『Go! プリンセスプリキュア』の"勝手にしやがれ!!" - クローズとシド・ヴィシャス






プリキュア』シリーズ最新作、『Go! プリンセスプリキュア


何はともあれ、3D CGを駆使した変身シーンと戦闘シーンにビックリ、第1話から二段階変身を行うという新しいプリキュアの設定にもビックリ。


長期シリーズの人気作なれど、シリーズ毎に新しい試みを次々に導入する、そのチャレンジ精神にはいつも驚かされる。


そんな『Go! プリンセスプリキュア』。個人的に非常に興味深く思ったキャラクターがいたので、今回のエントリでアレやコレやと書いてみたい。




■敵幹部の一人、クローズについて

『Go! プリンセスプリキュア』を観て、強く目を引いたのが敵幹部の一人、クローズの存在だ。





このクローズ、前作『ハピネスチャージプリキュア!』の第1話に登場したナマケルダのような愛嬌は、全く感じられない。凶暴で粗野で好戦的。クローズとは、そんな敵役だ。敵ながらもどこか愛すべき要素があり、コミカルな印象すら持っていた近年の幹部キャラと比べると、少しばかり方向性を変えてきた造型なのかなと思う。


物語の導入部である第1話に、こういった凶悪で禍々しいキャラクターを出してきたということは、今回の敵組織はかなりの強敵なのではないか、と観ていて心配になる程。プリキュアの皆さん、敵はかなり手強そうですが、どうか世界の平和の為に頑張ってください。


そんなクローズだけれども、そのキャラクターデザインも興味深い。





ツンツンに尖ったヘアスタイルに、革ジャンを思わせるコスチューム(肩パッドと鋲付き)とド派手なメイク、そして、錠前の付いたネックレス。これは、パンクロックファンならば、即座に目を惹かれるデザインだ。そして、誰しもがある一人のパンクロッカーを連想することだろう。


そのパンクロッカーの名は、シド・ヴィシャス


クローズの尖った髪型と錠前のネックレスという組み合わせは、シド・ヴィシャスそのものだ。




ピストルズシド・ヴィシャス、そして錠前のネックレス

Sex Pistols / God Save The Queen



英国が生んだパンクロックの始祖にして一つの頂点であるバンド、Sex Pistols。王室批判を始めとするスキャンダラスな言動に、過激なステージング、そして、荒々しいロックンロール。シニカルで挑発的なリリックやシンプルながらもラウドなサウンド、そして、ファッションとありとあらゆる面で"パンク"のパブリック・イメージを形作った偉大なるバンドである。





そのピストルズの中期〜後期のベーシストだったのがシド・ヴィシャス。ドラッグ中毒で、バンド解散後に恋人のナンシー・スパンゲンを刺殺し(ただし、ナンシー殺害に関しては諸説あり)、自身もヘロインのオーバードーズにより21歳という若さでこの世を去ったパンクロック永遠のアイコン。


そんなシド・ヴィシャスのトレードマークが南京錠のネックレスだ。パンクの定番ファッションアイテムとして未だに愛され続けているこのアクセサリー。


デザイナーさんが、シドやピストルズをどこまで意識してデザインを行ったのかは分からないけれども、パンクの普遍的なイメージ、モチーフを形にした結果、クローズのネックレスは誕生したのではないかと思う。




■クローズのネックレスと『プリキュア』の鍵

おもしろいのが、この『Go! プリンセスプリキュア』という作品において、鍵や錠前が重要なモチーフになっているということである。





クローズは、錠前を使ってゼツボーグを誕生させるし、プリキュアたちは鍵によって変身し、ゼツボーグの元になった人間を解錠することで助け出す。


劇中で、文字通りの"キーアイテム"になっている鍵の数々だけれども、これがクローズの場合だと、シド・ヴィシャスの代名詞だった南京錠のネックレスと上手いことリンクしている。


これなんて、自分なんかはちょっとしたミラクルにすら感じられるのだ。過激なパンクロッカーの象徴的なアクセサリーだったネックレスが、時を経てニチアサの敵役のデザインに再生産をされるのだから、本当にアニメと音楽のクロスオーヴァーには興味が尽きない。




■最後に

シド・ヴィシャスのイメージを身にまとったキャラクターがニチアサのキッズアニメに登場するというおもしろさ、そして、そのイメージが作品の主要なモチーフにも繋がるというおもしろさ。それに強く興味を惹かれてしまい、久方ぶりにBLOGを更新。


ところで、クローズのベースになっているのはシド・ヴィシャス的なパンクロックのイメージだとして、顔のメイクは、やはりKISSだろうか。これが意識的なのか無意識的なのかは分からないけれど、パンクとハードロック、ヘヴィメタルがミックスされているデザインになっているのもなかなかに趣深い。


"パンク""ヘヴィメタル"=悪という単純な連鎖の良し悪しは一先ず置いておいて、そういった攻撃的な音楽が持つイーヴィルなイメージをキャラクターとして具現化したのが、クローズということになるのだろう。


毎シリーズごとに、個性豊かな幹部役を登場させてくる『プリキュア』シリーズ。今シリーズも色々と楽しませてくれそうだ。