『スペース☆ダンディ』第二シーズンの音楽ネタについて






第二シーズンに突入しても、相変わらずのハイテンションとフリーダム加減、そして超絶作画で突っ走るスペース☆ダンディ


エンターテインメント性とマニアックなフィーリングとアート感覚をごちゃ混ぜにしつつ、毎回コチラの予想を覆す展開を見せるエピソードの数々には、毎回笑わせてもらうと同時に強い敬意を感じています。


さて、そんな『スペース☆ダンディ』ですが、第二シーズンになってからいくつかの特徴的な変化も見てとれるように思います。


先ず、一つが「平行世界で多用な展開を見せる一話完結のオムニバスアニメ」という本作の大きな特徴に対して、登場人物達が自己言及的な言動を見せ始めたこと。毎度、お馴染みの「登場人物全員死亡エンド」に対して、メタ的に諦念の入り混じった台詞を口にするQTやゲル博士の姿、平行世界の存在そのものをエピソードの軸にした、第二シーズンの幕開けである第14話「オンリーワンになれないじゃんよ」、捉えようによっては全てのエピソードの始発点と考えることも出来る第21話「悲しみのない世界じゃんよ」なんかは、『スペダン』第二シーズンの特徴を大きく印象づける描写と話数なのではないかと思います。


それから、もう一つ。第一シーズンと比べて、その使用頻度が多くなっているのが、劇中での音楽ネタの数々です。今回のエントリでは、ちょっとその辺りについてアレやコレやと書いてみたいと思います!




■第二シーズンに突入して目立ってきた音楽ネタの数々

有名ミュージシャンを数多く起用し、音楽ファン的にもアプローチを出来る構成となっている『スペース☆ダンディ』。劇中の音楽制作に参加をしたミュージシャン、バンドを集めたの音楽イベントを開催する等、『スペダン』という作品にとって音楽は切っても切れない非常に重要な要素となっていると思います。


そして、第二シーズンでは、その音楽的な要素がより作品中で大きなウェイトを占めるようになったというか、全面に出てきたように感じるのです。


例えば、80年代のミュージカル映画や昨今のアメリカでのミュージカルドラマの流行にリスペクトを捧げた第17話「転校生はダンディじゃんよ」やTO-Yの作者である上條淳士先生をゲストに招き、ダンディ達がバンドを結成する様を描いた第20話「ロックンロール★ダンディじゃんよ」、エレクトロなディスコサウンドに合わせてキャラクター達が踊りまくる狂乱の宴を 米たにヨシトモさんのコンテ回で送る(劇中の漫画パロの数々も、米たにさんのアイデア?)第22話「同じバカなら踊らにゃ損じゃんよ」……といったエピソードでは、"音楽"の存在そのものがエピソードの軸になっています。





また、第二シーズンでは、通常のエンディングとは異なる特別な……所謂"特殊エンディング"の使用頻度も増えています。第20話では、劇中に登場するダンディ達のバンド、DROPKIXが、第21話では、オルタナティヴ・ロックバンドのOGRE YOU ASSHOLEが、そして、第22話ではラッパーのZEN-LA-ROCKがそれぞれスペシャルなエンディング曲を担当。


OGRE YOU ASSHOLE / ピンホール>



ZEN-LA-ROCK / MIDNIGHT DELIVERY>



そこで、チョイスをされているミュージシャン、バンドのセンスというのも流石の一言です。なかなかOGRE YOU ASSHOLEみたいなオルタナティヴなバンドの曲がアニメで流れることって無いと思うんですが(オーガがアニメに関わるのは『蒼天航路』以来?)、そんなバンドの曲を"スッ"とエンディング(とBGM)に起用するセンスとそれが許されるクールな世界観、自由度。ロックやファンク、テクノにハウス、ヒップホップ……とあらゆる音楽を雑食的に取り込む『スペース☆ダンディ』だからこそ出来る"音楽"の使い方なのかな、なんて思うんです。




■第20話「ロックンロール★ダンディじゃんよ」の音楽ネタ

そんな『スペース☆ダンディ』ですが、音楽を扱うからには、そのディティールの部分にも強いこだわりを感じます。


音楽へのこだわりを特に強く感じたのが、第20話「ロックンロール★ダンディじゃんよ」。ダンディがロックスターになることを夢見るジャイクロ帝国の総帥、ジョニーと出会い、度々衝突をしながらもロックバンド、DROPKIXを結成、ビッグヒット「かんちがいロンリーナイト」を世に送り出すも、バンドはそのまま解散、そして伝説へ……というのがストーリーの大筋ですが、自分が観ていてビックリしたのが、DROPKIXがデビュー前に出演をしていたライブハウスのシーン。





この特徴的なフロアのデザイン、そして、背景に描かれた「音響二万電圧」という文字……パンクロックやハードコアが好きな人ならば、一瞬でピンときたことかと思います。このライヴハウスは、高円寺にある東高円寺二万電圧に間違いない!





東京には、数多くのライヴハウスが存在をしていますが、パンク、ハードコア系のバンドを多数出演し、その筋のバンド、ファンにとっての"聖地"の一つとなっているのが、この東高円寺二万電圧。


<FORESIGHT / LIVE at 東高円寺二万電圧 >



アニメの劇中にライヴハウスを登場させるのに、パンク系でキャパとしては小規模な東高円寺二万電圧をチョイスするこのセンスとこだわり。エンディングを観てみれば、取材協力として東高円寺二万電圧の名前がクレジットされており、キチンと取材申請をした上でアニメの中で、あのライヴハウスを再現したであろうことが分かります。


また、このエピソードの中で登場するDROPKIXの「かんちがいロンリーナイト」を手掛けているのが元ナンバーガール〜現ZAZEN BOYS、KIMONOS他……の向井秀徳氏というのも凄い話で。


劇中で何度かダンディが吉川晃司さんをリスペクトする発言をしていたのを受けてか、曲調としてはBOOWYっぽいメロディーラインで、ちょっと懐かしい感じのバンドサウンドになっていましたが(ライヴシーンもBOOWYの東京ドーム公演の映像を参考にしている?)、あの鋭いギターのカッティングは、まさに後期ナンバーガールZAZEN BOYSサウンドに通じるもの。そして、Vo.を務めるダンディ役の諏訪部順一さんの歌い方も、まさかの向井秀徳風の歌唱になっており、これには思わず大笑いをしてしまいました。




■まとめ

登場をするミュージシャン、バンドの豪華さに加えて、楽曲や細かいシークエンスなどなど、"音楽"にまつわる部分には強いこだわりを感じさせるアニメ『スペース☆ダンディ』。


第二シーズンになってから、更に音楽的な要素が強まり、アニメファンだけではなく音楽ファンにもオススメをしたい作品になっていると思います。よく動くアニメーションと併せて、この辺りからも贅沢さを感じさせてくれる作品ですよね。