映画感想 - 板尾創路「板尾創路の脱獄王」

 

 
先日、新宿で板尾創路の脱獄王を観てきました。
かなりネタバレ気味な感想文ではありますが、上記のエントリと併せまして、よろしければこちらもどうぞ。
 
 

■かなり独特の世界観

映画を観ていて驚いたのが、劇中の独特な世界観です。
具体的に言うと、かなりグロテスクなシーンや描写がスクリーンに頻繁に登場をするのです。
その独特なキャラクターと芸風で支持を受けている板尾さんにしては、ちょっと今までのイメージにそぐわないシーンの連続ですので、「あれれ、板尾さんって、こんなアングラじみた趣味もあったのね」なんてちょっと見ていて違和感を覚えたんですけど、エンドロールを見ていて大いに納得をしました。
 
この映画、製作アドバイザーとして山口雄大監督が名を連ねているんです。
 
脚本にも参加をされているようで、劇中のイメージやビジュアルは山口監督の作風が強く出ているように感じました。
ですので、本作は板尾創路の初監督作」というよりも、板尾創路と山口雄大のタッグによる共作」くらいの捉え方で観に行った方が、スンナリと作品の中に入っていけるのではないかと思います。
山口監督や井口昇監督の映画が好きな人ならば必見の作品と言えるのではないでしょうか。
 
といっても、そんな強烈な山口雄大的世界の中で、板尾さんの個性がスポイルされていることいえばそんなことは全くなく、「らしさ」は爆発していますので板尾ファンも安心して劇場に足を運ぶことができると思いますよ。
 
 

■見ているだけで楽しい豪華な出演陣

お笑い芸人である板尾創路さんの監督作品ということで、果してこれが、90分の「コント」なのか、それとも同じく板尾さんが脱獄犯を演じていた豊田利晃監督の「ナイン・ソウルズ」よろしくストーリー性の強い「映画」なのか、というのが本作を観る前に私が気にしていた最も大きなポイントだったのですが、結論から言うと非常に立派な「映画」でした。
 
ストーリーは謎だらけのシュールな世界観の中で観客の興味を引っ張り、最後に大オチを付けるというタイプの映画なのですが、主演の板尾さんを始め出演者の皆さんが本当に素晴らしいです。
物語の中で主要な登場人物となるのは、脱獄犯役の板尾さんと、彼を見守る司法側の國村隼さんですが、このお二方の存在感が秀逸で、板尾さんなんて台詞すらほとんどないにも関わらず、その佇まいだけで観客の目を引きつける何とも言えない「味」があります。
反対に、國村さんはベテランらしくカッチリとした演技で色を出しているのですが、板尾さんがこの強烈かつシュールなイメージの世界に何となく馴染んじゃっているのに対して、國村さんは終始どこか戸惑い気味なのもおかしい。
 
また、吉本興業の大御所から、これまでの山口作品に出演をされていたアングラな芸人さんまで、劇中には沢山の芸人さんがカメオ出演をしているのですが、そうした方々の顔ぶれを見ているだけでも楽しい作品です。
特に、終盤に出てくる山口雄大的なビジュアルイメージでアップグレードをされた、ぼんちおさむさんの存在感は必見です!
 
 

■まとめ

と、まぁ、自分は誉めてばっかりで感想文が終わってしまうくらいに面白い映画でした。
劇場でスクリーンに対峙してカッチリと観るよりは、家でDVDでラフに観る方が向いている作品だとも思うのですが、お笑いファンや山口雄大監督のファンの方ならば、劇場で観る価値のある一本だと思いますよ。