アニメ好きとしてテクノポップファンで、ほんまにうち嬉しかったんよ!

 

 
近頃、つくづく思うのがアニメを観る時に、テクノポップファンだと色々と楽しいことが多いな〜ということ。
 
というのが、テクノポップとアニメって何かとクロスオーヴァーすることが多いんですよね。そんなこんなで、今回のエントリでは、アニメを観ていて、テクノポップファンとして感じたことのアレやコレやを!
 
 

■アニメとテクノポップのアレコレ



 
アニメとテクノポップって凄く相性が良いというか、テクノポップをクリエイトしていたミュージシャンやバンドがアニメの音楽を作ってる…なんてこと、よくあります。
 
直近の例で言えば、ドキドキ!プリキュアのED曲「この空の向こう」なんかがそうです。作曲者は、テクノポップバンド、MOTOCOMPOのメンバーであるDr.Usuiさん。こちらのエントリでも簡単に触れさせていただいたのですが、MOTOCOMPOと言えば90年代終盤に東京のインディーズシーンで"ニューウェーヴ・オブ・ニューウェーヴ"と呼ばれたテクノポップニューウェーヴリバイバル・ムーブメントの中心にいたバンド。後期の曲やプリキュアのEDでは、ビートが強く、シンセの密度も濃い音楽を作られているDr.Usuiさんですが、初期〜中期のMOTOCOMPOは、PLASTICSからの強い影響を感じさせるラフな質感のテクノポップ・ナンバーが特徴的でした。
 


 


 
後に、メジャーへと移籍し、もはや"テクノポップ"という枠に収まり切らない新しいロックサウンドをクリエイトし続けているPOLYSICSや、メンバーが宇宙服を着ているというユニークなビジュアルが印象的だった松江潤(現在では、サポートギタリストとして、様々なミュージシャンのレコーディングやツアーに参加)率いるSPOOZYS、テクノポップ…というより、ポスト・パンクからの影響を感じさせるスッカスカなバンドサウンドと脱力系のボーカルが魅力のCicago Bass…といったバンドと共に、インディーシーンでテクノポップリバイバルを牽引する、そんなちょっとマニアックなシーンにいたMOTOCOMPOのメンバーが、今では日曜朝の人気アニメの主題歌を手掛けているんだから、やっぱり音楽っておもしろいものです。
 


 
他にも、テクノポップとアニメについて探ってみれば、鈴木さえ子さんがBGMを全面バックアップし、POLYSICSも主題歌を歌った「ケロロ軍曹」、その鈴木さえ子さんの元旦那さんである鈴木慶一氏がリーダーを務めるムーンライダーズによる「Dororonえん魔くん メ〜ラめら」、P-MODEL平沢進氏による「ベルセルク」、英国のパンク、ニューウェーヴバンド、The Stranglersのジャン=ジャック・バーネルが参加をした「巌窟王」、劇中や主題歌で往年のテクノポップ・ナンバーがカヴァーをされる「夏のあらし!」や「まりあ†ほりっく」のような新房昭之監督のアニメ作品…と、テクノポップニューウェーヴのファンには堪らないアニメ、音楽が沢山あります
 
こうしたロック、ポップス系の有名ミュージシャンによるアニメ音楽だけに留まらず、アニメ、声優専門の作曲家さんもテクノポップっぽいナンバーを沢山作られていますし、何というか、アニメって本当にテクノポップ好きな人間にとっては凄く居心地がいい場所なんですよね。
 


 
勿論、こうしたアニメ音楽は近年に入ってから急に出てきた訳ではありません。そもそも、打ち込みの音がアニメや声優ソングのメインになっていた時代もありましたし、80年代のテクノポップ全盛の頃から、この辺のクリエイターが多数参加をしたうる星やつらのような作品もありますし(本作は、あがた森魚によるテクノポッププロジェクト、Virgin VSが主題歌を歌ったり、「ラムのラブソング」の作詞を行った小林泉美がドイツのニューウェーヴバンド、Palais Schaumburgのメンバーであるホルガー・ヒラーと結婚したり…というテクノポップファンにとって、何かと縁とトリビアのあるアニメ)、90年代の声優ブームの時には、宮村優子さんがアルバムの作曲、作詞者に平沢進戸川純鈴木慶一といったジャパニーズテクノポップニューウェーヴのクリエイターを起用するなどの動きもありました。
 

