声優の清水愛さんが出場したプロレス興業を観戦してきた






Webで週刊誌で…と日々のプロレス界の流れは追いかけているものの、仕事やプライベートでの何だか忙しない毎日にかまけて、ちょっとプロレスと距離が出来ていた自分。相変わらず、プロレスは大好きだが、ここ最近は所謂"活字プロレス"に改めてドップリとハマってしまい、すっかり会場での生観戦から足が離れていた。恥ずかしながら昨年の生観戦は、たったの2回(新日の1.4東京ドームと大日本プロレス後楽園ホール大会が1回のみ)で、今年も4分の1が終了をしたというのに現時点でのカウントはゼロ。このまま、"観戦派"的な楽しみからは離れてしまっていくのかなぁ…と寂しく思っていたのだけれど、そんな自分に強烈に"刺さる"興業の情報が入ってきた。


4.7、NOSAWA論外、MAZADA、FUJITA(藤田ミノル)、KIKUZAWA(菊タロー)という4名のプロレスラーによるユニット東京愚連隊による新宿FACE大会「TOKYO LOVE IV」。藤波辰爾を始めとする豪華なゲストレスラーと個性豊かな選手が参戦をするイベントだが、何とその中に人気女性声優の清水愛さんも参戦をするのだという。


これは、プロレスファンとしてアニメファンとして見逃してなるまいか! という気にさせられるし、何より猛烈に興味をそそられる。しかも、清水さんが出場をするのは鈴木みのる高山善廣という人気と実力を兼ね備えたメジャーもメジャー、一流どころのプロレスラーと組んでのタッグマッチだと言うではないか。し…清水さんと鈴木みのる!? そのカードを目にした瞬間、反射的にチケットの予約をしていた。そんなわけで、会場で観戦をしてきた清水愛さんの試合、今回のエントリでアレやコレやとリポートを。




■"新人プロレスラー"としての清水愛さん

清水愛さんが参戦をした東京愚連隊の自主興業。そのバラエティー豊かなカードと参加選手の幅の広さについては、専門誌のリポートで概要は知っていたけれど、会場での観戦は初。新宿FACEに到着をすると物凄いお客さんの数で、混雑の為に開演時間が若干、遅れた程だった。人気の高さに驚きながら場内へ。


個人的な"メインイベント"であった清水さんの出場する試合は第3試合にレイアウトをされていた。"プロレスの父"力道山の息子である百田光雄、その百田の息子で力道山の孫にあたる"力道山三世"力組と高木三四郎今成夢人組によるタッグマッチ、そして、甲斐拓也、崔領二組vs.伊藤崇文那須晃太郎組という格闘技色の強い第2試合の後に行われる休憩前の試合…というポジション。





昨年末に北九州のアマチュアプロレスの興業でプロレスデビューを果たしている清水さんだけど、本格的なプロレスラーとの対戦、そして、ご本人の"ホームリング"である東京での試合は今回が初となる。対戦カードは、清水さんが鈴木みのる高山善廣というトップクラスの選手二人に、お笑いプロレス界の大御所である、くいしんぼう仮面(大阪の食い倒れ人形をモチーフにしたキャラクターレスラー)を加えたタッグで出場。
反対側のコーナーに立つ対戦相手は、女子プロレスラー界きってのパワー派レスラー、松本浩代菊タローストーカー市川、めんそ〜れ親父という芸達者なコミカルレスラー達。ひと目でお笑い色の強いエンタメプロレスになるのは明白で、"デビューをしたばかりの声優兼アイドルレスラー"の試合としては抜群のカードだと言える。この辺りのマッチメイクの上手さには感心をさせられたし、そこがこの興業の人気にも繋がっているのかなと思わされたのだった。




■プロレスのリングで観る女性声優の姿とは

で、そんな興業で観た清水愛さんの試合。これが心の底から楽しめた、おもしろい試合だったのだ。…いや、お世辞でも何でもなく本当におもしろかったし笑えた。今まで観戦をしてきたコミカルマッチの中でもかなり上位にランキング出来る。最初から最後まで笑いの絶えない良い試合だったと思う。


会場には清水愛さん目当てで集まったプロレス初体験のアニメファン、声優ファンも数多くいた(清水さんがプロレス会場での物販用に製作をしたアニメチックなイラスト入りの青いTシャツを着ているのですぐに見分けが付くのだ)ようで、清水さんの入場には大歓声。ちなみに、清水さん、入場曲には「らいむいろ戦奇譚」主題歌の「凛花」を使用していた。


試合中にも清水さんがリングに出てくると一際大きな歓声が起き、絶妙に"引き立て役"をこなす松本選手や清水さんにセクハラ狼藉を働こうとする親父や菊タローには容赦の無いブーイングが飛ぶ。会場の雰囲気はバッチリで、その良いムードが更なる笑いを誘う。





清水さんが試合中に繰り出した技は、丸め込みや卍固め、エルボーに猫パンチといった打撃、変形のDDT(?)。それから、とっておきの"大技"としてコーナートップからのフライングボディープレス。いずれもプロレスラーとしてはオーソドックスな技で、この辺にも"新人レスラー"としての配慮が見られた。一方で、"受け"に回れば、相手の関節技や打撃を受け、終盤にはストーカー市川の必殺技であるカンチョー攻撃(!)と胸へのボディータッチ(!!)も受け切り、試合を盛り上げた清水さん。リングに上がったからには、プロレスラーらしくキッチリと身体を張ってみせたのだった。




清水愛さん出場のタッグマッチ…メチャクチャにおもしろかった!




