チョッピリくすぐったいけど、とっても幸福なエロ漫画 - 久川ちん「新婚さんごっこ」
<久川ちん「新婚さんごっこ」 (コアマガジン)>
久川ちん先生の初単行本「新婚さんごっこ」を購入しました。
「メガストア」や「HOT MiLK」などのコアマガジンの成年誌で大人気の作家さんなので、今回の処女作を心待ちにしていた成年漫画ファンも多いのではないでしょうか?
勿論、私もそんなファンの一人なのですが、期待通りに素晴らしい内容だったので感想文を書いておきたいと思います!
■明るくハッピーな世界観
久川先生の漫画の最大の魅力は、何よりもそのハッピーな世界観だと思います。「新婚さんごっこ」収録作の中には、「並行彼女」のようなSF設定を用いた作品や、「実験室」「放課後ナイトメア」のように若干アブノーマルな設定や、軽い陵辱性を孕んだ作品もありますが、基本的には久川先生が描く漫画の登場人物たちは幸福な空気の中でお互いの恋心を通わせていきます。
こんな感じで、どこかぎこちなく、読んでいてくすぐったさすら感じられる、初々しい男女の姿が久川作品の何よりの魅力でしょう。
作品内に登場する女の娘は、小さなロリっ娘から、女子大生(?)までなかなかにバラエティーに富んでいますが、どの娘も実に可愛らしく、そんなヒロイン陣が、涙ぐんだり、赤面したり…といったチアフルな感情表現で、その表情をコロコロと変えながらストーリーが展開していく様は、最早暴力的とすら言ってよい程に圧倒的な多幸感に満ち満ちています。
■可愛らしく、コミカルに進むシナリオ展開
キュートでチャーミングな絵柄で、初々しい恋心を描くのがバツグンに上手い作家さんだと思うのですが、その物語の展開は繊細さというよりはコミカルに、スピーディーに展開していく印象を受けます。そんなコミカルな展開の中で、ハートフルな男女の心の機微だけでなく、男性サイドの微妙にドロドロした性に対する欲情や、快楽に流されてトロトロに惚ける女の娘の姿など、実にエロ漫画らしい作劇を行える構成力も目を引きます。
収録作品の「放課後ナイトメア」より。このシーンの前後の展開は、是非単行本で確認をしていただきたいのですが、一言で言って「地獄絵図」です(笑)。明るく、ハッピーな空気感の中に潜む、妙に生々しい「性」の匂い。その辺りのギャップも、可愛らしさの中で官能性を高めるのに大きく貢献をしています。
また、「HOT MiLK」での現行の作品にも言えるのですが、奇抜でギャグフレイバーに溢れた独特の台詞回しも、久川作品の大きな魅力と言えると思います。
こんな感じでオモシロ台詞を言いながら進行していく男女の愛の行方。愛らしさやイジらしさの一方で、「好き!」という感情の高ぶりによって浮き彫りにされていく明け透けな本心。そんな男女の恋愛に存在する表と裏をコミカルに味付けをして、読者に届けてくれる久川ちん先生の漫画作品のキャッチーな求心力。もう、どうにも読んでいて顔がニヤけてしまうのを抑えられないですね。
■まとめ
現在も「HOT MiLK」誌上でバリバリと漫画を描き続けている久川先生。割と年齢層や体型に幅のある女性を描き分ける漫画の技術もさることながら、こんなぶっ飛んだ台詞を大胆に、しかしながら決してそのハッピーでチャーミングな世界観やキャラクターのイメージを損ねることなく挟み込むことで、自身の作品に確固たる個性を確立されているように思います。
イチエロ漫画好きとして、これからの作品も本当に楽しみな作家さんですね。「新婚さんごっこ」オススメの作品です!
<関連URL>
■久川ちん『新婚さんごっこ』(ヘドバンしながらエロ漫画!)