2008冬 エロマンガ10 〜アカネを追いかけて宝物を発見したあの頃〜

 
酔拳の王 だんげの方」さんのエロ漫画ベスト10企画に、今年は参加してみます。
 
え!? 新年一発目の更新の話題がエロ漫画!?
 
まぁ、まぁ、楽しければいいじゃないですか(笑) 18禁の話題なので、一応隠しておきますね。
 
 
自分にとって、エロ漫画の最大の魅力っていうのは、その「マニアックさ」なんですね。エロ漫画っていうジャンルって、基本的には少年誌や少女漫画と違って、特殊性やマイノリティーなものに対して、もの凄く寛容だと思うんですよ。
 
(もちろん、エロ漫画の中にも、少年漫画や少女漫画同様の物語性と普遍性を持つ名作も多数存在しますが)
 
僕にとってエロ漫画がおもしろいのは、そういう「特殊性」「マニアックさ」が垣間見える瞬間なんですよ。それっていうのは、劇中に登場するキャラクターの変態性だったり、描いてる作者さんの趣味、嗜好などのバックボーンが不意に顔を覗かせる瞬間だったり…。
 
そんな、「マイノリティー」(エロ漫画家の名前じゃない方)好きの筆者が選んだのは、以下の10冊です。
 
 
工藤洋 / SURVIVAL GIRLティーアイネット
 

 
僕はオタクのオタクというか、何故か昔から、もの凄く「人が自分の好きなモノについて、熱く語っている姿」を見るのが大好きなんですね。だから、エロ漫画も、描いてる人の性癖がストレートに出ているものが大好きなのです。
で、自分の中で今とても好きなのが、工藤洋先生のエロ漫画で、とにかく巨乳に対する嗜好とこだわりが半端ではない!
普通、ここまで大きい胸を書く作家さんだと、大抵人体改造とかニプル・ファックみたいなアブノーマルな方向に進みそうなもんですが、工藤洋先生の場合は、とにかく胸! 胸! 胸!
 
リビドーを肛門期へ成長させるのを拒み、ひたすら口唇期に執着するが如く、エロ漫画に何故か多いアナル描写を捨て置いて、ひたすら巨乳に執着する様は潔さすら感じます。
初単行本である本作では、まだ登場するキャラクターの胸の大きさも様々なのですが、収録作品、「パイズリ屋」におけるタイトルの狂った言語感覚に、その後の巨乳路線が垣間見えたり。
 
この単行本はギャグタッチのコミカルな短編が中心ですが、現在「BUSTER COMIC」で、ストーリーものの連載「ふぞろいと初恋」を連載中の工藤洋先生。こちらも、どう転がっていくか非常に楽しみです。
あと、工藤先生の描く女の子はですね、ツリ目の娘がいいんですよ。本当に読んでいて、ゾクゾクします。
 
 
オノメシン / おっぱいパ〜ティ〜コアマガジン
 

 
オノメシン先生も、異常な程の巨乳好きなんですが、エロに重点を置くことで、自身のフェチズムを徹底してますよね。
とにかく無駄な情緒を省き、ひたすらエロス。何でしょう、車で例えたら、ギアがトップギアで固定しちゃってる暴走車みたいな感じです、常に急加速の。映画の「マッド・マックス2」に出てきそう。
この方の同人誌とか見てみると、結構エゲつない描写もあったりして、ある意味そういうエロに対する追求、ストイックさが、エロ漫画にプラスアルファ(「物語性」や「批評性」など)が求められる現代において、逆に強烈な個性になっていると思います。
 
 
ジョン・K・ペー太 / プルプル悶絶ライセンスコアマガジン
 

 
ジョン・K・ペー太先生の作品を初めて読んだ時に、アメリカのハードコアパンクバンドMisfitsの名作アルバム「Static Age」をフェイバリットに挙げる女の娘が、
 

Static Age

Static Age

 
The DAMNEDのTシャツを着た男の子にレイプされるっていう物凄い描写があって、そのファースト・インプレッションでPunk / Hardcore好きの自分は、一発でファンになってしまったんですよ。それ以来、夢中です。
 
