"戦隊ヒーロー"の視点から読み解く「銀河機攻隊 マジェスティックプリンス」

 

 
春から放送をスタートした銀河機攻隊 マジェスティックプリンス。まだまだストーリーの導入部ではあるけれど、段々と本作の魅力と楽しみ方が分かってきた。
 
平井久司さんのキャラクターデザインに石川智晶さんが手掛けるOPとED…本作にまつわるクリエイターさんの名前を拝見し、勝手にシリアスなSFロボットアニメを連想していたのだけれど、いざドラマがスタートしてみれば、事前の勝手な予想は全て吹き飛んだ。平井久司さんの端正なキャラデザも容赦なく崩し、ギャグチックな台詞回しや描写が目を引く。予想以上にコミカルなシークエンスや演出が目立つ「マジェスティックプリンス」。
同じく春から始まったロボットアニメである革命機ヴァルヴレイヴの悲壮感溢れるダークなドラマ性とのコントラストも相まって、独自のチャーミングさを持ったロボットアニメに仕上がってきているなと思う。
 
さて、そんな「マジェスティックプリンス」ではあるけれど、本作の一番の特徴になっているのが、その構造のユニークさではないかと思う。そんなこんなで、今回のエントリでは本作にまつわるアレやコレやを!
 
 

■「マジェスティックプリンス」は戦隊ヒーロー!

もう既にアチコチで指摘をされているとは思うのだけれど、本作の一番の特徴はロボットアニメでありながら、そのキャラクター造形に戦隊ヒーローのフォーマットを持ち込んだことだと思う。
 

 
赤、青、黄色、ピンク、そして紫…と、それぞれのイメージカラー(と搭乗機のカラーリング)で色分けをされたチームラビッツのメンバーたち。そして、そんなチームラビッツの男女構成比は3対2という戦隊ヒーローに多く見られるフォーメーション。更に、赤は正義感の強い好漢、青はちょっとクールなサブリーダー、黄色はお調子者のムードメーカーでピンクは明るくて可愛いチームのヒロイン…という戦隊ヒーローのアーキタイプ(というか、「秘密戦隊ゴレンジャーですよね」)とでも言うべきイメージカラーによるキャラクターの性格分け、ポジショニングが行われている。
 
チームラビッツの指導者として、厳しくて、でも本当は誰よりも彼らのことを気にかけている"教官"がいるのも戦隊ヒーロー的だ。"紫"のクギミヤ・ケイのカラーは、戦隊モノとしてはちょっと"異色"ではあるけれど、「マジェスティックプリンス」の主役たるチームラビッツのメンバーのキャラクター造形には戦隊ヒーローの存在が強く意識をされているのではないかな、と感じる。
 
 

■まだまだあるぞ! 「MJP」に見られる戦隊ヒーローの要素!!


 
マジェスティックプリンス」における戦隊ヒーローのエッセンスは、そのキャスティングにも色濃く出ているように思う。チームラビッツのリーダーであるヒタチ・イズル役を演じる相葉裕樹さんは侍戦隊シンケンジャーでシンケンブルーを演じた俳優さんであり、スルガ・アタルを演じる池田純矢さんは戦隊ヒーローシリーズ35作目のメモリアル・モニュメントであり、一つの集大成的な作品である海賊戦隊ゴーカイジャーでゴーカイシルバー役に抜擢をされた役者さんである。「マジェスティックプリンス」では、戦隊ヒーロー出身の役者さんが、二人も声優として主役のキャラを担当されているのだ。
 
思えば、本作の監督である元永慶太郎監督は、OVA作品「マジカルハート☆こころちゃん」戦隊モノ、特撮ヒーローのパロディーを行っている。また、本作にまつわる元永監督のインタビューを拝読してみても、"ヒーロー"という発言が度々登場をしている。"戦隊""ヒーロー"というキーワードは、「マジェスティックプリンス」を読み解く重要な鍵となりそうだ。
 
■「誰もがザンネンで、誰もがヒーロー」『銀河機攻隊 マジェスティックプリンス』 元永慶太郎監督インタビュー 前編
■「誰もがザンネンで、誰もがヒーロー」後編 『銀河機攻隊 マジェスティックプリンス』 元永慶太郎監督インタビュー
 
この辺りのアイデアと趣味、嗜好を昇華させた作家性の発露というのが、全て元永監督に還元をされるものなのかどうかは定かではないけれど、「マジェスティックプリンス」は強く戦隊ヒーローとの結びつきを持ったロボットアニメと言えるだろう。
 
 

■「マジェスティックプリンス」と「地球防衛企業ダイ・ガード

オリジナルアニメ(先行して漫画版が雑誌に連載をされるというメディアミックスは行われているようだけれど)である「マジェスティックプリンス」なので、これからのストーリー展開に関してはまだまだ未知数の部分が多いのだけれど、この戦隊ヒーローを意識したキャラクター・モデリングやメカデザインは、その物語性にも大きく影響を及ぼしそうな気がする。
 
具体的には、従来の"リアルロボット"アニメが強く意識をしてきたシリアスなドラマ性から、「マジェスティックプリンス」ちょっと距離を置いた…独自の路線を進むのはでないかと。「蒼穹のファフナー」や「機動戦士ガンダムSEED」を想起させる平井久司さんのキャラクターデザインを起用しながら、表情付けやアクションでアッサリとそのイメージを覆してみせた(というか、第一話で作監を担当された平井さんご自身が率先をして覆した)ように。
 
Web上では、やはりそのキャラデザから「蒼穹のファフナー」や「無限のリヴァイアス」との比較を行う意見も見られた。確かに、クリエイター側の文脈を紐解いていくと、それらの作品と「マジェスティックプリンス」を結びつける流れは正しくもあるのだろうけれど、個人的には、本作のニュアンスに一番近しいロボットアニメとして地球防衛企業ダイ・ガードの名前を挙げておきたい。
 

 
本作も、主役機に搭乗をするメインキャラクター三人に、それぞれ「赤」「青」「桃色」というイメージカラーが設定をされ、ロボットアニメでありながら、戦隊ヒーロー、特撮ヒーローをイメージした構成となっていた。「ダイ・ガード」の主人公である赤木駿介がヒーローに憧れ、誰かを"守る"ことに全力を尽くすのも「マジェスティックプリンス」の主人公、ヒタチ・イズルとの共通項だ。
個人的にも「ダイ・ガード」は大好きなロボットアニメの一つで、学生時代、あのアニメの放送を毎週ワクワクしながら観ていた、あの頃の高揚感を「マジェスティックプリンス」はまた味あわせてくれるのではないかなと非常に楽しみにしている。
 
 

■まとめ

こういった一つ一つのポイントを見ていくと、「マジェスティックプリンス」という作品は、ロボットアニメでありながら戦隊ヒーローでもあるというなかなかにユニークな設定であり、今期、一挙に放送を開始したロボットアニメ作品群の中でも強く惹かれる…新しい景色を見せてくれる作品になりそうな気がしている。最終的には、本家の戦隊ヒーローよろしく主人公達が乗る5体のロボットが合体をして一つの巨大ロボットになったり、爆発をバックにザンネン5の5人が名乗りを上げながら登場してきたりしても何の違和感を感じないのではないかと思うくらいに。
 
戦隊ヒーローの主人公よろしく、ここまででも十分にキャラが立っている「マジェスティックプリンス」。とはいえ、まだまだ前半戦も前半戦。これからの展開が非常に楽しみな作品ですね。