「ココロコネクト」とジ・アンダーテイカー、SILVER LINK.とプロレス

 

 
今回のエントリは、アニメ版のココロコネクトで気になっていた描写についてのアレやコレやで更新です!
 
 

■「ココロコネクト」で壁に貼ってあるポスターは…

アニメファンであり、プロレスファンでもある自分が「ココロコネクト」の第一話で目を引き付けられたのが部室に貼ってあるポスター
 

 
本作の主人公である八重樫太一は熱狂的なプロレスファンというキャラクターですが、このポスターに描かれた人物が誰なのかは太一じゃなくても、プロレスファンなら一瞬で分かるはず。
全身黒ずくめのコスチュームに、オープンフィンガーグローブ、そして、この巨体を持つ人物は…間違いなくWWEのプロレスラー、ジ・アンダーテイカです。
 

 
WWEは、アメリカ、ニューヨークに本拠地を構える世界最大規模のプロレス団体。そして、ジ・アンダーテイカーは、20年以上に渡って同団体に所属し、トップレスラーであり続けている正真正銘のスーパースター(WWEでは、所属レスラーのことをこう呼ぶ)です。
アンダーテイカーについて、その途方もなく長大なヒストリーと伝説の数々を語り出すと、それだけで何千、何万文字というテキストを書かねばなりません。ですので、ここでは簡潔にこの稀代のプロレスラーのディティールを紹介するに止めたいと思います。
 
ジ・アンダーテイカー…以降は、WWEユニバース(WWEのファンのこと)の多くに、そして団体内でオフィシャルに使用をされている"テイカー"という呼称を使いたいと思います…は、"怪奇派"と呼ばれるキャラクター重視のレスラーの代表格です。
イカーのギミック(リング上でのキャラクター、コンセプト)は、そのリングネームとコスチュームからも分かるように葬儀屋、埋葬屋をイメージした「地獄の墓堀人」。入場時には棺桶を引きづりながら入場し、試合中は不思議な骨壺からエネルギーを貰ってパワーアップし、超常的な魔力を使って雷を操ることができる…という、それこそアニメのキャラクターのようなレスラーです。
 
 

■ジ・アンダーテイカーとWWEのエンターテインメント



 
その辺りのテイカーのギミックの完成度を知っていただくには、やはりその試合を見ていただくのが一番でしょう。
個人的なテイカーのベストバウトとして、ここでは93年のvs.ジャイアント・ゴンザレスとの一戦を挙げたいと思います。
WWEユニバースの方からは、ケインとの一連の抗争とかマンカイドとのヘル・イン・ア・セル戦とかレッスルマニアでのショーン・マイケルズ戦とかじゃないのかよ! とツッコミが飛んできそうですが、この試合、個人的に大好きなんですよね、凄く。
 
墓堀人のギミックに相応しく、会場に鳴り響く鐘の音とオドロオドロしい入場曲。骨壺を持って先導するマネージャーのポール・ベアラー。そして、古代の神官のコスチュームや不吉な黒い鶏でデコレートされた神輿に乗って登場するテイカー…。
そんなテイカーをリングで待ち構えるのは、身長231cm、グロテスクな全身コスチュームを着た超巨体のレスラー、ジャイアント・ゴンザレスです! そして、そんな二人の闘いを熱狂で持って迎え入れるスタジアム一杯のオーディエンス!!
 
イカーも公式プロフィールの身長が208cmもある大型のレスラーですが、そんなテイカーですらリングでゴンザレスと向き合うと小さく見える程。この二人が向かい合った絵は、プロレスというよりは、怪獣映画そのものですね。正直、試合内容自体に見るべきものは余りありませんが(それでも、プロレスの技術がまだまだ未熟なゴンザレスを相手に、地獄突き…空手で言うところの貫手だけで試合を"作れる"テイカー一流のテクニックは流石!)、もう、この入場シーンとレスラーのキャラクターだけで、プロレスファンとしては大満足、お腹一杯になれる試合でしょう。
 
アメリカのプロレス…特に、WWEは勝負論やレスリングの技術の巧拙に加えて、レスラーのキャラクターや試合に至るまでのストーリーラインのような"エンターテインメント"性を重要視します。
 
例えば、テイカーは前述の通り、超常的な力を使う怪奇派レスラーなので、デスマッチで生き埋めになっても甦ったり、パワーボムとかブレーンバスターとかのプロレス技ではなく魔術を使って相手を倒したり、神出鬼没で突然リングの下から現れて対戦相手を地獄に堕としたりもします。
 


 
荒唐無稽に思えるかもしれませんが、こうしたエンターテインメント感溢れる最高のパフォーマンスを行い、「地獄の墓堀人」というキャラクターを完璧に演じ続けてきた(途中で、バイカーキャラーへと変身…"ギミック・チェンジ"を行っていた時期もあるんですが)テイカーは、ファンはおろか同業者であるレスラーからもリスペクトをされる正にリビング・レジェンドのようなレスラーなのです。
 
 

■何故、「ココロコネクト」にテイカーが登場をしたのか?

