反撃の中で高鳴るロックンロール - 「HEROMAN」05話「アサシンズ」

 

 
怒涛の展開を迎えた「HEROMAN」第05話「アサシンズ」
相変わらずグレートなストーリー展開と魅力的な各要素が満載で、様々な視点・角度から熱っぽく「語る」ことができるエピソードだったと思うのですが、今回はネタバレを避けつつ自分の印象に残った、主人公と周囲のキャラクターの関係性について感想文を書いてみたいと思います!
 
 

■ジョーイとヒーローマン、「手」を使ったコントラスト

これまでは、その圧倒的なパワーによってスクラッグをなぎ倒していたヒーローマンが、敵の新兵器の前に苦戦し、ストーリーの緊迫感が高まった前回のエピソード。敵の攻撃は尚も緩まず、遂にジョーイ達は撤退を強いられます。
 

 
ここで目を引いたのは、「手」を使ったエモーションな演出。何も出来ないままに、無残に破壊されていく街をただただ見ていることしかできないジョーイの感情の込められた握り拳と、前回の戦いで拳を失ったヒーローマンの手というコントラスト。
 
「タマ」との戦いで傷つき、拳が砕け散ったヒーローマン。闘うことができないヒーローマン
決意、悔しさ、歯がゆさ、悲しみ。人間の「握った手」を使った描写は様々な感情を表現し、テレビアニメのような映像表現でも頻出する方法論ではありますが、「HEROMAN」ではそこに加えてジョーイとヒーローマン二人の手の対比が行われています。
 
そこから生まれてくる、ジョーイとヒーローマン、二人の一心同体感。愛する人を、街を、守るためには、どちらか一方だけではダメで、二人で力を合わせて、お互いに支えあって戦わなければならない。
「HEROMAN」というテレビアニメは、主人公ジョーイのヒロイックなSFアクション・ストーリーであると同時に、ヒーローマンとのバディ・ムーヴィーでもあるというのが、今のところの私のこの作品に対するイメージなのですが、二人の絆が強まっていくのをヴィジュアル面と心象面で同時に強く感じられるようで、こうした見せ方、演出術っていうのはハートにグッとくるものがあります。
 
で、そうした中で描かれるジョーイの心の成長っていうのが、また素晴らしいんですよね。絶望的な状況に追い込まれ、焦りを隠せないジョーイ。前回のエピソードと同様に、ここでも、ユーモアを交えた描写の中に、そういったストーリーの本質が描かれています。
 

 
電力供給のために、自家発電用の自転車を漕がされるジョーイ。彼の頑張りと教授の情報収集能力によって、スクラッグたちの侵略行為のニュースを知ることになりますが、そこでのジョーイの一言、
 

「もう…ジッとしていられません!」

 
は、01話での内向的な姿を見てきた者としては非常に力強く聞こえると同時に、「自転車漕ぎでの自家発電」というベタなギミックを使ったギャグ感覚と、自転車をずっと漕いでいるのに「ジッとしていられない」という身体描写と心理描写の矛盾がいかにもおもしろさを感じさせてくれます。
 

 
そこでのジョーイの顔、感情が観る者に伝わる描き方も相変わらず秀逸で、ユーモアを隠し味にしながら、こういった見せ方をするのが本当に上手いアニメだなぁ、と見ていて感心しました。
 
 

■サイと教授、そしてロックンロール!

侵略者であるスクラッグとの戦い。今までは、ジョーイとヒーローマン、この二人が侵略者の圧倒的な戦力に唯一対抗しうる存在として描かれていましたが、第05話の「アサシンズ」では、そこに他の登場人物たちも絡んでくることになります。
 

 
先ずは、敵の能力や科学力を研究し、エレキギターを使った新しい武器を開発した、「教授」ことマシュー・デントン
そもそも、スクラッグが地球にたどり着いたのは、この人が地球外に向けて発信していた音声信号が原因だったわけで、侵略が開始されたきっかけが「音」ならば、侵略者の弱点もやはり「音」だったというのは如何にも皮肉なトコロではあります。
しかし、キャラクターデザインにロックンロールのイメージが散りばめられ、ガールズバンドMETALCHICKSサウンドトラックを担当し…という「HEROMAN」の世界に、この新兵器の登場は非常に必然的かつ魅力的。
そして、そのギターを使ってジョーイをサポートする親友のサイ。ビジュアルも相まって、ギター片手にスクラッグに立ち向かう姿が最高にクールでしたよね。
 

 
ここでおもしろいのが、サイも教授もギターを弾く時はちゃんとコードを押さえているんですよね。
マクロス」シリーズのように音楽が持つメッセージ性やエモーションで相手の内面に攻撃を仕掛けるのではなく、直接ギターの音で聴覚を攻撃するわけですから、不協和音や開放弦で音を出すだけでも十分なんでしょうけどエレキギターからはキチンとメロディが奏でられる。
カッコよろしいBGMやキャラクターに加えて、「HEROMAN」というアニメ作品に流れるこの辺りの音楽的な豊かさ、こだわりというのも音楽が好きな人にはたまらないものがあるのではないでしょうか?
 

 
そして、この二人が戦力として加わったことで生まれる新たな戦い方。今までのヒーローマンのパワーのみに頼った戦法ではなく、侵略者にゲリラ戦を挑むジョーイたちの姿にはこれまでのバトルシーンとは違ったスピーディーな魅力がありました。
 
ヒーローマンの攻撃力に加えて、教授がスクラッグに対峙するための道具を開発し、サイが戦略的な攻撃方法を考えつつ、ジョーイたちをサポートする。
エピソードの前半では、戦いで傷つき拳が砕けたヒーローマンというショッキングなシーンが描かれていましたが、それ故に後半での頼れる仲間たちの姿が、そして彼らの力を借りて敵に立ち向かうジョーイとヒーローマンのヒロイックなイメージが強く印象に残ります。
もう、何て言うか…こういう展開は本当に胸が熱くなりますね…。
 
 

■まとめ

ファニーやユーモアやクールな音楽的イメージ、そしてバトルシーン。
様々な魅力をサービス精神旺盛に、一気に視聴者に提示しながらも、ジョーイとヒーローマン、そして周囲とのリレーションシップが物語の中で強調され、スクラッグに立ち向かう糸口が提示されたエピソード…第05話「アサシンズ」を観ていて、私はそういった印象を受けました。
 
エピソードの終盤では、リナがジョーイたちのパーティーに加わったのも、以降のストーリーで彼女がどういった役割を担うのかも含めて大いに気になるところ。
そして何よりも、サイと教授とは全く違う形・方向から、人類とスクラッグの戦いに加わった「あの二人」もいるわけで…。
 
あ〜どうなってしまうんでしょうか「HEROMAN」!? 本当に、これからのストーリーが楽しみで楽しみで仕方がないです!
 
 
 
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