テクノ好きの漫画家さん(平野耕太先生、ばらスィー先生)やメタル好きの漫画家さん(萩原一至先生、エレクトさわる先生)は、いらっしゃるようですが、パンク、特に僕の愛するUS Hardcore Punkはマニアックなジャンル(後世に多大な影響を与えたにも関わらず、いわゆる一般音楽誌からも無視されがち)のせいか、その辺の愛好家の漫画家さんって見たことなかったんです。だから、ジョン・K・ペー太先生の漫画で「Misfits」ってキーワードが出てきた時は凄く嬉しかったし、そのHardcoreとしか言いようがない作風を見て、やっぱりあの辺の音楽って影響がある人には多大な影響があるんだなと再認識&納得しました。
 
ペンネームをSF、ホラー映画界の巨人「ジョン・カーペンター」からとっているのも、ホラー映画ファンの自分にとっては大きな親近感。こういうセンスを持った人が一般誌じゃなくエロ漫画界から出てくるっていうのが、おもしろいですね。ジョン・カーペンターの傑作SFホラー「遊星からの物体X」における人体破壊描写に、ルシオ・フルチを思わせるグロテスクというよりは汚物マニアな作風を加えたエロ描写は圧巻の一言。有名な眼球レイプシーンは、ルシオ・フルチ「サンゲリア」の眼球串刺しシーンへのオマージュでしょうか?
 
そんなハードコアな作風にも関わらず、決して陰惨にはならず、基本コメディータッチで描かれているのも、やはりMisfitsや「Machine Gun Eticket」の頃のThe DAMNEDを連想させます。
 


 
要は、激しくて速いんだけど、カラッと明るいんです。作風といい、影響下にある文化圏といい、アナーキズムとマイノリティーのおもしろさに満ちた一冊だと思います。
 
 
ジョン・K・ペー太 / 超悶絶カリキュラムプラスコアマガジン
 

 
もう一冊、ジョン・K・ペー太先生。これは、昨年出版された単行本で、過去作品を再収録したものなのですが、何気に活動歴が長く、多作な漫画家さんなので、こういう再発、再編集ものの単行本が、あと何冊か出ています。ハードコアバンドの全音源集やディスコグラフィー盤(決して、ベスト盤には非ず!)を見ているようで、多分自分は、この辺にもパンクのイメージを重ねているんですよね。
オマケ漫画の「狂い咲きデストロイ!! 逆襲のマーダーライド」の元ネタは「狂い咲き」=石井聰亙のぶっ飛び映画「狂い咲きサンダーロード」、「逆襲の」=「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」とか「メカゴジラの逆襲」とか「悪魔のいけにえ3 レザーフェイス逆襲」とかのオタク受けしかしない、どーしょーもない映画のタイトルにおけるテンプレート、「マーダーライド」=ロブ・ゾンビの大「悪魔のいけにえ」リスペクト映画「マーダー・ライド・ショー」だと思われます。
 
大好き! こういうセンス!
 
 
KASHIみちのく / 乳HAZARD東京三世社
 

 
かつてプロレスというジャンルは、多大な影響力を持っていた時期がありまして、その影響下から素晴らしい漫画家が幾人も誕生しました。それは、小林まこと先生であり、ゆでたまご先生であり、ヒラマツミノル先生であり…。が、90年代に入り、MMA(ミックスド・マーシャル・アーツ=総合格闘技)、バーリ・トゥードの登場以降、プロレスは急激にその影響力、人気を落としてことになります。(そういえば、MARUTA先生も「快楽天」の連載で主人公に桜庭のTシャツを着せたりしてた)
 
そんなプロレスものの肩身が狭い現代において、エロ漫画界隈で、暑苦しいまでのプロレスLOVEを放っているのが、KASHIみちのく先生です。
インディープロレスから出発し、世界最大手のプロレス団体WWFのメインイベンターにまで上り詰めた、プロレス界のメジャーリーガー、TAKAみちのくからペンネームを拝借したと思われるKASHI先生ですが、この単行本でもタイトルでプロレス団体DRAGON GATEのユニット「NEW HAZARD」(現在は解散)を文字ったり、とプロレスLOVEの精神がアチコチに見受けられます。Blogのプロレス観戦記も熱い! DRAGON GATEがお気に入りの団体で、更に井口昇監督のようなモダンなホラー映画のファンでもあるKASHI先生。この辺のマニアックなんだけど、現代的な感覚が、絶妙で素晴らしいです!
 