<作詞、作曲者に、日本のニューウェーヴ・ミュージックシーンの重要人物たちが多数参加をした宮村優子の楽曲群。平沢進による「MOTHER」が収録をされたミニアルバム「魂」は名盤!>
 
 

Perfume以降のアニメとテクノポップ


<"J-POP"でテクノポップを行ったPerfumeポリリズム」と、"アニソン""声ドルソング"でテクノポップをしてみせた井上麻里奈「ビューティフル・ストーリー」。どちらも2007年リリース。中田ヤスタカによる作品>
 
それでも、ここ最近は、アニメの音楽において、テクノポップのクリエイターさんの参加や、テクノポップ調の曲が増えてきたように思います。その理由を考えてみると、2000年代に入ってからエレクトロ・クラッシュやニュー・ウェーヴ・リバイバルのような80年代回顧的な音楽ムーブメントが世界規模で起こったから、そもそも日本には、YMOという余りにも偉大なテクノポップの象徴的存在がいるから(個人的には、POLYSICSMOTOCOMPOのようなバンドが、エレクトロ・クラッシュの世界的なブームに先駆けて、テクノポップニューウェーヴリバイバルを行なっていたのは、やっぱりYMOPLASTICSといった大きな先達がいたからだと思います)、80年代の音楽シーンや90年代のインディーズシーンで活躍をしていたテクノポップのクリエイター達が、その音楽性の成熟に伴ってアニメの音楽制作にも活動範囲を広げたから…様々な理由があると思いますが、一番大きいのは、やっぱりPerfumeのメジャー規模での大ブレイク。これが一番の理由なのかなぁ、と。
 
<井上麻里奈 / ビューティフル・ストーリー>

 
チョコレイト・ディスコ」や「ポリリズム」のブレイクと時をほぼ同じくして、Perfumeのプロデューサーである中田ヤスタカさんが手掛けた井上麻里奈さんのシングル曲「ビューティフル・ストーリー」月面兎兵器ミーナED曲でもあったこの曲。発表当時は、その特徴的なダンスが「サボテンダー」とか散々言われましたが、今観返してみるとPerfumeとかテクノポップ系の音楽性を持ったアイドルが必ずやる「動作は簡単でも強く印象に残り、キュートでありながらテクノっぽい機械的なイメージのあるダンス」っていう流儀をちゃんとやってるんですよね。あと、この曲が新房昭之監督とか、小林治監督とかの音楽的に凄くエッジの効いた感性を持ってらっしゃるアニメ監督さんじゃなくて、声優さんと美少女ゲームの歌い手さんが主題歌を歌うことの多い川口敬一郎監督の作品で使われていたというのは何だかおもしろいですよね(でも大好きだ川口監督!)。
 
Perfumeの登場によって、音楽業界的にテクノポップの再評価が行われたという側面は確かにあると思います。そして、それが、少なからずアニメの音楽にも影響を与えたのかなぁ、と。
 
<堀江由衣 / バニラ・ソルト>

 
井上麻里奈さんの「ビューティフル・ストーリー」がリリースされ、Perfumeが本格的なブレイクを果たした2007年。翌年の2008年には、Perfumeのアルバム「GAME」が大ヒット。この頃になると、Perfume〜田中ヤスタカからの影響を受けたアニメ関連の音楽も出てきます。例えば、それまでバンドサウンドやストリングスを効かせたドリーミーなポップナンバーを中心に楽曲を発表していた堀江由衣さんが、アニメ版Perfumeとでも呼ぶべきテクノポップナンバー、「バニラソルト」をリリース。急激にテクノ濃度が急上昇します。
 
この辺から、それこそ「ドキドキ!プリキュア」ED曲のような、今のアニメ音楽、声優ソングの流れがきたような気がするんですが、どんなもんでしょう?
 
