictionJunctionが歌う「セイクリッドセブン」のOP曲のタイトルは何でしたか? …そう、ストーンコールドですね。
 

 
これは、世界最大手のプロレス団体WWEの伝説的なトップレスラーであり、現在でもレスリングファンからリスペクトと熱狂を注がれ続けるスーパースター、ストーン・コールド・スティーブ・オースチンへのオマージュであると言えます。
 
スキンヘッドで缶ビールをガブ飲みし、汚い言葉で悪態をつき、気に食わないヤツは必殺のスタナーで有無を言わさずKOをする。誰もが言いたくても言えない不平不満を代弁し、常に巨大な権力や体制に立てつき、戦いを挑む最高にカッコいい無法者…。
声優界イチのWWEユニバース(WWEのファンの意)であり、ストーンコールドの大ファンである中島愛さんが主演として参加しているのを見ても、オースチンがこのアニメに如何に大きな影響を与えたかが分かるというものです。
 
 

WWEと「輪るピングドラム」 - その深くて幸福な関係

さて、今夏のアニメを振り返った際に、こうしたプロレスとの密接かつ幸福な関係はアチコチで見受けられるわけですが、その中でも一際プロレス愛に満ち、レスリングから強くインスパイアされた作品として、やはり輪るピングドラムのタイトルを出さないわけにはいかないでしょう。
 

 
不可思議なストーリー展開や劇中に散りばめられた多くの謎から、様々な考察や推測が行われている「輪るピングドラム」ではありますが、よくよく注意してみればこの作品のベースになっているのはレスリングそのものであることが分かっていただけるかと思います。
 
例えば、劇中歌として陽毬の変身バンクで流れる「ROCK OVER JAPAN」。この曲一つとっても、アメリカのプロレス…アメプロへのオマージュがタップリと詰め込まれているわけです。
何といっても、曲のタイトルからして「ROCK OVER JAPAN」ですからね。ROCK OVER JAPAN、ロック・オーバー・ジャパン、ロック……オーバー・ジャパン。
 

 
そう、つまりこの曲はタイトルに、スティーブ・オースチンと同じく、90年代黄金期のWWEを象徴するスーパースター、"ザ・ロック"の名前を拝借することで、WWEレスリングへの深いリスペクトを表現しているわけです!
If you smeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeell what The Rock is cookin'!(ロック様の妙義を味わいな!)
 
太くてよく動く眉毛がトレードマーク、抜群のマイクパフォーマンスに試合巧者ぶりが光る天才的な試合の組み立て方、それに反してちょっと下品で歯に衣着せぬ毒舌家なキャラクター、そして何より"パイ"が大好きな天性のカリスマレスラー…。劇中歌のチョイスを見ても、この空前絶後のスーパースターに対する製作者側の敬意と強い愛情が感じられる…というのは、私の考え過ぎでしょうか?
 
…いや、確かに、「ROCK OVER JAPAN」はそもそもARBの曲であって、「Rock」なんて単語はあるゆる分野で頻出するキーワードです。ですから、これだけで「輪るピングドラム」と「WWE」に共通項を見出すのは幾ら何でも無理がある…そうお考えの方もいらっしゃると思います。
しかし、ここでこの「ROCK OVER JAPAN」を誰が歌っているのを考えれば、この指摘が正鵠を射たものであることが分かっていただけると思います。皆さん、ご存じの通り、「ROCK OVER JAPAN」を歌っているアーティストは、劇中に登場するアイドルユニット"ダブルH"に陽毬を加えた"トリプルH"ですよね…。
 

 
もう、説明の必要はないでしょう。"トリプルH"といえば、そう! WWEの"The Game"ハンター・ハースト・ヘルムスリー…通称"トリプルH"その人です! つまり、トリプルHが歌う「ROCK OVER JAPAN」には、90年代にWWEが取った過激路線…所謂、"アティチュード期"を支えたスーパースター、ザ・ロックトリプルHという二人の偉大なスーパースターへのメッセージが組み込まれていたのです!(驚きの余り、入場時のトリプルHの如く口から水飛沫を吹き上げながら)
 
ボディービルダーのような凄まじい筋肉の鎧を身にまといながら、リック・フレアーにレスリングのハウ・トゥを受け、観客を魅力するサイコロジーを備えた頭脳派ヒール、トリプルH。そのトリプルHザ・ロック、スティーブ・オースチンの抗争こそが、アティチュード路線のストーリーの軸となっていたわけですが、その"主役"達の名前が夏アニメには非常に重要なキーワードとして散りばめられていたわけです(トリプルHの如く、スレッジハンマーを振り上げながら)。
そう考えてみると、タイトルのピングドラム」という不可思議な音の響きも、トリプルHの必殺技である「ペディグリー」にどことなく似てはいないでしょうか?
 