 
瓦敬介 / 菜々子さん的な日常:REコアマガジン
 
菜々子さん的な日常RE (メガストアコミックスシリーズ No. 186)
 
究極の童貞漫画ですよね。
それは、ヒロインである菜々子さんが、決して肝心な部分を主人公の敬助くん(=読者)に見せてくれないっていうのも、もちろんこと、高校生活のノスタルジーであるとか、舞台となっている北海道の地域や気候の特殊性っていうのを上手いこと作中に盛り込んで、読者に思春期の頃の性や郷愁を想起させるっていう巧みさも含めて。
胸やお尻は、毎回豪快に露出させているので、これ一般誌だったら、もうアウトなんだろうけど、エロ漫画雑誌っていう掲載誌の特殊性のせいで、ギリギリの線でギャグ漫画として成立しているのが素晴らしいですし、エロ漫画での連載作品だからこそ、成立するおもしろさがあると思います。
 
 
上連雀三平 / わたしを有明につれてって!茜新社
 

 
特異な才能の多いエロ漫画家界隈でも、奇想の系譜にいらしゃる方ですよね。同性愛者が相撲をするスポ根漫画とか、ふたなりの少女が同人誌即売会を目指す話とか、基本はビルドゥングス・ロマンなんだけど、特殊な性癖のエロ要素と声優を始めとするオタクネタをふんだんに盛り込むことによって、こんなにエキセントリックな物語になるんだ〜っていうのに、毎回驚かされます。
上連雀先生の作品だと、他には、某ふたなりアンソロジーでの「ゾンビ」のパロディー漫画(映画「DAWN OF THE DEAD」で、もしも、ゾンビの代わりにふたなりっ娘が出てきたら、みたいなノリのトンでもない漫画)が面白かったですね。
 
 
小沢田健吾 / 学校でイこう!ティーアイネット
 

 
音楽好きには、ペンネームが小山田圭吾(a.k.a コーネリアス)を連想させ、やたらと印象に残る小沢田健吾先生。
う〜ん…もしかして、オマージュだったりするんでしょうか?
「夢人」での連載「ゴーイング・エロ」(何て、ストレートなタイトルだろう)を収録し、書き下ろしのおまけエピソードまでつけた一冊。
「エロ」を追求する男子、女子学生の「青春」っつうか「性春」。青い! 青いよっ! でも、その青さが、堪らなく魅力的に映える。そんな一冊。
 
 
きあい猫 / 壊者
 

 
単行本は、2007年の作品なんですが、今年雑誌に掲載された作品がどれも良かったので。
基本的には、マイノリティー救済の物語ですよね。変態性を内に秘めている人間が、それを開放することによって、他者に受け入れられる、という。
エロ描写は、被虐の限りを尽くすわけですが、他のSMモノと違って、ラストは「堕ちる」んじゃなくて「救われる」。
そういう目線が、凄く優しい漫画だと思います。
 
 
あまあま / あまあまパラダイス(笠倉出版社)
 

 
発行は、2000年と古いんですけど、自分の中で想い出に残るエロ漫画。
あまあま先生、すっごい大好きだったんですけど、ある日を境にパッタリと漫画の掲載が雑誌から途絶えてしまってですね。それ以来、「消えたマンガ家」じゃないですけど、自分はあの柔らかなタッチの線と、ほわ〜っとした絵柄をず〜っと渇望して止まなかったんですよ。
 
それが、2007年に、某ゲームのアンソロジー本で、商業誌に復活をされて!
 
今は、同人とアンソロジーが活動の中心なんですが、あの絵を見ることができる、というだけで自分は幸せです。
と、同時に、この「あまあまパラダイス」というエロ漫画が自分の中で、凄く大きな思い入れの受容体になっていたことに、驚きを感じました。個人的な思い入れの一冊であります。
 
 
で、10作品とは別に、好きなシチュエーションですが、マニアックなPUNK / HARDCORE系とか、映画のTシャツを着ている女の子かなぁ、自分の場合。エロ漫画だと、ジョン・K・ペー太先生の作品でしかお目にかかったことありませんが…。
昔、街中で見かけた「イレイザー・ヘッド」のTシャツ着た女の子、可愛かったなぁ…。
つまんない答えで、御免なさい(エロ漫画家じゃないほう)。でも、いくつになっても、PUNKや映画が好きなんだい!
 
 
以下、集計用です。
 
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