エロ漫画で、極端な性の世界を覗いてみよう

tunderealrovski2009-02-11

 
私が大好きな音楽レーベルの一つに「Mute Records」という英国のレーベルがあります。
 
もっとも、「大好き」と言っても、膨大な歴史とリリース数を誇る老舗レーベルですので、その全容の10000分の1すらも理解できていないと思うのですが…。それでも、未だに中古盤屋さんに行く度に「Mute」の音源を探してはコツコツ集めてしまいます。「Mute」のリリース作品って、どの音源も独特な雰囲気を持っていて、思わず惹かれてしまうのです。
 
その魅力というのは、社長でありレーベルの創始者であるダニエル・ミラーの、音楽に対する一貫した姿勢の上に成り立っています。かつて、ダニエル・ミラーは、「Mute」の運営方針に関して、こんな名言を残しました。
 
「僕はすべてにおいて、極端な音楽が好きなんだ。平均的なものはいらない」
 
この言葉に象徴されるように、「Mute」の音源って、どれも個性が異常に強いんですよ。そして、その極端さから来る革新性やユーモアが、聴く者の心を掴んで離さないわけです。
 
電気グルーヴ石野卓球氏のセレクションによる、初期ミュート音源のコンピなんかも出ていますので、もしも興味がありましたら、一聴をオススメします。

アーリー・ミュート・セレクション

アーリー・ミュート・セレクション

こちらのコンピでは、ダニエル・ミラー自身の音楽プロジェクトである、the NormalやSilicon Teensといったバンドの音源も、まとめて聴くことができます。社長自身が「極端な音楽」なんて言い切っちゃうミュートの音源の数々、どれも素晴らしいです! 「極端なもの」って、良くも悪くも、印象に残るおもしろいものが多いですもんね。
 
 
…と、「極端なもの=おもしろい」という理屈付けを大好きな音楽を引用して行ったところで、今回はその極端さを成年漫画、エロマンガに適応して、エントリを書いてみたいと思います。
 
直接アダルトな画像や表現は出てきませんが、話題が話題なので、一応隠しておきますね。そういうの苦手な方は、代わりに(?)私が、ミュートの個性派アーティストの中でも、一番好きなデペッシュ・モードのオススメ動画を貼ってきますので、よろしければご覧になってください。
 

 
「俺は、エロ漫画が好きなんじゃい!」という悪いコは、以下をクリックで!
 
 

■極端な性の描き方は、おもしろい!

人間の性というのは本当に多種多様で、世の中には様々な性のあり方や性癖が存在します。
 
また、それに付随してエロ漫画界やポルノ産業では、そうした様々なニーズに答えるため、あるいは大規模化した市場の中で他社や他の媒体との差別化を図るため、性の描き方は細分化されていきました。そうした中で、世の中のオルタナティヴな性癖の人たちにも、受け皿みたいなものが、どんどん出来ていったわけです。
 
そうして細分化されていった性の描き方は、その中でどんどん純化、過激化していきます。
 
以前、くろ先生の単行本の感想文を書いた際にも思ったのですが、世間一般では「アブノーマル」と呼ばれるものや理解する人が限られたマイノリティな性も、それを必要としている人は世の中に存在しているわけです。で、エロ漫画も、そういった人たちに向けて、様々な表現を行います。
 
これが私にはとても興味深いのです。もちろん、エロ漫画という媒体である以上、自分の好きなもの、自分好みの可愛い女の子(あ、人によっては男の子の場合もあるのか)が出てくる作品だけを選んで読むのも良いのですが、たまには、自身の「外」にある漫画を敢えて読んでみて、松田優作ばりに、「なんじゃ、こりゃー!!」ってなってみるのもおもしろい。
 
エロ漫画、成年漫画の世界ってニッチなようで実は広くて、沢山の個性派作家さんがいらっしゃるのですが、雑誌単位で見た時に、今もっとも「極端な」エロ漫画誌って、ティーアイネット「BUSTER COMIC」ではないかな、と私は思うんですね。
 
 