試合は、男女混合のコミカルなタッグマッチの王道を行くような内容で、敵も味方も表現力とユーモアのセンスがあるレスラーが揃っているから、試合のアチコチで笑いが巻き起こる。こうした多人数エンタメプロレスの定番のシーンである「皆で足四の地固めと首四の字固めを掛け合い数珠繋ぎになる」「ブルドッギンクヘッドロックをかけたままリングの中央で全員が激突し、そのまま昏倒。レフェリーがカウントを数え始めるとカウント2で一斉に肩を上げる」…といった"お約束"にも清水さんは参加をし、抜群のタイミングでアクションをしてみせる。プロレスファンを公言している清水さんだけれど、その辺りのリング上の空気を読めてる感じやタイミングをキッチリと合せられる辺りからもプロレスを愛しているリアリティーが伝わってきた。





最後は、清水さん相手にセクハラ攻撃を繰り返したストーカー市川鈴木みのるが必殺技のパイルドライバーでリングに突き刺し"成敗"。鈴木みのる高山善廣、くいしん坊仮面、清水愛さん組(何回見返しても凄い字面だな…)がリングで勝ち名乗りを受けハッピーエンドだ。高山や鈴木に頭を下げながら握手をし、リングを降りていく清水さんの姿が印象的だった。


先ほども書いた様にコミカルマッチとしてレベルの高い良い試合だったと思う。清水さんの"プロレスの中に飛び込んできたアイドル"というポジションはご本人のステータスと表現力が相まって全く違和感が無かったし、例えば、"清水さんの打撃を受けても相手はビクともしない"といったシークエンスを配置することで、対戦相手であるレスラーへのリスペクトも欠かさない内容となっていた。





何より、この日、会場に集まった清水さんのファンのリアクションが良く、そこも試合を心地よく観れたポイントだった。目線がすれていないから、序盤の試合でもボディースラム一発でどよめきが起こるし、高山の巨体を目にすれば驚嘆の声、レスラーの確かなテクニックを見せつければ素直に拍手が起こる。そういった会場内のムードも抜群で、冒頭に書いた様に最近プロレス観戦から足が離れていた自分の様な"マニア層"のファンは改めてプロレスのおもしろさを思い知ったのだった。







■良いイベントです「東京愚連隊興行」

そんなわけで、清水愛さんも参戦をした東京愚連隊興行。清水さんの活躍も素晴らしく、良い興行だったと思う。試合終了後の物販には、他の参加選手と同様に清水愛さんご本人が立ち、長蛇の列。ミーハーな自分もTシャツとポートレートを購入し、清水さんにサインを入れてもらった(間近で観たら物凄く可愛かった…)のだけれど、清水さんの横にいるのは、くいしん坊仮面と百田光雄6時半の男)だったりした。プロレス会場で人気女性声優さんにサインを貰う…シュールだ…。


でも、そのごった煮的なエンターテインメント感覚が、この愚連隊興行の魅力なのだろう。正直、プロレスラーとしてはまだまだ技術的に発展途上の選手やセミプロ的なポジションにいる選手もいたため、如何なものか…とややナーバスになっていた部分もあったのだが、トータルで観てみれば"お祭り"として抜群に楽しいプロレス興行。中でも、謎にコンディションが良かった藤波辰爾が躍動をしていたセミファイナルと、コミカルなエッセンスを加えながらも参加選手の持ち味がキラリと光るメインイベントは文句なしのおもしろさ。





エンディングではザ・グレート・サスケの"乱入"もあり、最後の最後まで大盛り上がり。清水愛さんから高山、鈴木、藤波、CIMA、サスケ…といった有名どころのレスラー、一流レスラーまで一枚のチケットで観れてしまうんだから凄いイベントだ。アニメ、声優ファン向けの清水愛さん参戦というフックを設けながらも、プロレスファンへの目配せ、ファンサービスも忘れない巧みなさじ加減。次回の7月大会では、メキシコからドクトル・ワグナーjr.が参戦をするそうで、コチラも見逃せない。東京愚連隊興行…まさに、インディーらしい"明るく""楽しい"バラエティーに富んだ試合を楽しめる良いイベントだと思う。