そんなジ・アンダーテイカーが何故、「ココロコネクト」の画面に突如として登場をしたのか? 主人公がプロレスオタクという設定の作品ですから、そんな主人公のキャラクターを立てる為にプロレスのポスターが劇中で使われたのは分かるとして、そこに描かれたレスラーに何故、テイカーがチョイスをされたのか? その理由は、案外にシンプルかつストレートです。
 

そういえば、新人賞に投稿をしている頃には、その時にしかできない執筆に煮詰まった時の気晴らし法というものもありました。
そう、ご存じ(?)、ペンネームを考えることです。
 
(中略)
 
ということで私も、「誰か自分の好きな、もしくは尊敬する人の名前をもじったペンネームでもつけてみっか!」という感じで(あくまで気晴らしなので)、あれやこれやと考えていました。
するとどうでしょう、なぜか候補に挙がってくるのは、プロレスラーの名前ばかりなのです!
…。
ちょっとこれは作家を目指している身としてどうなんだろう、と思わないこともなかったのですが、まあ別にすぐさまプロデビューする訳でもないしいっか、と思って私の尊敬するプロレスラーからもじらせて頂くことにし、試行錯誤を繰り返して今のペンネームに辿り着きました。
 
- 庵田定夏ココロコネクト ヒトランダム」 (エンターブレイン) P.311〜312

 
上記は、「ココロコネクト」原作の一巻であり、アニメ版の前半に当たる単行本「ヒトランダム」のあとがきからの抜粋です。原作者である庵田定夏(あんださだなつ)」先生のペンネームは読み方を変えれば「あんださだなつ→あんだていか→アンダーテイカー」。いうなれば、エドガー・アラン・ポーからペンネームを取った江戸川乱歩のプロレス版。WWEライトノベルの見事なタッグマッチ。
 
ペンネームの元ネタになっている程、原作者さんが大好きなプロレスラーだから、アニメ版でもテイカーが画面に登場をすることになったのでしょう。この辺の庵田定夏先生のプロレスに関するこだわりについてキチンとキャッチボールをしていたアニメ版「ココロコネクト」。ちょっとしたデティールではありますが、武藤敬司言うところの「プロレスLOVE」を強く感じる場面です。
 
 

SILVER LINK.とプロレス

そこで、気になるのがこうしたプロレスへのこだわりを感じるデティールを、一体誰がこのアニメに投入をしたのか? ということです。
監督さんなのか、脚本家さんなのか、絵コンテを描かれた方なのか、それとも原画を描かれたアニメーターさんなのか…? インタビューなどで、その詳細が語られていない以上、判断は出来かねるのですが、個人的に一つ気になる点があったので、ちょっと言及をさせていただこうかと。
 
この「ココロコネクト」と同じくSILVER LINK.というアニメスタジオが…そして、大沼心監督というクリエイターさんが関わられていたアニメ作品(で、本作と同じくファミ通文庫原作)であるバカとテストと召喚獣。このアニメも、劇中でたびたびこだわりに満ちたプロレス描写が登場をしたアニメでした。
 

 
例えば、相手にヘッドロックを掛ける際は、プロレスの"マナー"に従ってキチンと"左腕"で技を掛ける。劇中で、数々のプロレス技を再現する。こういった描写は、プロレスのことを良く分かっているファンのこだわりか、或いは、プロレスをつぶさに観察し、正確にトレースをしてこそ生まれえるシークエンスだと言えます。
 
■「バカとテストと召喚獣」で、島田美波が左腕でヘッドロックをかけた理由
■「バカとテストと卍固めとドロップキックと…」 - 「バカテス」に出てきたプロレス技まとめ
 
SILVER LINK.制作のアニメに出てくるこうした"プロレス"の数々を見るにつけ…もしかして、このスタジオには物凄くプロレスが好きなスタッフさんがいらっしゃるんじゃないかという気がしています。"その人"は、ラノベ作者さんが自身のペンネームにWWEのスーパースターの名前を使っているのをキッチリと読み取ることができ、プロレスの"マナー"を深く理解し、しかも、様々なプロレス技を熟知していて、アニメという絵の世界でキッチリと再現ができる…そんな「プロレスLOVE」に満ちた人物です。
 
コレは完全に推測なので、"その人"がどのような形でアニメに関わられているのかは分からないのですが、SILVER LINK.のアニメはプロレス描写が非常に凝っている…コレはちょっと注目をしてみるとおもしろいのではないかと。少なくとも、プロレスファンである自分には気になって仕方がないトピックであり、観ていて何とも楽しいポイントです。
 
というわけで最後に、「ココロコネクト」や「バカテス」に登場するグレートなプロレスについて、私が大好きなスーパースターの一人であるザ・ミズの決め台詞を賛辞の言葉として引用をさせていただき、本エントリを締めくくりたいと思います。
 


 
Awesome(超イカしてる!)