何があったんだ!? ガイ・リッチー! 『ガイ・リッチー / REVOLVER』
吉祥寺にガイ・リッチーの「REVOLVER」を観に行ってきた。
ガイ・リッチーといえば、誰が何と言おうと「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」であり、ブラッド・ピット主演の「snatch」を撮った、群像劇のプロフェッショナルである。
僕も、映画好きの端くれとして「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」は好きな映画の一つだ。
練りに練られたプロット、カッコいい音楽(特に、OCEAN COLOUR SCENEの曲が好き)、スタイリッシュな映像、脇役なのに無駄な存在感を放つスティングなどなど、
当時、リアル・タイムで劇場で観ることはできなかったものの、レンタルビデオ屋でVHS(当時はまだ、ビデオが主流の時代だった)を借りて家で観た時の衝撃は忘れない。
個人的に「snatch」もおもしろく、「ガイ・リッチー」といえば僕の中で「イケてる」監督の一人であった。
が、マドンナとの結婚後、どうもその雲行きが怪しくなってくる。
嫁を主演に撮った「スウェプト・アウェイ」が余りにもアンマリな出来であった為に、その評価は一気に急降下。
僕もやっぱり御多分に漏れず、劇中でのマドンナのたるんだ体つきを見ながらガッカリした類の人間の一人であった。
そういや、マドンナと結婚してた時に、空き巣に入られるっていうニュースありましたな。懐かしい。
そんなリッチーさんの現時点での最新作が、日本でも劇場公開。
ポスターを観たところ、おぉ! これは、ガイ・リッチーさんお得意の群像劇をイメージさせるデザインじゃないですか!
更にヒップホップ・ユニットOUTKASTのアンドレ・ベンジャミンが出ているのも期待をそそります。きっと、あの天性の陽気なキャラクターを活かして、劇中で狂言回しの小悪党でも演じるんだろうなぁ〜、とか勝手に妄想してガイ・リッチー復活を期待しながら劇場に観に行って来たわけですよ。
で、観たわけですが・・・。
え〜〜〜っとですね、
正直、困ってしまいました。
まず、「ロック・ストック」や「snatch」のような群像活劇を期待していくと、かなり肩透かしを食らいます。
いや、映像はやっぱりガイ・リッチーらしいスタイリッシュなものだったし、沢山出てくる登場人物はそれぞれキャラが立ってるし、確かにこれまでの作品と共通する部分も多々あるんだけど、話が異常に内向的なんですよ。
物語の大半は、主人公のモノローグと自問自答、自己との対話に費やされます。
で、あれよあれよという間に、物語は主人公の自己救済が行われた挙句に、突如終わりを告げるのです。
なんじゃ、こりゃ〜!
っていうか、この感じ、いつかどこかで見たことがあるような・・・なんだろう、この既視感・・・あ〜! こりゃ、アレだ! 「自己対話が延々行われた挙句に、突如救済され終わる」って展開、エヴァンゲリオンの最終回にソックリだ!
まぁ、ガイ・リッチーがエヴァ見てたかどうかはしらんが、劇中で唐突にジャパニメーションを多分に意識したアニメーション・シーンが挿入されたりと、両作品は奇妙な一致を見せるのであった。
いや〜、でも凄かったなぁ〜。「ロック・ストック」みたいな映画を期待してたもんで、正直見た直後は訳が分からず、久方ぶりに劇場でパンフレット買いましたよ。
僕は、重度のメンド臭がりやで、映画でもアニメでも小説でも、分からないトコロがあると「調べるのもメンドくせーし、たぶんこんな感じだべ」みたいな調子で勝手に脳内補完してほったらかしにしておくような類の人間なんですけど、そんな僕が600円出してパンフ買ったからね! それぐらい、難解な映画だった・・・。
とりあえず、パンフ読んで「謎」はあらかた解決したんだけど、解説で馬場敏裕さん(タワーレコード渋谷店 サウンドトラック担当)という方が、当作品と日本のアニメの関連について、ちょこっとだけ記述されていて興味深かった。
追記として、僕が『リボルバー』を想起させる(ひょっとしたら、リッチーの頭の中にもあったかもしれない)点を。何の前触れもなく、突如アニメーションが何度か挿入されますが、そのアニメのタッチと、そこに流れるジャズ・ロック的なテイストのサウンドは、フランスやドイツでも絶大なファンの多い日本のアニメ『カウボーイ・ビバップ』の菅野よう子の音楽を思い出させ、『リボルバー』を形作る世界観は、こちらも日本のアニメ、押井守の『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』や、最近の世界的ヒットの『涼宮ハルヒの憂鬱』さえもイメージさせます。
まさかガイ・リッチーの映画のパンフで、「涼宮ハルヒ」っていうキーワードを目にするとは思わなんだ。
「エヴァっぽい」って感じた自分の感想も、あながち見当はずれじゃないかもな〜。
いずれにせよ、ガイ・リッチーの「これから」が実に気になる映画でした。
また、単純に楽しめるスタイリッシュなクライム・アクションを撮ってくれるのか、それとも、内なる作家性を突き詰めていくのか・・・。
あ、ちなみに主演をつとめていたアンドレ・ベンジャミンですが、
「陽気な小悪党」みたいな役所を勝手に期待して観に行ったら、「冷酷な高利貸し」の役で、これまた肩透かしを食らいました。
こんなファンキーな音楽やってる人なのに・・・。
Outkast / Hey ya!
あれは、アウトキャストじゃなくてミスキャストだったと思うんですがどうでしょう?
と、最後の最後で、ちょっとだけ上手いこと言ったところで、映画評はまた次回。