『ボーンズ・ブリゲード』 / ステイシー・ペラルタ

 

 
今回は、先日観に行った映画の感想を。
 
 
吉祥寺バウスシアターのレイトショーで「ボーンズ・ブリゲード」を観た。本作は、タイトルの通り80年代のアメリカのスケートボード・シーンに颯爽と登場するやいなや、革命的なトリックを次々に生み出し、スケボーカルチャーの歴史を創り上げた伝説のチーム、ボーンズ・ブリゲードの活動を追ったドキュメンタリー。チームの中心人物で、大手スケートボードメーカー「パウエル・ペラルタ」の創立者でもあるステイシー・ペラルタ自身が監督を務めている。
 
それまでのシーンには無かった斬新な広告戦略と超人的かつ斬新なトリックの数々。ボーンズ・ブリゲードというスケート・チームが世界中のスケーター達のカリスマとなり、そして、同時にスケボーが巨大産業へと発展していく様が分かりやすくまとめられていて、あのインパクト大な"覗き髑髏"のトレードマークぐらいしか知識がなかった自分みたいな人間でも楽しむことができた。これが、ボーンズ・ブリゲードや各スケーターのファン、スケボーをコアに好きな人なら、もっともっとおもしろいんでしょうね。
 
とはいえ、映画自体は、スケートボードやロックといったカウンター・カルチャーのヒストリーを描いたドキュメンタリーものにありがちな、関係者達のインタビューシーンと当時の映像アーカイヴを繋ぎ合せて、その躍進から衰退…始まりと終末までを描くというオーソドックスな構成に忠実に作られていて、正直、映画としての目新しさ、革新性みたいなものはほとんどない。
 
それでも、最後まで全く退屈せずに観ることができたのは、最高にカッコいい当時のメンバーのスケボーシーンや、それに付随するこれまたカッコ良いBGMの数々…スケボーの映画だから、80年代のアメリカのパンクやメタルが多いんだろうと勝手に思っていたら、意外にも選曲はイギリスのニューウェーヴのそれが多かった。まさか、スケボーのドキュメンタリー映画GANG OF FOURやAdam and the Antsが流れるなんて思ってもみなかった…に加えて、この映画の主役であるボーンズ・ブリゲードを構成していた元メンバー達の人間的な魅力によるところが大きかったように思う。
 
彼らの当時のシーンを振り返る語り口は、何とも人間味に溢れていて、観る者の胸に迫ってくるのだ。栄光の裏には苦悩があるし、成功の陰には挫折もある。
スケボーに出会うまでに感じていた社会からの疎外感や、メンバー間での技術差によるコンプレックス、或いは、「ボーンズ・ブリゲード」という巨大な看板を背負って大会に挑む重圧…といった当時の悩みや葛藤をカメラに向かって語りかける元メンバー達の姿は物凄く人間臭くて、そして、そこで語られるエピソードは、誰の人生、生活にも置き換えることが可能な普遍的なものだ。故に、彼らの言葉はとても魅力的で、劇中のシークエンスで使用される華麗かつ過激なトリックを焼き付けた映像の数々と同じく、この映画の大きな魅力になりえている。
 
また、それぞれのスケートスタイル同様に、出てくるメンバーいずれもがキャラクターが強烈に"濃く"て、あ〜これだけおもしろい人達が揃えば、そりゃ凄いムーブメントも起こせるよね、なんて彼らのスケボーに己の全てを掛けた青春と友情を羨ましく思ってしまった。特に、独特の喋り方と存在感を持つロドニー・ミューレンが良かった。このチームの歴史を駆け足で振り返る僅か2時間足らずの本作を観ただけで、僕は劇場を出る頃には、すっかり彼のファンになってしまっていた位だ。
 
<ボーンズ・ブリゲード / 予告編>