現ナマとスキャンダルを抱えて、突っ走れ! − ロジャー・ドナルドソン「バンク・ジョブ」

 

 
この間観た「デス・レース」が予想以上に面白かったので、調子に乗って、またもやジェイソン・ステイサム主演の映画「バンク・ジョブ」を観てきました。
 
いや〜、この映画も、ものっそい面白かったです!
 
ややネタバレありなので、詳しい感想は隠しておきます!
 
 
僕は、元々ガイ・リッチーの初期作品とか、コーエン兄弟の「ビッグ・リボウスキ」、タランティーノ脚本の「トゥルー・ロマンス」、日本だとクドカンの「木更津キャッツアイ」みたいに、「様々な人間が一つの犯罪に複雑に絡み合い、やがて結末に向かって一斉に集束していく」っていう映画が大好きなんですよ。
 
で、この映画もその辺の映画のお約束事は決してハズしていない感じで、上映中は「これ、どうなっちゃうんだろう!?」って思いながら、ずっとハラハラドキドキ、決して飽きることなく楽しめました。
 

借金取立てに追われるしがない中古屋ディーラー、テリーは、ある日偶然再会した昔の恋人、マルティーヌに銀行強盗を持ちかけられる。
人生の一発逆転を狙って、仲間と共に計画に加担したものの、マルティーヌの不穏な行動を眼にし、計画に作為の匂いを感じ始めるテリー。
無事に強奪計画は成功したものの、テリーの不安は的中。現ナマや宝石に混じって、王室スキャンダルの証拠写真まで盗んでしまったのだ。
強奪物を巡って、政治家、汚職警官、裏社会のポルノ王、過激な黒人至上主義者、そして秘密警察から一斉に追われる身となったテリーたち強奪犯一行。それぞれの思惑、利害が複雑に交錯する中、果してテリーは強大な力から逃げ切れるのか? そして、スキャンダル写真は誰の手に!?

 
ストーリー自体は、実際の銀行強奪事件を元に脚色を加えられたもので、ともすれば「奇跡体験!アンビリバボー」辺りの再現映像辺りと同じ、事件のあらましを追っていくだけで終わっちゃうっていう危険性もあったんだろうけど、イギリス映画らしい魅力的な音楽と、スクリーンで描かれる70年代のロンドンの雰囲気が本当に良いアクセントになっていて、最後まで集中力が切れることなく、物語にのめり込むことができました。
(それにしても、古い町並みがそのまま残っているイギリスの町並みは素晴らしいなぁ。車と役者のファッションさえ、劇中の時代に合わせれば、背景は、そのままロケができちゃうんだから)
 
物語の肝は、写真を手に入れてからにあるんですが、まずそこに行き着くまでの過程っていうのが、見ごたえ充分!
 
銀行の近所の空き家を借りて、地下からトンネルを掘って、金庫に侵入するんだけど、そういえばコレ、ウディ・アレンが「おいしい生活」って映画の中でも同じ手口で銀行を襲おうとしてたなぁ〜とか思い出したり。
もっとも、あの映画では失敗して、銀行の隣の店舗の床を突き破って地上に出ちゃうんだけど(笑)。
この映画の強奪犯達は、流石にそんな馬鹿な失敗はやらかさないんだけど、計画は成功しても結果的にもっと悲惨な状況に追い込まれるわけで…。何か、その巻き込まれっぷりが悲惨すぎて、やってることは犯罪なのに全然憎めない(笑)。
 
この辺が、丁寧に描かれている(ただ、観る人によっては冗長に感じるかも…)おかげで、後のスピーディーな展開が、もの凄く観ていて気持ちがいいんですよ!
 
で、ストーリーは後半、強大な権力が事件に絡んでくることで、緊張感を増していくんだけど、そこで変に社会派とか風刺とかを入れずに、あくまで娯楽モノ、クライム・サスペンスとして最後まで撮り切っていたのも非常に好印象。
 
いや、劇中で暗躍をする秘密警察の描かれ方なんて、ほとんど都市伝説みたいなノリなんだもの。
 
その辺りのリアルと娯楽映画とのバランス、せめぎ合いが本当に絶妙で、映画のラストまで、まさに手に汗を握る展開の連続でしたね。
 
いや〜、本当に娯楽映画として、良く出来ていました。
 
ド派手なアクション・シーンこそなかったものの、ジェイソン・ステイサムも相変わらずカッコよくて、大満足でした。(でも、よく観てみたら、意外と上背はなかった)
 
ただ、ラストのテロップは洒落になりません。観てて、「怖え〜国家権力怖え〜〜〜。裏社会怖え〜〜〜」って割とホンキでブルいました……。
 
 
 
 
個人的にツボだったのが、劇中に登場する黒人指導者の側に、ジョン・レノンオノ・ヨーコのソックリさん俳優がいたこと。 
 

 
ねぇ、コレ、ちゃんと許可とってんの!? 色々な意味で大丈夫かね?