漫画、アニメに見るプロレス技の描写について - 週刊少年チャンピオン「シュガーレス」と「バカとテストと召喚獣」

 
今週の週刊少年チャンピオン細川雅巳先生の新連載漫画シュガーレスが始まりました。
 

<「週刊少年チャンピオン 2010年2月4日号 (秋田書店) P.9>
 
これが、凄くおもしろいんですよ! 毎週のチャンピオンレビューが熱い漫画BLOGである「漫画脳」のササナミさんにも話題を振っていただいたので、「いつ何時、誰のネタフリでも受ける!」というアントニオ猪木イズムを受け継いでいる当BLOGとしては、これは見逃せない! とばかりに感想文を書かせていただきました。
 
 

■不良、喧嘩、プロレス技。細川雅巳シュガーレス

シュガーレス」の第一話では、不良が集う「九条高校」を舞台に、主人公である椎葉岳と、喧嘩は強いものの腕っ節の強さに似合わない不思議な個性を持つ男、マリモこと丸母タイジとの出会いが描かれています。
そして、第一話の時点で本作の大きな魅力となっているのが、このマリモの存在感とキャラクターです。
 


 
筋骨隆々で長身、更にはその個性的なヘアースタイル(アフロじゃなくて、ツイストパーマ)。見た目のインパクトも十分ですが、喧嘩におけるファイトスタイルも実に個性的です。
 
というのが、このマリモ。プロレス技を使って、相手を倒すんですね。
バックドロップやドロップキックといったプロレス技は派手で見栄えがするために、ヤンキーものの漫画では喧嘩のシーンで単発的に使用されることは時折ありますが、「シュガーレス」ではもっと大々的にプロレス技をフィーチャーしているように感じます。その描写も素晴らしく、身体の大きなマリモが、見開きや効果線を多用した作画の中で相手にプロレス技を仕掛けるシーンはいずれも物凄い迫力に満ちています。
ド迫力で説得力バツグンのプロレスシーンの数々に関しては、是非本誌で直接見ていただきたいと思うのですが、例えばこんなシーンにもその「凄味」が出ているように思うのです。
 


 
このシーンは、マリモが岳にラリアットを放ち振りぬいた直後を描いたコマなのですが、プロレスファンならばこの絵を見ただけで胸が熱くなるのではないでしょうか? 大男が放ったプロレス技のダイナミックな破壊力と、そのインパクトが伝わってくる「熱い」一コマ。
 
私は、プロレスが好きで15年以上に渡って見続けているのですが、「シュガーレス」からはシッカリとプロレスの熱を感じることができました。まだまだ第一話なので、この先、マリモのキャラクターやストーリー展開がどうなるかは分かりませんが、熱のあるプロレス技を描いたシーンには独特の魅力がありますので、プロレスがお好きな方は一度読まれてみては如何でしょうか?
 
 

■アニメ「バカとテストと召喚獣」におけるプロレス描写

さて、ここで話は少し横道に逸れるのですが、最近プロレスにかつての勢いが徐々に戻ってきているのをイチファンとして強く感じています。団体の多団体化、K-1やPRIDEのような格闘技ブームの余波から、一時は瀕死状態になっていたプロレスというコンテンツは、ブーム…とはいかないまでも、その魅力とファンの熱狂を少しずつ取り戻し始めているように思うのです。
そんな中で、バラエティー番組でプロレスがエンターテインメントコンテンツとして取り上げられたり、「シュガーレス」のようなプロレスの熱を孕んだ作品を読めたり、アニメや漫画の世界でもこだわりを持った「分かっている」プロレス描写を目にしたりするのは、大袈裟でなくファンとして至上の喜びだったりします。
 
例えば、今期の新番組であるバカとテストと召喚獣では、島田美波というキャラクターが登場するのですが、この娘が劇中で主人公に対して数々のプロレス技を仕掛けるんですね。で、その描写っていうのが、何気に結構凝っているんです。
 

 
第二話の「ユリとバラと保健体育」では足4の字固めを極めるシーンがありましたが、このシーンでもカットを入れて極めている絵だけ見せても良いハズなのに、ちゃんと技に入るまでの体の動きがアニメーションで描かれている。で、もう、プロレスファンとしては、こういうこだわりが本当にたまらないんです。
 

 
バカとテストと召喚獣」では他にもヘッドロック卍固め、逆エビ固めや腕ひしぎ逆十字といった昭和新日的というか、古き良きストロングスタイルイズム溢れるプロレス技が描かれていますが、例えばヘッドロック一つ取っても、ちゃんと左脇に抱えて相手の頭を絞めている*1、アニメの中でキチンと基本が再現されているんですよね、ファンの目から見ても。
 
こういう細かいこだわりに満ちた描写っていうのは、やっぱり見ていて胸に熱いものが込み上げます。近年のプロレス復権の気配に加えて、こういう作品をきっかけにして、プロレスファン以外の人にもプロレスのおもしろさや魅力が伝わればいいな、なんて思うんですけどね。
 
 

■まとめ

少し話は逸れましたが、「シュガーレス」おもしろいです! プロレス愛に満ちた描写が今後も沢山出てきてくれたら嬉しいな〜っと。
で、「プロレス」というジャンル自体にも熱が戻りつつある昨今、「シュガーレス」みたいな漫画もチャンピオンに登場したということで、秋田書店はそろそろ「仁侠姫レイラ」の本連載をですね…。
 


 
それからこれは恐らくは単なる偶然で、完全に蛇足だと思うのですが、本作の舞台である九条高校のシンボルとして描かれている「風車」
プロレスファンならば即座に連想をしてしまうのが、アントニオ猪木の名言風車の理論ですよね。「風車が強い風を受けて回るように、試合の中で相手の良い所を引き出していく(そして勝つ)」というプロレスの哲学を体現した言葉*2なのですが、プロレスの試合が一方的に相手に痛めつけるだけの選手や、完全な極悪人が相手では成立しえないように、岳とマリモの前に立ちふさがる敵役たちも魅力や個性を持った連中が揃っていたら嬉しいですよね。「シュガーレス」の最後のコマに出てきた上級生たちも、かなり良い感じに描かれていたので。

*1:「プロレス 基本 左」とかで検索をしていただければ、このヘッドロックのシーンに込められた意匠が解っていただけると思います。

*2:元々は、また違った意味なのですが、現在ではこっちの意味でファンの間に浸透をしているので