オールドスクールなラブコメ漫画のススメ - 高木聡「きつねのよめいり」
なんか今年に入って、やれエロ漫画がどーだの、やれジョン・K・ペー太がどうだの、やれ巨乳がどーだの、といった、「もーお前は何だ!? エロ漫画と巨乳が大好きな人かっ!?」みたいな偏った内容のエントリばっかり書いている気がします。
なんか、このままだと書いてるBlogの内容から、周囲に「アイツは、直腸に腕を突っ込まれて、ゲ×を吐き散らしながら悶絶する女の子*1を見て悦んでいる変態」とか「異常な程の巨乳好き」みたいなレッテルを貼られてしまい、友人には愛想を尽かされ、家族からは疎んじられ、遂にはそんな悪評が世間一般にまで知れ渡ることとなり、TSUTAYAにDVD(暖簾をくぐらないと借りられないヤツ)をレンタルしに行っても、店員さんが意地悪してバクシーシ山下監督作品とか、そういうアブノーマルなDVDしか貸してくれない…みたいな事になりそうで怖いので、たまには成年向けじゃない漫画の話もしようと思います。コンビニで売ってても、青色のビニールテープで封印されてないタイプの漫画ね。
そりゃまぁ確かに、私は、ジョン・K・ペー太の大ファンですが、ス×トロはちょっと…。必ずしも「好きなエロ漫画 = その人の性癖」ってわけでもないですからね。
あぁ、でも「異常な程の巨乳好き」に関しては割りとその通りなので、甘んじて受け入れます。
高×生の時は、「トップテンメイト」を毎月買ってました。工藤 洋先生とかオノメシン先生とかフジヤマタカシ先生の漫画や同人誌を超集めてます。堀井美月さんと渡辺万美さんの大ファンです。誰か、彼女たちのサインを下さい。
とか書いてる内に、ほら、また下半身主導のエントリになってきた!
…こんな、中原中也ばりに「汚れちまった悲しみ」を背負って生きている汚れな私ですが、そんな私でも読むたびに「純情だったあの頃」(美術の時間に、ダビデ像を見るだけで赤面してしまう程)を思い出し、胸がときめいてしまう漫画があります。
それが、高木聡先生のラブコメ漫画「きつねのよめいり」です。
- 作者: 高木聡
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/11/04
- メディア: コミック
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■異界の女の子が、ある日突然お嫁さんに
ストーリーを簡単に説明すると、生まれついての凶運のために、何をやっても冴えないダメダメな主人公の家に、ふとしたことから、女の子が押しかけ女房的に転がり込んでくる、というお話です。わぁおう!(「銭ゲバ」の椎名桔平調) ラブコメの王道だね!
この子が、そのダメ男の桜介。
運動も勉強も苦手で、容姿も取り立てて特徴があるわけじゃない。部活や恋愛など、何か打ち込んでいるものがあるわけでもない。不幸続きの毎日の中で、夢見る幸せは、波風の無い平凡な日常…という10代にしてはネガティヴ過ぎる男の子です。一見するといかにも少年誌的な、このツンツンした髪型も、実は寝グセだったりします。…ダメだなぁ…。
現実社会なら、教室でも行事でも全く目立たず、なんとなーく学校生活を送って、なんとなーく卒業していって、何年か後に、卒業アルバムを見返した同級生が「えっ!? こんなヤツ、うちのクラスに居たっけ!?」ってなったり、一人だけ同窓会の誘いを受けてなくて、後からそのこと知らされてメチャクチャ落ち込んだり、といった悲惨な目に遭うのでしょうが、こんな子でも真っ直ぐ生きていれば、幸せな物語の主人公になれるのが少年漫画の素晴らしさ。
ラブコメの主人公の王道を行く(=ダメ男)桜介くんの元にも、幸せが訪れます。ヒロインである可愛い可愛い女の子、京香ちゃんが、ある日突然、お嫁にやって来るのです。
ヒロインの京香ちゃん。うわあっ……可愛いなぁ…(語彙が貧困)。
で、京香ちゃん、「きつねのよめいり」という漫画のタイトルの通り、人間に非ず、実は狐の女の子だったりします。
「うる星やつら」が雛形を作った「ダメ男の元に、ある日突然、異界の女の子が!」という展開は、ラブコメの中でも「落ちもの」と呼ばれるジャンルですよね。
「きつねのよめいり」の京香ちゃんも、その辺のお約束は決して外していないです。元が狐なので、油揚げとイタズラが大好き。様々なイタズラを桜助に仕掛けては、To LOVEる…じゃなかったトラブルを巻き起こします。
漫画は、桜介にベタ惚れの京香ちゃんの可愛らしさを全面に押し出しながら、夢見ていた穏やかな日常とは真逆の波乱だらけの日々の中で奮闘する、桜介の成長や意外な芯の強さを描いていきます。
各エピソードも、なんだかホンノリ温かい味があって、主人公がヒロインに振り回されつつも、だんだん惹かれていく様子がなんとも初々しく、読みながら何度もニヤニヤしてしまいました。
いやぁ、正に「ラブコメ」の王道ですね。言うなれば、三沢光晴と川田と小橋がいた頃の全日本プロレスくらいの王道感。あと、百田とマイティ井上と永源遙(ツバ攻撃)。
■オールドスクールなラブコメ劇
えっ!? それだけなら、他の漫画雑誌でも同じような漫画をやっているし、新鮮味みたいなものはないだろうって?確かに、ラブコメとしては「ベタ」なのかもしれません。ただ、「きつねのよめいり」は、ラブコメの中でも、かなり純度が高いというか、刺激性みたいなところで勝負をしていないんですよ。
例えば、パンチラを始めとするお色気。これは、ほとんど無いです。
なぜか第一話でヒロインがお尻を出すという、
例えるなら、プロレスの試合でゴングなって早々に、バックをとって投げっ放しのジャーマンスープレックスを放つみたいな、謎のサービスシーンはあったものの、以降はパンモロどころかパンチラもなしです。っていうか、それはどう考えても、試合の組み立て方がおかしいよ!
