人魚と人間、大人と子ども - 波打際のむろみさん♯4「ワールドワイドのむろみさん」

 
週刊少年マガジンで連載が始まった、名島啓二先生の漫画波打際のむろみさんが今週もおもしろかったです。
ギャグのホンワカ加減やキャラクターの可愛らしさも素晴らしいのですが、それに加えて、作者さんが自分と同郷でヒロインの女の娘が博多弁バリバリで喋るっていうのも、この漫画のお気に入りポイントだったりします(笑)。
 
で、よく拝見させていただいてる漫画レビューサイトさんが、それぞれお気に入りの作品をピックアップしてやられていたりする「連載中の漫画を、毎週(毎月)レビュー」というスタイルに自分は以前から憧れていて、自分もこの機会に「むろみさん」をテーマにチャレンジしてみようかな、と思い立ちました。
まぁ、私は根気がない人間なので、いつまで続くか分からないのですが、微力ながらも「波打際のむろみさん」という作品を応援したいのと、自分の「好き」っていう気持ちを後から確認できるようにしたいので(つまりは、完全なる自己満足です。…ゴメンなさい)、毎週…は無理かもしれませんがちょいちょい感想を書いていこうと思います。
 
そんなわけで、波打際のむろみさん第4話。「ワールドワイドのむろみさん」です。
 
今週もまた、たっくんとのやり取りで幕を開けるのかな? と思いきや、
 

<週刊少年マガジン 2009年35号 (講談社) P.302>
 
舞台はイキナリ外国でした。
 
 

■人魚のむろみさんと、褐色の少女

これまでは、日本の川や海(博多湾?)で、たっくんの釣り針に引っ掛かったり、その餌のミミズを一気喰いしたり、漁船の定置網によって捕獲されていたりした人魚のむろみさん。
そんな日本のごくごく平凡な日常の光景に現れる非日常な存在であるむろみさんが、突然外国に進出です。
まさに、表題の通り「ワールドワイドのむろみさん」
 
上の画像を見ていただければ分かるとおり、いつも元気なむろみさんが今回はかなり弱っています。
疲労の余り偶然打ち上げられてしまったのか、意識してこの国にたどり着いたのかは不明ですが、とにかく弱った状態で、異国の地の褐色の肌を持つ少女の前に登場をしたのです。
 
で、この女の娘も根が優しくて素直なのか、それとも子どもの純真さ故か、半人半魚の異形の存在であるむろみさんに対して、警戒心を持つことなく弱った彼女を介抱しようとします。
ここから、異国の少女とむろみさんの心温まる交流が始まるのかと思いきや…。
 


 
いきなり嘔吐。
 
もう、なんていうか色々と台無しです…。
ミミズを一気喰いさせたり、ゲ●を吐かせたり、この辺りの美少女キャラクターの崩し具合は作者である名島啓二先生の芸風なのかもしれないですね。
 
 

■大人の計算と、少女の純真さと…

さて、異形の存在であるむろみさんをも受け入れた褐色の肌を持つ少女。
彼女の介抱もあって、ちょっぴり元気を取り戻したむろみさんは、彼女とのコミュニケーションを開始します。
少なくとも、1000年以上生きているという人魚のむろみさんにとっては言葉の壁など関係ないようで、異国の少女に自分を救ってくれたお礼をしようとするのですが…。
 


 
ここで、むろみさんは「大人」を全開にするんですね。
 
女の娘のビックリするくらい「キョトン」とした表情に注目です。
この前後では、海の世界のややこしい人間関係や物凄く俗っぽい習慣が描かれていて、そこが笑いどころになっているんですが、それに対してむろみさんは割と計算高く対応をしようとするのです。
で、純真な心を持つ少女は、そんな悪い意味での「大人」なむろみさんのやり取りが全く理解できない。
完全に置いてけぼりになってしまうわけです。
 
異形の存在すらも受け入れる優しさを持つ異国の少女と、人魚のむろみさんはを隔てるものは、種族の違いでもなければ、言葉の違いでもなく、打算で生きる世俗の垢に塗れまくった大人汚れを知らない無垢な少女の違いだったわけです。
 
本来であれば、ファンタジーの、幻想の中の存在であるハズの人魚が物凄く俗っぽく描かれていて、ごくごく平凡な人間の方が、むしろピュアな存在として描かれている。この強烈なギャップが何ともおかしいです。むろみさんのひねた大人っぷりが少女との対比によって強い印象を残す回でした(笑)。