「ミス・モノクローム」第10話「FIGHTER」でのプロレス、スタローン映画愛

 

 
ミス・モノクローム第10話「FIGHTER」がおもしろかった。人気アイドルの握手会に感化をされた主人公のミス・モノクロームが握手会を無差別に繰り広げた結果、アームレスリングの選手(プロモーター?)に見初められ、大会に出場して優勝。そこで、今度はボクシングにスカウトされ、そこでもチャンピオンに。すると今度は、プロレスに挑戦し…といった具合に、あれよあれよという間に数多くのタイトルホルダーになる…というストーリー。
 
そのなし崩し的でナンセンスなコメディが笑えるのは勿論のこと、個人的におもしろく感じたのが、登場人物の描き方。そんなこんなで、今回のエントリでは「ミス・モノクローム」の第10話についてアレやコレやと!
 
 

ミス・モノクロームのアスリートとしての資質を見初めたのは…

「FIGHTER」では、モノクロームの前に様々な人物が現れては彼女を格闘技、競技スポーツの世界にスカウトをしていくわけだけれど、その人選というのがおもしろい。
 

 
アクション映画俳優のシルベスター・スタローンに…
 

 
プロレスラーのハルク・ホーガン
 

 
そして、元プロボクシング世界チャンピオンのマイク・タイソン
 
他にも、五輪の会長なんかがいましたがプロレス、格闘技のファンである自分としては、この辺のチョイスというのが本当に良いツボを突いてくるな〜という感じ。
 



 
ミス・モノクロームをプロレスにスカウトしたハルク・ホーガンが「バンダナに、来日した時のトレードマークだった"一番"のロゴが入ったTシャツ」という本人の完コピであるのは勿論のこと、レフェリーが山本小鉄風のスキンヘッドの男だったり、リングアナが元・新日本プロレスの名物リングアナだった"ケロちゃん"こと田中秀和氏(現、田中ケロ)をモデルにしているというのも芸が細かい。プロレスファンならば思わずニヤリとしてしまう描写で、コンテなのか作画なのか、それとも脚本の時点で指示があったのか、どのタイミングでこういう細かいネタが入ったのかは謎なのだけれど、このエピソードを作った人は凄くプロレスが好きなのではないかな、と直感的に思った。
 
 

■スタローン映画とプロレス

プロレス…という視点で観てみれば、この「FIGHTER」というエピソードにシルベスター・スタローンが出てくるのも興味深い。スタローンは、ミス・モノクロームをアームレスリングの世界に誘う人物として描写をされているけれど、これは恐らく、スタローン主演、脚本の映画作品オーバー・ザ・トップを受けての人選だろう(というか、「ミス・モノクローム」に出てきたスタローンは「オーバー・ザ・トップ」出演時の衣装をそのまま身に付けている)。
 


 
オーバー・ザ・トップ」は87年に公開をされたアメリカ映画。かつて、妻と息子の元を去ったトラック運転手のスタローンが、再び息子と出会い、彼の為にアームレスリングの大会に出場をし、チャンピオンを目指す…という親子愛とアームレスリングをテーマにした作品だ。
 
「ロッキー」や「ランボー」といった80年代のスタローンを代表する映画作品に比べると、ちょっと地味な印象もある「オーバー・ザ・トップ」だけれど、実はこの映画には当時、アームレスリングのチャンピオンで後にプロレスラーへと転向をするスコット・ノートンや元プロレスラーのテリー・ファンクが俳優として出演をしており、プロレスファンならば必見の映画作品となっている。
 
余談だが、ウッチャンナンチャン南原清隆さんもこの映画のファンで90年代前半を代表する名物バラエティーウッチャンナンチャンやるならやらねば!」でも「バック・トゥ・ザ・フューチャー」や「スターウォーズ」といった有名映画作品と並べて、本作をパロディコントにしていたりもする。大のプロレスファンである南原さんらしいチョイスだ。
 
スタローンで「ロッキー」ではなく「オーバー・ザ・トップ」を選択する辺りに、プロレスが好きな人間ならば「おっ!」と思わされてしまう場面だけれど、スタローンといえばロッキー3」ではハルク・ホーガンと"異種格闘技戦"を行うシーンもある
 

 
ミス・モノクローム」で描かれたスタローンからのホーガンという流れは、プロレスやシルベスター・スタローンが大好きな人間ならばナチュラルに連想をしてしまうラインなのだろう。また、その後に出てくるマイク・タイソンアメリカのプロレス団体WWF(現、WWE)でプロレスの試合に"ゲスト出演"を行ったことのあるプロボクサーだ(WWFの最大のビッグマッチである「レッスルマニア」の第14回大会でショーン・マイケルズとストーンコールド・スティーブ・オースチンのタイトルマッチで特別レフェリーを務める)。その功績が認められ、タイソンは2012年にWWEを代表する"プロレスラー"として殿堂入りを果たしている。
 
こうしてみると、スタローンもマイク・タイソンも非常にプロレスに縁の深い人物だ。きっと、このエピソードを作った人は、プロレスとそれからスタローンの映画が大好きな方なんだと思う。こういったイマジネーションを刺激してくれる細かいネタの数々、自分は凄く好きだ。
 
ミス・モノクローム」…僅か5分間という短い時間の間に、様々な想像を膨らませてくれるアニメである。