とりあえず、ここまでで個人的なアニメとテクノポップに関する関係性についての雑感をまとめてみたのですが、沢山の抜けやツッコミどころがあるかと思います。本当だったら、この辺の音楽を語るのでしたら、それこそオタク界隈でのPerfumeのブレイクにも一役買った「アイドルマスター」〜「ニコニコ動画」関連のカルチャーにも触れなければならないでしょうし、それこそ初音ミクとかもテクノポップ的にはマスターピースではあると思うんですが、如何せん、私はそういったネットカルチャーに疎い人間なので…詳しい方、助言をいただけると大変に嬉しいです!
 
まぁ、結局、何が言いたいかというと、それこそ学生の時分からテクノポップニューウェーヴが大好きだった人間として、今のアニメを観ていると、テクノポップっぽい音が聴こえてきたり、昔、愛聴をしていたテクノポップ・バンドのメンバーのお名前をアニメのクレジットで発見したりして、物凄い楽しいんですよ! もうね、テクノポップファンで良かったな、アニメファンで良かったな…なんて心の底から思えるんです。
 
 

■アニメのテクノと言えば、"クラブ"系のテクノという時代



 
…というのがね、ちょっと前まではそうじゃなかったんですよ! ここからは、音楽について語るというよりは、非常に個人的かつルサンチマン溢れる話になってしまうんですが、ちょっと前まではテクノポップとかニューウェーヴって80年代の遺物、ダサいものみたいな感じでものっそい軽視されていたんですよ!
 
"テクノ"っていう音楽ジャンルを聞いて、Perfumeみたいな音楽…"テクノポップ"的なサウンドを連想するアニメファンも今では沢山いると思うんですが、それ以前は、自分らの世代だと"テクノ"って言ったら"クラブ"で流れる電子音楽のことでしたからね。代わりに80年代のテクノポップとかニューウェーヴはダセエよ、みたいな。Sigue Sigue Sputnikとか聴いていようものなら、クラブ的なテクノが好きな友達から白眼視されて「えーマジSigue Sigue Sputnik!?」「キモーイ」「Sigue Sigue Sputnikが許されるのは小学生までだよねー」「キャハハハハハハ」…みたいになる時代があったのよ! …お前ら、言っとくけど、お前らが「カッコいい」「カッコいい」言って聴いてるBOOM BOOM SATELLITESだって、Sigue Sigue Sputnikから多大な影響を受けてて、彼らの曲名からバンド名を頂戴したんだからな! それ忘れんなよな! 過激な暴力、食べ物は美味しい、水を飲んではいけません!!
 


 
更に、こういうクラブ系のテクノって、アニメとかとも凄い相性が良かったじゃないですか。90年代〜2000年代の初頭くらいまで、アニメとクラブ系テクノの蜜月って、確実にあって(…まぁ、自分は全然詳しくないので、全く語ることができないんですけど…)、例えば、KEN ISHIIの「EXTRA」とかもそうですし、石野卓球さんによる大友克洋監督の「MEMORIES」とか…あと、2000年代に入ってからも「交響詩篇エウレカセブン」とか、あと忘れられないのがアレ! プレイステーションの「攻殻機動隊」のゲームのサントラ! …そういうクラブカルチャー的なテクノとアニメのクロスオーヴァーって、これまた歴史があって、で、そういうシーンだと映像も最新のテクノロジーとかが使われていて…。
 