きちんとスカートを押さえているのが素晴らしいです。
この妙にストイックな感じは、主な購買層が小学生である掲載誌の「少年ライバル」のカラーなのかな、と最初は思ったんですが、同じくライバルで連載をしている、水兵きき先生の「葵さまがイかせてアゲル」は毎回女の子が豪快に肌の露出をしているので、これは作者さんの意志でやっているんだと思います。きっと。
かといって野暮ったい感じや地味さは皆無で、例えばヒロインがエピソード毎に様々な衣装で登場したりと、女の子を可愛く描くツボみたいなものはキチンと押さえられていて、それをいやらしくない程度に出してくるんですよね。
浴衣姿と水着の京香ちゃん。うわあっ……可愛いなぁ…(ボキャブラリーが貧困)。
更にドラマ的にも、今のところは、ヒロインが多数登場するハーレム的な展開ではないのもポイント。とにかく、余計な刺激はなるべく抑えて、きちんとまじめにラブコメをやってるな、という印象を読んでいると受けます。
■Back To Oldschool!!
この、直情的ではなく、真っ直ぐにラブコメをやっている感じが、大人になった今読んでみると、本当にまぶしいんです。そりゃ、自分はもういい大人ですし、お金や時間を使えば、ある程度の刺激は簡単に手に入っちゃうかもしれない。でも、例えば、幼い時に読んだ少年漫画に出てくるヒロインに、密かに胸をときめかせた「あの」感じとか、初めてラブコメを読んだ時の「あの」ドキドキ感とかは、いくらお金を出しても二度とは味わえないわけです。
ジョージ秋山の劇画「銭ゲバ」で、金に異常な執着を持つ主人公は「世の中、銭ズラ!」と説きましたが、お金じゃ「あの」ときめきやドキドキを買い戻すことは決してできないのよ。
正しくは、「世の中、『萌え』です!」 これが世の中の真理。とりあえず、私の中では(笑)。で、その決して戻ってこない、「あの」気持ちを、大人になった今でも追体験させてくれるのが、非常に真摯に少年誌的なラブコメを展開している「きつねのよめいり」のような漫画ではないかな、と思うのです。
大人になって自分は、そりゃ子どもの頃に比べたら各段に自由度は上がっているし、その結果「女の子が乳首に×××を挿れられて、×ロを吐きながら、悶絶する漫画」を読んだりしているわけで、武田鉄也ばりの「思えば遠くにきたもんだ」感があるわけですが、いや本当に子どもの頃読んでいた、こういうオールドスクールなタイプのラブコメって、今読むと逆に新鮮だし、単なるノスタルジーとかを超えた魅力があるように思います。
その気持ちって、成長するに従って、パンクもテクノもヒップホップも色々聴いたけど、やっぱり、幼稚園生の頃に「ポンキッキ」で一番最初に聴いたビートルズが最高だなぁ、っていうのに似ています。幼少期に受けたエモーションって、何気にその後の人生に尾を引くし、情報量が多い大人になって受ける刺激よりも、遥かに大きかったりしますからね。
確かに、子ども向けっていう面もあるにはあるんですけど、それだけに止まらない、「ラブコメ」のトラディッショナルな魅力に溢れた良作だと思います。青年誌で連載をしているような刺激の強いラブコメ(それは、それで勿論おもしろいんだけど)に、ちょっと疲れた時は、ぜひ手を延ばしてみることをお勧めします!
- 作者: ののやまさき,土屋計
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/08/04
- メディア: コミック
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