ストーン・コールド・スティーブ・オースチンザ・ロックトリプルH…ここに、WWEのアティチュード路線…90年代のWWE黄金期を支えたスーパースターが揃い踏みを果たすわけで、コレを見るだけでも夏季アニメが如何にプロレスから強い影響を受けているかが分かります。
 
 

■「輪るピングドラム」色彩の秘密 - 赤と青の正体

最後に、このように劇中に様々なWWEからのオマージュが潜んでいる「輪るピングドラム」という作品について、もう少し深く考えてこの考察の結びとしたいと思います。
 
輪るピングドラム」といえば、強烈な劇中の色彩についても様々な考察が行われていますね。中でも特に観る人に強い印象を残すのが、「赤」と「青」という色の対比でしょう。
 
■輪るピングドラム第01話の演出の解説 赤と青の意味 赤と青の魔女の正体推測(karimikarimi)
 
上記のエントリでも、その色彩感覚とニュアンスについての指摘が行われていますが、私は幾原邦彦監督が本作に込めた、そして赤と青という色に託した意図はもっと別のところにあると思っています。
 
ここまでこのエントリを読まれた方なら、この赤と青が何を意味しているか、もうお分かりでしょう。この赤と青というのもトリプルH(=ハンター・ハースト・ヘルムスリー)による「ROCK OVER JAPAN」(=ザ・ロック)同様に、WWEのメタファーが込められているわけです。つまり、「輪るピングドラム」の赤と青という二つの色彩は、WWEにおける二つのブランド(WWEでは、ベースボールのア・リーグナ・リーグのように、所属選手が二つに分かれ、別々にストーリーが展開している)である…
 

 
"RAW"(=イメージカラーは赤)と…
 

 
"SmackDown!"(=イメージカラーは青)を現しているわけです!
 
思えば、RAWとSmackDown!が誕生した背景には、それまで文字通りのスーパースターとしてリングの上に君臨をしていたストーン・コールド・スティーブ・オースチンザ・ロックの二大巨頭が、深刻な膝の故障と映画俳優への転向というそれぞれの事情から、リングの上から姿を消し、新たなスーパースターとストーリー展開が必要となったというWWEの重要な転換点が存在をしています。
そして、そこで新たなリングの中心人物となり、現在では実質的に団体の新たなるオーナーとなったのがトリプルH…。「輪るピングドラム」というアニメ作品には、そうしたアティチュード路線の最盛期から、そして現在へと繋がる様々なキャプチャーが時にシニカルに、そして時にセンチメンタルに、何より強い愛情を持って表現されているのです。
 

 
え?
 
幾ら何でも、解釈にムリがあるし、余りにも雑なこじつけだろうって? 夏アニメを語るフリして、ただ単にプロレスの話がしたいだけなんじゃないかって? そんな極めて真っ当なツッコミを入れている貴方に、私はスティーブ・オースチンのマイク・パフォーマンスに熱狂をしてチャントを合唱するWWEユニヴァースの如く、敢えてこう返したいです。
 

 
What?(はぁ?)
 
 

■まとめ

何か、なんでもかんでもこじつけようと思えば、こじつけられるものですね。(結論)
 
あと、余談ではありますが、今年の11月30日、12月1日という日程で、WWEのRAWブランドが日本にやってきます! 会場は、かつて"伝説"の熱狂を生み出した、あの横浜アリーナ! 現在進行形のWWEをその目で目撃するチャンスです! これは是が非でも会場に足をお運びを!!(宣伝)
 

 
私は、チケット買いました! 嬉!!(一番安い席ですけど…)