メタをやっているハズが、気付けばベタに! 変身魔法少女アニメ界の"邪道の王道"『ナースウィッチ小麦ちゃんR』






川口敬一郎監督による新作アニメ『ナースウィッチ小麦ちゃんR』。


川口監督のファンである自分は、以前から「もしも、川口監督が『プリキュア』シリーズのディレクションを手掛けたら……」という妄想をよくやっていた為、まさに、ニチアサ的なプロットを川口監督らしいハチャメチャなギャグセンスとサービス精神旺盛なエロやパロでコーティングした『小麦ちゃんR』は、ひたすらに心地良く、とにかく楽しい作品です。


BEAT CRUSADERS、現THE STARBEMSのヒダカさん作曲による、乙女新党のエンディング曲も良いですよね!





そんな『ナースウィッチ小麦ちゃんR』ですが、ちょっとおもしろく思った点がありまして、今回のエントリでは、そのことについてアレやコレやと書いてみたいと思います。




■メタをやっているハズが、結果的にはベタベタに!?




ナースウィッチ小麦ちゃんR』という作品に対してユニークな思ったのが、そのギャグのセンス。劇中では、変身魔法少女アニメのパロディがふんだんに盛り込まれており、それらが無軌道で奔放な笑いを生み出しています。


それっていうのは、例えば、


「変身魔法の呪文や必殺技の名前が変」
「"魔法"少女なのに、(理論は完全に破綻しているものの)科学的な解説を入れようとするナレーション」
「お供になる妖精的なキャラクターの性格が下品」
「変身した途端に、性格がサディスティックになる魔法少女
魔法少女なのに、攻撃手段が魔法を使わず暴力による物理攻撃」
「敵役のキャラクターの攻撃方法やデザインが、どこか卑猥」
「そんなキャラにも、その敵役を演じる声優さんは、豪華な顔ぶれによるベテラン陣」


などなど。いずれも、王道の変身魔少女アニメの"ベタ"な設定やキャラクターに対する脱臼感覚に溢れた"メタ"なギャグの数々です。


突き抜けてナンセンスで、豪直球にバカバカしい設定が楽しい『ナースウィッチ小麦ちゃんR』ですが、おもしろいのが、上記したようなメタな変身魔法少女パロディのネタって、実は、他のメタな魔法少女アニメや漫画、ゲーム作品で度々用いられているネタでもある点です。


大魔法峠』、『撲殺天使ドクロちゃん』や『もえたん』に、"変身""少女"というモチーフに特撮ネタを加えた『俺、ツインテールになります。』といった王道から外れたメタな"変身魔法少女アニメ"。そんな作品で鉄板のギャグとして使用されているネタの数々が、『ナースウィッチ小麦ちゃんR』には散りばめられています。




■"邪道の王道"小麦ちゃん




メタな笑いをやっていたハズが、よくよく考えてみると、それが一周回って、メタな世界観の
中ではストレートでベタなギャグになっているのです。


そう考えてみると、『ナースウィッチ小麦ちゃんR』という作品は、メタな魔法少女アニメの王道を征く……いわば、変身魔法少女アニメ界における"邪道の王道"と呼べる作品なのかもしれません。


それもそのハズで、本作は変身魔法少女ネタを徹底的にパロディにしてみせた怪作『ナースウィッチ小麦ちゃんマジカルて』のリメイク作品。"邪道魔法少女"の流れを作った原点の一つともいえる作品の正統的な系譜に位置するアニメ作品なわけですから、まさに、邪の道を真っ直ぐに歩む作品だといえます。


それを考えてみると、やっぱり『ナースウィッチ小麦ちゃんマジカルて』というアニメは凄かったのだな、と改めて実感させられますね。


変身魔法少女アニメは長いヒストリーがあるカルチャーなわけで、そこから派生したパロディやメタな作品もこれまた歴史があるかと思うのですが、近年のアニメ作品における魔法少女パロのスタンダードを形作った作品の一つとして『ナースウィッチ小麦ちゃんマジカルて』(と『撲殺天使ドクロちゃん』『大魔法峠』)の影響力って大きいいのかな……と『小麦ちゃんR』を観て思いました。


ベタからメタに、メタの中でのベタに。その辺りを考えて観てみると、また、旨味が出てくる気がするんですよね、このアニメは。




■あとは、完全に雑感ですが……

個人的には、本作でシリーズ構成を務められている村上桃子さんの存在が非常に気になります。あのギャグのカオスっぷりは、てっきりふでやすかずゆきさんによるお仕事だと思っていた(あの作風を観て、完全にふでやすさんがシリーズ構成をやられているものと思い込んでいました……)のですが、実は、そのほとんどを村上さんが書かれていることに気付きビックリ。


村上さんは、これまでにも、川口監督や吉原達矢さんの作品に脚本家として参加をされた経験がある方とのこと。本作での演出などとの配分は分かりませんが、村上さんのシナリオは川口監督作品に非常にマッチしているな、と思った次第です。これからは、各話、キチンと脚本のクレジットをチェックせねば……。





あと、何よりツカサちゃんが非常に良い娘だなと思いました。川口監督、恋をしている女の娘のいじらしさを描かせたらホントに上手いと思うんですよね、エモーションの描き方が。