でも、そういうのは自分にとってのハイカルチャーで、テクノポップとか聴いてるとですね、「う〜ん…これは、ちょっと分からないな…」みたいな。そういうコンプレックスって言うと変ですけど、切なさ的なセンチメンタルと歯がゆさを感じていてですね。悔しさをかきむしったら涙がでてきて、とめどもなく初めて俺、弱虫になっちまったというか…ほんまにうち寂しかったんよ(無駄に長渕剛調)。
 
テクノポップとクラブ系のテクノ。どっちが良い悪いじゃないんです。どっちが優れているとか劣っているとかじゃないんです。
 
ただ、クラブ系のテクノや周辺のカルチャーに乗ることができず、80年代のテクノポップニューウェーヴ(本当だったら、90年代以降のクラブ系のテクノも、ここら辺の音楽と当然、地続きになっている筈なんですけどね…)を偏愛していた人間として…休み時間にエイフェックス・ツインアンダーワールドの新譜の話で盛り上がる同級生を横目に、シーナ&ザ・ロケッツの「真空パック」を中古で300円で買っていた(何故かアルバムにYMOのメンバーが参加をして、アレだけ凄いテクノなんですよね、シナロケ)根暗な高校生だった自分としては、やっぱり昨今のテクノポップ再評価、そして、それが大好きなアニメへと繋がっている光景っていうのは物凄く幸せだったりします。あの頃、空回ってばっかりだった自分のテクノポップに対する情熱、情熱、情熱! ほぅら情熱、情熱、情熱!!(無駄に長渕調)が、ちょっと報われたようで…まぁ、完全なる自分の思い込みと勘違いなんですけど…やっぱり、それは大変に嬉しいことだなぁ、と思うんですね。
 
<長渕剛 / 情熱>

 
 

■最後に…あと、「てーきゅう」と有頂天


<長渕剛「昭和」と「Keep on Fighting」。最早、テクノ関係ないが「ほんまにうち寂しかったんよ」と「情熱」は名曲! なんであんたあの時、死なんかったんや!!>
 
そんなこんなでアレやコレやと書かせていただいたアニメとテクノポップの色々。本当に、最近は両者のクロスオーヴァーが盛んで、この2つのカルチャーが大好きな人間としては、色々と驚きと喜びをいただいています。アニメが好きで、テクノポップニューウェーヴが好きで、そして、その2つが繋がってくれて…ほんまにうち嬉しかったんよ。
 
最後に、そんなクロスオーヴァーの中で、最も驚いたのがコレ。id:sasahiraさんに頂いたコメントで初めて知った(sasahiraさん、本当にありがとうございます!)んですが、てーきゅうOPのストレンジなポップナンバー「没落貴族のためのてーきゅうの作曲者って、有頂天の元ギタリストであるハッカイさんなんですって。
 
<てーきゅう / 第一話「先輩と一期一会」>

 
<有頂天 / BYE-BYE>

 
コレには本当にビックリでした…。POLYSICSがよく名前を出してたのと、大槻ケンヂさんのファンなので、その関係で後追いで聴いてた人間なんですけど、有頂天も大好きなテクノポップニューウェーヴのバンドでしたからね…。
有頂天は、現在、劇団ナイロン100℃の主催者であるケラさんがリーダーを務めていたバンド。ナイロン100℃には、声優としても活躍をされている犬山イヌコさんや、新谷真弓さん(「フリクリ」のハル子役など)も所属をされているので、ケラさんとアニメの繋がりって以前からあったと言えばあったんですが、まさか有頂天の元メンバーのハッカイさんもアニメの主題歌を作っていたとは知らなかった。
 
言われてみれば、ケラさんの独自の感性が爆発した有頂天のシュールな歌詞世界と奇妙奇天烈なサウンドは、「てーきゅう」のナンセンスなギャグセンスとも通ずるものがあるのかも…。「てーきゅう」ファンの皆さん、もし興味がありましたら有頂天のアルバムも是非ご一聴を! お得なベスト盤なんかもリリースされてますし、オリジナルアルバムなら、「AISSLE」がパンキッシュでカッコいいです!