「スペランカーアンソロジーコミック」の豪華すぎる執筆陣を振り返る

 

 


アクションゲーム「スペランカー」をテーマにしたアンソロジースペランカー アンソロジーコミック」が、2月6日にジャイブより発売される。
 
スペランカーアンソロジーコミック」は、月刊コミックラッシュ(ジャイブ)にて掲載されている特別企画の単行本化。これまでに雑君保プ道満晴明能田達規田丸浩史花見沢Q太郎ら豪華作家がスペランカーのコミカライズに挑戦しており、1月26日発売の同誌3月号には最終回として石黒正数、犬が登場する。
 
単行本には、連載で登場した面子の他に秋★枝押切蓮介コバヤシテツヤ、設楽清人小路啓之高野うい刻田門大、久松ゆのみ、前田龍雪が参加。カバーイラストは田丸の描き下ろしだ。
 
■スペランカーアンソロに田丸・石黒・押切ら豪華執筆陣(コミックナタリー)

 
来月にジャイブから発売をされるスペランカー アンソロジーコミック」
昨年から、COMIC RUSH誌上で掲載をされていた豪華な漫画家陣による読み切り作品に加えて、単行本には秋★枝先生、押切蓮介先生、刻田門大先生といった、これまた豪華なメンバーが参加をされるようで、私も発売を楽しみにしています。
 
そこで、今回のエントリでは「COMIC RUSH」掲載分のスペランカーアンソロ作品を振り返りつつ、各作家さんの切り口や漫画作品の傾向について好き勝手にあーだこーだと語らせていただきたいと思います。
(※やや、ネタバレ気味の感想ですので、お気をつけください!)
 
 

雑君保プ先生のスペランカー


<月刊COMIC RUSH 2009年10月号 (ジャイブ) P.186>
 
先ず、今回の「スペランカーアンソロ」企画において、その口火を切られたのが雑君保プ先生。
ゲーメスト」企画なんかのゲームパロディ漫画を愛読していた世代の漫画好きにとっては堪らない人選ですが、この辺りの作家さんのチョイスにも本企画のセンスやおもしろさが溢れているように思います。
雑君保プ先生特有の顔から突き出した目や口、極端にデフォルメされた身体の描き方など、アバンギャルドでパンキッシュなキャラクターデザインと、この漫画家さん特有のブラックなギャグはそのままに、ドタバタと「スペランカー」の世界が描かれていきます。
 
 

道満晴明先生のスペランカー


<2009年11月号 P.367>
 
雑君保プ先生に続いて登場をしたのは、なんと道満晴明先生!
これまたセンス抜群の人選ですが、そんな道満先生が描いたスペランカーの世界は学園モノでした。ファミコン史上最弱のキャラクターであるスペランカーのキャラクターに合わせて、何とも切なくて甘酸っぱいストーリーが紡がれる短編作品です。
 
 

能田達規先生のスペランカー


<2009年12月号 P.349>
 
「おまかせ!ピース電気店で御馴染みの能田達規先生は、エッセイ漫画でスペランカーという素材を料理しています。
何度も何度もゲームオーバーを繰り返しながらスペランカーに挑む能田先生。そして、そんな先生の周りにいる家族の反応は…。
エッセイ、あるいはパロディと「COMIC RUSH」掲載分の作品を読んだだけでも、各作家毎に漫画の表現方法が異なっていて、そこから作家性みたいなものが滲み出てくるのも本アンソロの魅力と言えると思います。
 
 

田丸浩史先生のスペランカー


<2010年1月号 P.543>
 
田丸浩史先生が描くスペランカーは何というか…もう、そのまま田丸漫画の主人公そのものです(笑)。このブレのない世界観に中で描かれるギャグの数々は、何というか抜群の安定感と、田丸漫画特有の危険な爆発力に満ちています。
田丸先生は「スペランカーアンソロジー」で表紙を描かれているのですが、表紙のサンプルを見てみると各作家さんの絵柄を田丸先生なりにアレンジをしながら再現をされているようで、このイラストを見るだけでも田丸ファンは本作を購入する価値があるのではないでしょうか。
 
 

花見沢Q太郎先生のスペランカー


<2010年2月号 P.221>
 
「ももいろさんご」●REC花見沢Q太郎先生のスペランカーは、可愛い女の娘。この漫画が掲載をされた「RUSH」の2月号では、何と表紙を飾っています。
この漫画の中でユニークなのは、花見沢先生の漫画作品「BWH」の登場キャラクターであるユイと田淵さんが、パラレルワールド的にスペランカーの世界に登場をしていることです(雑誌掲載時には、「BWH」の番外編読み切りも同時掲載)。
こういうファン向けのお遊びなんかもできる本アンソロの自由さはおもしろいですよね。
 
 

石黒正数先生のスペランカー


<2010年3月号 P.344>
 
それでも町は廻っている石黒正数先生はスペランカー世界中で、ややリアル路線のタッチを用いて「宝探し」に絡めた人間の「業」を描きます。
オチの秀逸さと、シニカルな笑いのセンスは、さすが石黒先生! とファンも納得の短編です。それにしても、主人公の名前が「須」「屁」「須屁(すぺ)」くんって…(笑)。
 
 

■犬先生のスペランカー


<2010年3月号 P.351>
 
成年漫画ファンの間で絶大な支持を得ている先生は、この漫画家さんらしく美少女にアレンジをしたキャラクターを用いたコメディ作品でスペランカーの世界を表現。
元のファミコンソフトに描かれたパッケージ絵やゲーム画面のドット絵とはかけ離れたビジュアルのスペランカーですが、漫画内に「スペランカー」というファミコンソフトにまつわるトリビアルな豆知識を挿んだり、何気に元のゲーム設定の再現度が高いのがおもしろいところです。
 
 

■まとめ

COMIC RUSH」掲載分の作品を見返してみるだけでも、ゲームのグラフィックが現在のように進化をしておらず、それ故にかえってファミコンの荒いドット絵がプレイヤーの無限の想像力を刺激していたように、「スペランカー」というゲームソフトを共通のテーマとしながらも、その切り口や取り上げ方は本当に様々です。
 
また、「主人公が異常なほど弱い」というゲーム設定を、日常エッセイの中で突っ込みどころにする作家さんもいれば、ブラックなギャグに持っていったり、ちょっぴり泣ける良い話に仕上げたりといった違いもあれば、スペランカーを男性として描くか、女の娘として描くかといった作家さんの個性や作風の違いが大きく分かれるところもあります。
 
作劇の自由度や広い解釈の幅がある中で、豪華作家さんたちによるそれぞれの手腕が楽しめるのが本アンソロの大きな魅力と言えると思います。単行本で初出となる個性的な漫画家さんたちが、「スペランカー」というゲームをどのように描かれているのか、今から非常に楽しみです。
 
 
 
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