やっぱり、方言を話す女の娘って可愛いよね! 特に博多弁は! - 名島啓二「波打際のむろみさん」

 
先週から、週刊少年マガジンで連載が始まった名島啓二先生の波打際のむろみさんがおもしろくて、なおかつ主人公である人魚の「むろみさん」がとっても可愛かったので、感想文と自分なりのお勧めポイントみたいなものを書いてみたいと思います。
 

「むろみさん」の連載が始まった「週刊少年マガジン」33号です。
 
 

■「波打際のむろみさん」。むろみさんの可愛さを考える

波打際のむろみさん」の主人公、むろみさんは人魚の女の娘です。
なので、漫画は彼女がしばしばちょっかいを掛けている男の子、向島拓朗、通称たっくんがむろみさんを釣り上げるところから始まります。
 

<週刊少年マガジン2009年33号(講談社) P.176>
 
ミミズで釣れます。人魚なんで。
 
宇宙人や妖怪など、人外を主人公にしたギャグ漫画は意外と多いです。
これは、人間と違う異形のモノをキャラクターにすることで、エキセントリックな設定やギャグを使える笑いの幅が広がり、漫画の自由度が高まるからではないか、と私は考えます。
波打際のむろみさん」も、主人公が人魚であるという設定を活かしたナンセンスな笑いが作品内に顔を覗かせます。ただ、むろみさんが人魚だからといって、作品内で何か特別なモノとして描かれているわけではありません。
そもそも、むろみさんって人魚というよりは普通に魚なんですよ。魚。
 
魚なんで、たっくんに釣られたり、漁船の定置網に掛かったり、カモメや猫に襲われたりします。で、周囲の人たちも、人魚のむろみさんが海の中に普通にいることが当たり前になっていて普通に接している。
この辺のゆる〜い非日常具合と脱力感のバランスがかなり気持ちが良い漫画で、読んでいると思わずニヤニヤさせられてしまいます。
 


 
そして、そんなギャグと共に目を引くのが何と言っても、むろみさんの可愛らしさです。
少なくとも1000年は生きているという人魚故に、最早達観の領域に達しているのか、それともただ単に性格が天然だからなのかは不明ですが、むろみさんはとにかく明るくて奔放です。
そんな彼女が、たっくんを始めとする人間たちにちょっかいを出し、人間の世界にある自分の知らない文化に触れたり、逆にナンセンスな人魚の世界を垣間見せて相手を混乱させたりする。
むろみさんは、上半身人間、下半身魚の半人半魚という、かなりストレートに人魚なビジュアルの上に、ミミズを食べたりもするのですが、人間との間に距離を作らず、自分が知らない世界に対して好奇心一杯に近づいてくる様が、相当に愛らしいのです。
 


 
そこに加えて、むろみさんが喋る博多弁! これも、自分の中では相当ポイントが高いです。
 
 

■変態ばっかり出てくる嫌な県。福岡県を考える

ここまで引用させてもらったコマを見ていただければお分かりのように、主人公の人魚、むろみさんは博多弁バリバリ。方言丸出しで喋るんですね。
コレが個人的に、ものっそいツボなのです。元々、漫画やアニメに出てくる、方言を使って喋る女の娘が好きっていうのはあるのですが、私は生まれが福岡なので特に博多弁が堪らないわけですよ。
 

<週刊少年マガジン2009年34号(講談社) P.257>
 
ちなみに「えずか〜」は、標準語に直すと「怖いよ〜」です。ね! 博多弁って何だか可愛くないですか?
 
私が生まれ育った福岡県は、何気に結構な人数の漫画家さんを輩出していたりするのですが、松本零士小林よしのり古賀新一猿渡哲也安永航一郎克・亜樹植芝理一古賀亮一六道神士畑健二郎奥浩哉…と、
 
「個性的」という範疇を天高く飛び越えて、キ●ガイと変態ばっかり出てくる嫌な県だったりします。
 
そんな、男おいどんゴーマニズム宣言を発令しながら、銀河鉄道999に乗車して北●鮮へ特攻をかけた挙句に、エコエコアザラク夢使いの間でオカルトのハルマゲドンが勃発。
県立地球防衛軍と秘密結社アクロスが熾烈な争いを続ける最中、男子高校生は高校鉄拳伝ばりにタフな殴り合いに身を投じつつ、「ふたりエッチ」を熟読することによって、「ゲノム」におけるパクマンさんばりの正しいセクハラの作法をハヤテのごとき素早さで完全習得する。そんな「HEN」な県こそが福岡県なのです。
 
同じくミュージシャン多産県でありながら、スピッツナンバーガール、MO'SOME TONEBENDER、THE ROOSTERS、シーナ&ザ・ロケッツ、陣内孝則Th eROCKERS椎名林檎松田聖子浜崎あゆみそして武田鉄矢と、やっぱりキ●ガイと変態しか出てこないだけはあります! 流石は日本の恥部、福岡県!
 
そんな石井聰互(この人も福岡県出身)もビックリな「爆裂都市 BURST CITY」、福岡県が唯一他県に誇れるもの。それが、博多弁。特に女の娘が使った時の可愛らしい響きだと私は思うわけです。
 
名島啓二先生も現在、福岡在住らしく、女の娘が使う博多弁の可愛らしさを分かった上で、作品内に取り込んでいるような印象を受けます。
また、郷土愛も強いのか、主人公の名前「むろみさん」も恐らくは福岡市を流れる河川室見川からとっているのではないかと思うのです。
ちなみに、室見川には「白魚のおどり食い」といって、「シロウオ」というハゼ科の魚を酢醤油に付けて生きたまま食べるという相当にアレな食文化が存在します。しかも名物で、室見川の春の風物詩です。風物にするな、そんなモノ!
あと、室見川の近くにある学校に通っていた生徒は、もれなくマラソン大会で河川敷を走らされるために、運動が駄目な子は反射的に室見川が大ッ嫌いになるという傾向が見られます。そんな福岡市民あるある。
 
 

■まとめみたいなもの。方言の良さを考える

ともかく、やっぱり方言って良いモノだと思うのです。
漫画やアニメにおいては、キャラクターを立てるのに役立つだけでなく、その地方の出身者にとってはノスタルジーを感じさせてくれる、とっても大切なアイテムになったりもします。
グローバル化が進んで、現実の世界では方言は消えつつあるわけですが、漫画やアニメのような物語とキャラクターが存在する表現分野においては、こうした方言の需要っていうのはドンドン増えていくのではないかな、と思います。
人間、なかなか生まれ故郷の風景や風情を忘れることはできないからです。
 
私も博多弁、大好きですよ。で、そんな博多弁を大事にしてくれている、名島啓二先生の「波打際のむろみさん」も大好きになったわけです。
本当に、福岡県の良心として名島啓二先生にはこれからも頑張って欲しいです。
私は短期集中連載を読んでいなくて、まだ二週分しか「むろみさん」を読めていないので、単行本化が待ち遠しいですね。