アニメソングに使われる停滞した日本語ロックと、進化を続ける萌えソング

今年も例年通り、春から数多くのアニメが始まった。
良作が多く、僕も今のところ週に20本程見ている。


そこで、思ったのだが、アニメにおけるタイアップソング。あれが、数年前の状況に比べて
随分と様変わりしているな、という印象を受けた。
いや、確かに旧態依然とした、例えばavex絡みの安易なタイアップ、J-POPのコマーシャルと
してのアニメソングも依然としてあるわけだが、ロック系の楽曲を中心に意外というか、
思いがけないトコロから曲が引っ張ってこられているのを目にすることが多くなった。


例えば、9mm Parabellum Bulletみたいなアーティストの楽曲がアニメのOPとして使用される
なんて、数年前では想像もつかなかったことだ。


RD 潜脳調査室OP 9mm Parabellum Bullet / Wanderland



以前、宝島社のムック「音楽誌が書かないJポップ批評」のコラムで、サンボマスター
ガガガSPなど、当時「青春パンク」と呼ばれていたアーティスト達の楽曲がジャンプ系のアニメ
に多用されていることや、ラルクT.M.Revolutionがアニメに接近していったことを例に挙げ
「アニメソングのコマーシャルソング化」について言及がなされていた記憶があるが、
当時の僕は、そうした動きに対して、とても冷ややかな態度をとっていた。


その頃は調度ナンバーガールの登場を皮切りにジャパニーズ・オルタナロックが形成され、
日本語ロックの急激な洗練化が進んでいた時期であり、そうしたシーンで流れる「ロック」と
「音楽誌が書かない〜」で批判されたようなアニメのOPやEDで流れる「ロック」には大きな隔たりがあった。


ところが、ASIAN KUNG-FU GENERATIONが登場した辺りからだろうか?
状況は大きく変わってきた。ナンバガや、スーパーカーといったジャパニーズ・オルタナロック
の延長線上にあるアジカンの様なアーティスト達のメジャー化に伴い、そうした曲がアニメでも使用
されるようになってきたのだ。
中には、先鋭的な音楽センスで楽曲を選び、そのセンスでアニメのイメージを作り上げるケースも
出てきた。「エウレカ・セヴン」なんて、その最たる例だろう。ノイタミナにおけるJ-POP、J-RAPの使い方とかね。


そして今では、十年近く前に蒔かれた日本語ロックの種があちこちで芽吹き、育ち、その流れにある
ロックがアニメのOPやEDで流れるなんてのが極当たり前のことになっている。


陰の王OP Veltpunch / Crawl(←この人たちは何気に、活動暦長いです)



図書館戦争ED Base Ball Bear / Changes



ただ、僕はそうした状況に余り面白みのようなものを見出せない。
もちろん、ロック・ミュージックは本当に奥が深いものだし、「タイアップ」による楽曲でアーティスト
を知り、やがてはそのアーティストの背景にある音楽を知ることで、莫大な情報量を持つ音楽史
を紐解いていく……なんてこともありえるだろうから、間口が広くなったという意味では、
9mm Parabellum Bulletみたいなアーティストの楽曲がアニメで流れることは逆に喜ぶべきこと
なのかもしれない。
でも、今の状況って、僕にはどうしても日本のロックが停滞しているようにしか見えないのだ。
言うなれば、楽曲のクオリティーは高くとも、毒気が足りない。
う〜〜ん、何なんだろうな?この違和感は?


一方で、アニメの為に作られた曲、アニメソングとして独自の進化を遂げた楽曲というものが、
9mm Parabellum BulletBase Ball Bearの対極に存在する。
今では、声優ソングや萌えソングがそうした楽曲の中心かな。
これらの曲は、停滞どころか、年々もの凄いスピードで進化を遂げていっている。


狂乱家族日記OP MOSAIC.WAV / 超妻賢母宣言



楽曲の素晴らしさ、ブッ飛び具合は言わずもがな、アニメーションとのシンクロ具合も凄まじいことに
なっているこの曲。
いったい何をどうしたら、ここまでハイテンションな映像が作れるのだろうか?
MOSAIC.WAVは進化を続けるアニソン・アーティストの代表格だろう。
そして、こうした萌え楽曲の先鋭化、進化は日本のロックシーンの停滞をヨソに着々と地下
(と秋葉原の地表)で進行しているのだ。


アニメによって毒を抜かれた日本語ロックと、アニメの毒電波を浴びて日々進化を遂げる萌えソング。
今現在、どちらがより刺激的な音楽かは、言うまでもないだろう。