「銀河機攻隊 マジェスティックプリンス」のAV鑑賞シーンに観たキャラ描写の上手さ

 

 
銀河機攻隊 マジェスティックプリンス。初見の第1話の段階では、「ちょっと変わったロボットアニメ」という印象を受けたのだけれど、エピソードが進むにつれて、なかなかどうして王道のロボットアニメ、少年、少女の成長を描くヒロイックなストーリーとしての体裁が整ってきたように思う。
 
毎回、本作を観る度に思うのが、そのキャラクター描写の上手さだ。シリアスさとコミカルさが絶妙なバランスで入り交じったシークエンスの数々や重いようで軽妙なドラマ性、その中で各キャラクターを観せる、魅せるテクニックにいつも目を奪われてしまう。
 
そんなこんなで、今回のエントリでは第5話小惑星基地潜入作戦」の中で印象に残ったシークエンスについてアレやコレやと!
 
 

■激しい戦い…の前のAV鑑賞シーン

第5話はザンネン5こと、チームラビッツの5人が先輩チームのチームブルドッグのメンバーと共に敵の基地を爆破する任務に就くエピソード。第1話の撤退戦での大活躍以降は失敗を繰り返し、その名の通りの"ザンネン"っぷりを発揮し続けてきたチームラビッツが、思わぬ敵の猛攻を受けながらも任務を遂行させてみせるまでを描いた「小惑星基地潜入作戦」。ここでの戦いに赴くまでの彼らの描写というのがおもしろい。
 

 
チームブルドッグのリーダーであるランディからイズルが受け取った映像ソフト。ラビッツのメンバーが全員、未成年であることに考慮をしてか画面が真っ白で中身についても詳しい描写が行われることはなかったものの、ケイの怒りに満ちたリアクションを見るに、あれは完全にポルノグラフィックな映像…AVだったと考えて間違いはないだろう。
 
同じチームリーダー同士であるランディとイズルの仲。そして、ランディが心配をしていたイズルとチームメイト達のチームワーク。ランディがAVをイズルに託した理由には、"エロ"を共有することで絆を深めるという意図があったと思われる。この世界にも、エロによって男同士の友情を確認する、距離を縮めるという文化圏があったということに何だか親近感を覚えてしまうが、そんなエロに触れた時のチームラビッツの描き方というのが何とも凝っているのだ。
 
 

■AVを観た時のスバルとタマキのリアクション

AVに対峙をするザンネン5の面々。ケイの怒りや何だかんだで徹夜で見通してしまったイズルとアサギに関しては、それぞれ女性らしい、男性らしいストレートな反応だと思うのだけれど、おもしろいのがスバルとタマキ
 

 
先ずは、スバル。これまでのエピソードでイズルやアサギに比べると、自発的に女性へのアプローチを行う姿…つまりはナンパを繰り返す様子や女の娘に対する積極性が繰り返し描かれてきたが、いざ、モロなエロに出くわすと恥ずかしがって部屋から退散をしてしまう。女たらしの様で、実は誰よりもウブなところがあることが判明するスバル。
 

 
また、スバルと同じく異性に対して積極的なアプローチを行っているタマちゃんも、AVには普段の言動と全く異なるリアクションをとる。
 
タマちゃんの場合はスバルよりもエロに対する免疫が無いようで、もはや映像の中で行われている行為が何なのかすら分かっていない様子。恐らくは、スバルと同様に「異性に対する興味は人一倍だが、性に対する知識と度量は常人以下」というギャップのおもしろさを狙った演出なのだろうが、ちょっと深読みをすると彼らチームラビッツの出自の悲哀みたいな部分も見えてくる。
 
遺伝子操作によって生まれ、更には記憶も消され、戦う為だけの作り出されたチームラビッツの5人。この特殊な出自故に、タマちゃんは、生殖という行為を理解することができていないのではないか、と。まぁ、これは視聴者側の勝手な解釈に過ぎないのだけれども。
 
普段は軽妙なストーリーラインも手伝い、表だっては出てこないものの、マジェスティックプリンス」のコアにはキチンとシリアスなドラマ性が存在している。そういったところにまで思いを馳せさせる、想像をさせてくれる物語としてのパワーには、やはりシナリオの上手さ、演出の巧みさが大きく貢献をしているのだろう。
 
 

■"萎え"る姿から浮かび上がるスズカゼ教官の存在

もう一点、このAV鑑賞シーンで印象に残ったポイントを。AV鑑賞組として最後まで残ったイズルとアサギ。と、ここでアサギが「主演女優がスズカゼ教官に似ている」ことに気付いてしまう。
 

 
身近にいる女性にソックリな人が性行為を行なっていることに興奮するどころかゲンナリしてしまうイズルとアサギ。これなんかもなかなかにユニークなシーンだ。美人でスタイルも良いスズカゼ教官ではあるけれど、二人にとっては決して欲情の対象にはなりえない…つまりは、母親や姉のような家族のような存在であることが伝わってくる。この辺りのキャラクター同士の描き方というのも何気に上手さを感じるポイントだ。
 
AVという下世話なアイテムを使ったシークエンスではあるけれど、そこからはキャラクター性、ストーリー性共に、様々なエッセンスを読み取ることができる。また、このちょっと間の抜けたシーンが挿入されたことで、後半の戦闘シーンもより活きてくる。弛緩と緊張。軽妙さと重厚さ。ユーモアとシリアス。「銀河機攻隊 マジェスティックプリンス」、本当にバランスの取れたドラマ作りのテクニックを感じさせてくれるアニメ作品だ。
 
 

■おまけ

■”戦隊ヒーロー”の視点から読み解く「銀河機攻隊 マジェスティックプリンス」
 
ところで、以前、筆者は本作と地球防衛企業ダイ・ガードとの類似点についてBLOGで書かせていただいたことがあるのだが、この「小惑星基地潜入作戦」の脚本を書いたのは、「ダイ・ガード」でシリーズ構成を務めていらっしゃった志茂文彦さん。
この如何にも人間臭いキャラクター描写とロボットの姿には、やはり「ダイ・ガード」に通じるものが…というのは、幾らなんでも我田引水過ぎるだろうか?
 
 
 
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