■「BUSTER COMIC」の極端な性を楽しんでみよう


 
「BUSTER COMIC」は、ティーアイネットから発行されているA5サイズの隔月刊誌です。A5サイズっていうと、文庫本の調度2つ分の大きさですね。成年誌でも、コンビニ売りのB5サイズの雑誌と違って、書店や漫画専門店に行かないと目にする機会がない、「姫盗人」や「comic PLUM」なんかと同じ、成年誌特有の版型です。
 
この手のサイズの雑誌って、成年誌の中でも、特にコアな傾向の作品が掲載されていることが多いのですが、「BUSTER COMIC」も、誌面を通してかなり独特な雰囲気が伝わってきます。
 
例えば、女性の胸を「これでもか!」というくらい、強調して大きく描く、工藤洋先生(私、大ファンです!)や、若月先生、
 
<工藤洋 / ふぞろいと初恋>

 
<若月 / 教育的!おっぱい指導>

 
登場する女性を、徹底して「備品」「無機質なモノ」として描きシュールな世界観を構築する、まよねーず。先生などの個性派作家、
 
<まよねーず。 / 空き部屋あります>

 
他にも、果てしなく救いようのない陵辱劇を描く、カワディMAX先生、ポップな絵柄で、調教、露出、スカトロなどのアブノーマルな描写をする、きあい猫先生、破壊的な恥辱レイプものの、まるキ堂先生、いトう先生、などなど。
雑誌を通しで見ると、鬼畜系、陵辱系の漫画が多い印象を受けるのですが、それでも工藤洋先生のようなポップな絵柄、作風の漫画も混在していて、トータルで見てみると「作風は、バラけているんだけど、やっぱり狂っている」というイメージを作り上げているのが凄い!
 
陵辱系作家さんの過激な作風といい、工藤洋先生や若月先生の過剰な女体の描き方といい、私は「BUSTER COMIC」を読んでいると、雑誌として、そても「極端」な印象を受けるんですよね。
 
そもそも、「BUSTER COMIC」の編集方針自体が、「BUSTERは雑誌を売るっつーより、アンケートが取りづらい単行本が売れる作家で構成したいというコンセプトでやってきた」(vol.10あとがきより)らしく、要は主力である「MUJIN」や他紙で、コアな表現を突き詰めているマニアックな表現者達を集めて雑誌を作っているようなのです。
 
もちろん、そういう誌面構成に対して、拒絶反応が出る人もいるかもしれない、だっていくらなんでも極端すぎるもの(今号なんて、獣姦モノの漫画あったし…)。ただ、その極端な方向に突っ走った針の振り切れ具合が、自分にとってはおもしろかったりするんです。とりあえず良識的な倫理観を置いといて読んでみると、性的な好みとは別に、「アンタ、何でそんなことを漫画で表現するの?」とか「何で、こんな異常なこと、思いつくの?」という予想外の驚きがあって、そういう面で楽しめるんです。
 
それっていうのは、自分の中で、デヴィッド・リンチの映画を見た時のおもしろさなんかに通じるものがあります。いや、変態性っていう部分では、ジョン・ウォーターズの方が近いかな?
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リンチやジョン・ウォーターズの映画って、ストーリーや役者の演技みたいな映画の基本的な構造とは別に、「え? 何で、そんなことおもいつくの?」っていう監督自身の奇想の部分に驚きを感じる過程が、とっても楽しかったりするわけです。
 
エロ漫画って、こういう部分で楽しむのもアリだと思うんですよ。で、自分の中で、そういう驚きを頻繁に与えてくれるのが、「BUSTER COMIC」の極端な性描写なわけです。いや、本当にここにオイスター先生や掘骨砕三とかが加わったら、エロ漫画界最強の変態雑誌になるんじゃないか、なんて割と本気で思うんですけどね〜。
 
なかなかに売り上げも上々らしく、次号からは独立創刊となる「BUSTER COMIC」。エロ漫画好きなら、一度手にしてみることをオススメします。
その得意な表現にハマるもよし、嫌悪感を感じながらも自分の知らない世界を一度覗いてみるもよし、です。