ニュージャージーの街角で、映画愛を叫ぶ − ミシェル・ゴンドリー「僕らのミライへ逆回転」

 
先日、休日を利用して、メロンブックスに現在ドッパマり中の漫画「きつねのよめいり」の単行本一巻を買いに行き(嬉)、

きつねのよめいり(1) (ライバルKC)

きつねのよめいり(1) (ライバルKC)

帰りに地元の小さな映画館で、ミシェル・ゴンドリーの「僕らのミライへ逆回転(BE KIND REWIND)」を観てくるという、かなり贅沢な時間の過ごし方をしてきました。
 
で、「きつね」のレビューは、今度ジックリ書く(無駄に熱っぽい文章で)として、今回は映画の感想を書きたいと思います。
 
いや〜、「僕らのミライへ逆回転」。良かったですよ〜! ホント、メチャクチャ良かった!
 

 
僕は今まで、ミシェル・ゴンドリーの映画から「映像愛」や「音楽愛」を感じることはあっても、「映画愛」っていうのをあんまり感じたことがなくて。
 
もちろん、音楽好きの端くれとして、↓みたいなゴンドリー製作のPVのセンスは凄いと思うし、
 
The White Stripes / Fell In Love With A Girl*1

 
大規模なヒップホップのストリート・ライブに密着した「BLOCK PARTY」は最高にカッコいい音楽ドキュメンタリーの中の一本だと思うんだけど、「ヒューマン・ネイチュア」みたいなオリジナル作品は、映画として余りにも懲りすぎていて、自分みたいなボンクラはちょっと受け入れられなかったんだよね。
 
自分にとってミシェル・ゴンドリーという人のイメージは、あくまで「映像作家」であって「映画監督」じゃなかった。
 
とにかく凄い映像を撮る人だっていうのは理解しているんだけど、できれば、映画館に行く前にアニメショップに寄って萌えラブコメを買ってしまう僕みたいなユカイツーカイ俗物くんにも、分かりやすい映画を撮ってくれないかなぁ〜とか思ってたんですよ。「ひだまりスケッチ」読みながら!
 
いや〜、今回の映画でミシェル・ゴンドリーは、それをやってくれたね!
 
それも、ズブの素人が映画への愛情だけで映画を撮ってしまう、という恐ろしく明快なプロットで自身の映画愛を分かりやすく伝えてくれた。
劇中でのジャック・ブラックモス・デフ、そして街のみんなの奮闘ぶりがそのまま、映画への思いに繋がっていて、自分みたいな感受性のアンテナが低い人間にもヒシヒシと伝わるものがありました。
 
いや、もちろん、ミシェル・ゴンドリーらしさっていうか、ところどころにビザールな部分が出てきて(序盤の主人公二人の頭のネジが二本ぐらい取れたようなムチャクチャな行動とか)、そこはちょっと気になったんだけど、映画のストーリーが進んでいくごとに、ドンドン過剰な部分が取れていって、物語もシンプルになっていくのが観ていて本当に気持ちが良かったな。
 
「映画」っていうものの魅力がそのままストレートに表現されて、本作は幕を閉じるんだけど、そのラストシーンには素直に泣きそうになった。
 
「地元の小さい映画館」っていう観たロケーションも良かったんだろうな。公開されて大分時間が経っていたので、人もまばらだったんだけど、僕の直ぐ横で観ていたオバちゃんなんてポロポロ泣いてましたよ(多分、凄く映画が好きな人だったんだと思う)。
 
 
でも「BLOCK PARTY」でも思ったんだけど、ミシェル・ゴンドリーってアフリカン・アメリカンの生活風景を描くのが本当に上手いなぁ。
「僕らの」で出てくる主人公達が住んでいる街やジャズへの愛情(これは、物語の重要なキー)の描き方なんて、まるでスパイク・リーの映画みたいだったよ。
 
 

*1:そういえば、この曲、プロレスラーの杉浦貴が入場曲で使ってたなぁ。