「ベン・トー」半額弁当争奪戦の格闘理論と"バトルロイヤル"を生き残る為の戦略と

 

 
備忘録の意味も込めて、テレビアニメベン・トーの格闘シーンについてのアレやコレやでサクッと更新です!
 
 

■"半額弁当争奪戦"というバトルロイヤルでの打撃

半額弁当を巡っての争奪戦が繰り広げられる「ベン・トー」。このアニメの格闘技シーンを見てみれば、圧倒的に打撃技の描写が多いことに気付きます。
 

 
戦う相手の性別も体格も関係なしに放たれるパンチとキック。弁当を手に入れる為のハードヒットな拳撃と蹴激は、よく動くアニメーションによって映像化され、アクションとしての迫力も抜群。「ベン・トー」の格闘シーンは、本当に見応えがあります!
 
そして、単純に見栄えだけでなく、スーパーでの大乱闘戦で打撃が最重要視されるのかについても、ちょっと想像力を膨らませておきたいところ。
ベン・トー」の中で、半額弁当を奪い合う参加者達は、それが"狼"と呼ばれる玄人であろうと、"犬"と呼ばれる素人であろうと、そのファイトスタイルは打撃偏重のストライカー・タイプ。モブのキャラクターが相手の肩を極めて地面に抑え込んだり、相手の頭を掴んで吊し上げたり…という場面もあるにはありましたが、乱闘のメインにレイアウトをされているのは、やっぱりパンチやキックのようなシンプルな打撃技です。絞め技や関節技のような"サブミッション"って、ほとんど出てきません
 
何故かというと、理由は簡単で、この弁当争奪戦が多人数による"バトルロイヤル"だからでしょうね。一対一の戦いなら、相手を倒して寝技に持ち込み、ジックリとサブミッションで仕留めるという戦法も大いに有効ですが、大人数が一度に戦うバトルロイヤル、勝ち残り形式の試合だと、相手をグラウンドに引き込んでいる間に、他の参加者に袋叩きにされてしまう危険がある。
 
この辺のリアリティは、プロレスのバトルロイヤルを観たことがある格闘技ファンならよく分かっていただけると思います。この手の試合って、丸め込みやサブミッションが特異なテクニシャンタイプのレスラーって、ほとんど勝てないんですよね。西村修とか外道とか、あの辺のグラウンドを得意とする"いい味"のレスラーが、相手を丸め込んで3カウントを奪った直後に、他の参加者に一斉に抑え込まれて敗退する…という展開は、プロレスのバトルロイヤルにおける定番の名物シーン。
 
恐ろしくシンプルで、一見すると余り戦略性というものを感じさせない殴り合いも、大人数でのバトルロイヤルという試合形式を考えれば、実に理にかなっている。周りを敵に囲まれた状態では、常にスタンドの状態で、なおかつ隙を作らないで戦うことが大前提。高度なグラウンドの技術のような複雑なテクニックよりも、ステゴロこそが路上の喧嘩では最強という花山薫的な戦法、哲学こそが"半額弁当"という栄冠を手にする為には必要なのでしょう。
 
 

■バトルロイヤルでの戦法とルール

"理にかなっている"といえば、第2話「サバの味噌煮弁当 674kcal」で主人公が見せた戦い方も、バトルロイヤルという試合形式で生き残る為には、実に理論的な戦法だったと思います。
 
このエピソードを簡単に説明をすると、"軍団"と言っても差し支えない程の大人数で徒党を組んだ連中や、その圧倒的なパワーで他の参加者からも畏怖をされている強豪らに対抗をする為に、主人公は"一時的"に自身の"戦い"に対する哲学や目的を同じくする参加者と手を組むという展開が描かれるんですね。
ですが、手を組むといってもあくまで、それは"一時的"な協定なわけです。勝ち残って弁当を手に入れることができる人数は最初から決まっているわけで、頭数が減ってきたら、さっきまで協力していた仲間といえども、そこはもう容赦なくボッコボコ…恐らく、"全力で互いにぶつかり合う"という、この弁当争奪戦の参加者に対する礼儀、リスペクトの精神を込めた拳ではあるんでしょうが、まぁ、その辺の細かいフィーリングや情緒をすっ飛ばして結果だけを見ると、とにかく情け容赦なくボッコボコです。さっきまで仲間だった相手もボッコボコ。女子にも腹パンです
 

 
ここだけトリミングをしてしまうと、ちょっと無慈悲で酷いシーンにも思えますが、"バトルロイヤル"という試合形式を大前提に考えてみれば、ここまで確実に勝てる戦法もないわけです。何も、馬鹿正直に大多数相手にたった一人で戦いを挑むことはない。利害が一致した"仲間"と協力して、他の参加者を脱落させ、頭数が減ってきたところで相手を潰しにかかる…こんなに理論的に勝率を上げる方法もないですよ。
 
"バトルロイヤル"を描いた特撮作品やアニメ作品は色々あります。ただ、「ベン・トー」のように、こういうバトルロイヤルの戦略性を描いた作品って、今までありそうでなかった。本来であればこういう"大人数同時参加型のバトル"って、もっとゲーム性が高くて、そこで生まれる様々な戦法やスタイルを楽しむ類のものだと思います。そう考えると、ヒロインの一人である白粉花のバトルに対するアプローチなんかも見ていておもしろいですよね。
 

 
乱闘中は後ろに下がって、逃げ回って、他の参加者があらかた脱落したところで、前に出てきて弁当をゲット! 天然キャラの可愛い女の娘を使って、コミカルに描かれてはいますが、これ、よくよく考えるとズルいっちゃーズルい。でも、圧倒的に賢い。それに、彼女だって、戦場に立っている以上は、乱闘に巻き込まれるかもしれないというリスクを背負っているわけで、まぁ、これもまた一つの立派な戦略、生き残るための理知的な戦法だと思うわけです。
"戦い"にかける熱い男の思いを描きつつも、並行して、こういった"労せずして勝つ方法"が描かれているのが何とも上手いし、心憎い。
 
とはいえ、弁当争奪戦に「店員が店の奥に消えてからがスタート。それ以前に弁当に手を付けるのはフライング」とか「食べる以上の量を奪わない」とか「弁当を手に入れたものには手を出さない」といったルールがあるように、その戦略にも一定の線引きがあるんでしょうね。第3話で、主人公が猟犬群の徹底的に戦わないファイトスタイルを否定し、彼らと決別したのはその最たる例であり、象徴的なシーン。このシーンが前半にあったことで、半額弁当争奪戦という馬鹿馬鹿しくも真摯な戦いの場に強い説得力が生まれた。様々な戦法やスタイルがあろうと、そこで"狼"になるにはプライドと闘争心が必要。そういうことなんでしょう。
 
 

■まとめ

ひたすらボコボコにされたり、ボコボコにしたりしているようで、"バトルロイヤル"という試合形式を考えてみれば、意外と理にかなった格闘理論や戦法が実践されている気がする「ベン・トー」。
この辺を色々と考えて、アレやコレやと妄想してみるのもなかなかに楽しいもんです!
 
 
 
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