エロ漫画の表紙に、男の子が描かれてることって少ないですよね

 
またもや、成年向け漫画のお話なので、一応隠しておきま〜す。
 
 
戦国くん先生(なんか、この呼び方、猛烈な違和感が…)の新作「PRETTY COOL」が、大変素晴らしかったです。
 

 
「好きな人に、自分の服を透視させる」という超能力を持った女の子、薬袋(ホントは「薬」の字は旧字体)さんと、そんな彼女を好きになってしまった主人公、各務くんのスラップスティックな恋の顛末を描くラブコメディーなのですが、超能力というギミックを使うことによって恋愛のもどかしさや不安が見事に表現されていて、コメディー作品にも関わらず、読み終わった後思わず感動してしまいました。
 
こういうシュールなラブ・ストーリーですと、ファレリー兄弟の「愛しのローズマリー」なんて映画がありましたが、あれもジャック・ブラック演じる主人公が真実の愛にたどり付くまでを、「相手の外見が、心理状態によって変化する」という奇抜な設定を用いながらも見事に描写した秀作でしたよね。

 
「PRETTY COOL」、本ッ当〜に素晴らしい作品なんですが、個人的にちょっとだけ残念だった点が一つ。
 
表紙に主人公である各務くんの姿が描かれていないんですよ。
 
表紙絵の背景にモブキャラとして男子生徒が描かれているんですが、「PRETTY COOL」のように短編集ではなく長編モノだと、読み手も男の子の方に感情移入をして読むことが多いので、ヒロインだけが描かれて、もう一人の主人公である男の子の姿が表紙にないというのは、ちょっと寂しいですよね。
 
思い返してみると、エロ漫画の表紙で男の子が出てくる作品って、結構少ない気がします。ちょっと、いくつか挙げてみましょうか。
 
<にったじゅん「童貞遊戯」>

「男の子を表紙に描くエロ漫画家」というので、真っ先に思い浮かべたのが、にったじゅん先生。
「童貞」にフォーカスをあてて漫画を描き続けている漫画家さんなので、その単行本の表紙には必ずといっていいほど「女の子に責められる男の子」がシンボル的に描かれます。
 
<木工用ボンド「エロい事してあげる」>

同じく「被虐」の立場として男の子を描くことが多い、木工用ボンド先生の単行本の表紙にも、男の子がよく出てきます。顔は省略されてしまうことが多いんですが…。
 
<あわじひめじ「JR Junior Rape」>

反対に、「加虐」の立場として男性を描く、陵辱系漫画の表紙にも時折男性が描かれることがあります。
この手の漫画で、表紙を見た相手に、作風を伝えるには、欠かせない演出ですよね。
 
<黒岩瑪瑙「SPILT MILK」>

最新作にて「女装少年」という、ちょっと屈折したかたちで男の子を表紙に大きく描いたのが、黒岩瑪瑙先生。
表紙を見ただけで、作品の雰囲気と、物語の中での男性性の扱われ方が一発で伝わる、素晴らしい表紙だと思います。
 
<竹村雪秀「Take On Me 2」>

ちっこい男の子、津田くんと、長身のヒロイン、大野さんの恋の行方を描いた竹村雪秀先生の大作「Take On Me」。
1巻では、大野さん単独でしたが、2巻では表紙に津田くんも登場。
短編集ではなく長編作品の場合でも、なかなか主役の男の子が表紙に出てくることって少ないんですよね…。
 
自分がパッと思いついたのは、この辺り。
こうして見てみると、エロ漫画の表紙に男性キャラが登場する作品って、いくつかのパターンに分けられそうです。
 

・「加虐」あるいは「被虐」の立場で男性が描かれている作品
・「女装」や「ショタ」のようにオルタナティヴな男性性の表現が行われる作品
・長編モノなどで、男性のキャラクターの描写に力を注いでいる作品

 
といった具合に。
 
う〜ん、それでもやっぱり少ない気がしますね。
 
あとは、関谷あさみ先生の「YOUR DOG」の表紙みたいに、髪の毛とかで顔を隠し、限りなくフラットな男性像として描くとか、手や背中など、男性の身体の一部だけを描くに留める場合もありますよね。
 
<関谷あさみ「YOUR DOG」>

これは、表紙の段階では男性キャラクターの個性を消して、女の子にノイズがかからないようにするっていう工夫なのかな?
 
もちろん、エロ漫画という表現の特性上、女の子の絵が全面に押し出されているのは当然といえば当然です。男の子を描くスペースがあるなら、もっと女の子を大きく描いたり、一つでも多くのお尻や胸を描くのが売り上げとかのアピールには正しいのかもしれません。
 
ただ、自分のように漫画を読む時に、割と男の子の描かれ方に注目をして読む人間には、やっぱりちょっと寂しかったりするわけです。エロ漫画って、実は男の子が凄く魅力的に描かれてる作品も沢山あるんですよ。なので、その辺にも注目が集まるように、男の子が表紙に出てくる機会がもっと増えればいいな、なんて思うんですが…。やっぱり、ダメかなぁ…。
 
 
 <関連リンク>
■エロマンガ単行本、表紙の悩みあれこれ。(たまごまごごはん様)
セールスのために、性癖のジャンル分けのために、作家性や作品世界を伝えるために、エロ漫画の表紙は、とっても大事。
個人的に、好きな表紙は、目黒三吉先生の「さんま」ですね。アレは、シュール過ぎて笑いました(笑)。あとは、鬼束 直先生の「Life Is Peachy ?」が好きです。凄く。
 
■戦国くん『PRETTY COOL』(ヘドバンしながらエロ漫画!様)
「PRETTY COOL」のレビュー。オススメの作品なので、是非是非。