「HEROMAN」 理想的なヒールがいることで輝くバトルシーンの熱さとカタルシス

 

 
第17話「レガシー」から、また新たな物語と突入する「HEROMAN」。果して、如何なるストーリーがジョーイとヒーローマンを待ち受けるのか、そして、どんな強敵が彼らの前に立ち塞がるのか?
これまた楽しみで仕方がないのですが、 その前に前シリーズ「NIA編」の総括と、ヒーローマンとMR-1との激烈な戦いが尋常じゃない程の熱量を放っていた第16話「デシジョン」の感想文を。
 
いや、本当にあのバトルは凄かった! ですよね!?
 
 

ヒーローマン vs. MR-1 その燃えるシチュエーション!

侵略者との戦いを描いたスクラッグ編を受けて始まった新シリーズ。アメリカ政府の諜報機関「NIA」によるジョーイたちの追跡劇を描いたエピソード群は、力を持つ者故の孤独や愛する人たちとの別離といったヒーローである故の「悲しみ」をメインテーマに置いた、ややモノトーンな色彩とエモーションを持ったストーリーだったと思います。
 
正義の戦いが、巨大な悪意によって捻じ曲げられ、孤独と不安の中で当てのない逃避行に出る…。そして、そんなジョーイたちを追うNIAと、彼らに歩調を合わせるように見せ、その実、邪悪な意思を胸に秘めヒーローマンを追い詰めるドクター・ミナミの脅威。
 

 
そんな、シリーズの最終戦、メインに持ってこられたのがヒーローマンとドクター・ミナミ操るMR-1の激しいバトル!
また、その見せ方が素晴らしいんですよね。真実の究明のために、テレビ局のリポーターとカメラマン、キーシャとレオのコンビがカメラを通して、この戦いを全米中に伝える。
 
スクラッグ編でのそれとは違い、テレビカメラを通じた中継というかたちで、リアルタイムで多数の人々が「目撃」する戦い。
キーシャの文字通りの「実況」も冴え渡っていて、そのバトルシーンはシリアスの中にも、さながらプロレス中継を観るようなエンターテインメント感溢れるダイナミズムを含んでいたように思います。
 

 
カメラがあり、バトルを語る言葉があり、そして、それを見守る人たちがいる。ジョーイ・ジョーンズ、ヒーローマン組 対 ドクター・ミナミ、MR-1組によるタッグマッチ、時間無制限一本勝負は、そういう「熱い」シチュエーションの中で繰り広げられた名勝負でした。
 
 

カタルシスが溢れ過ぎの対MR-1戦

そして、そういったシチュエーションだからこそ、生まれる「ストーリー」。
ヒーローマン打倒に狂気染みた執念を燃やし、後先を考えないガムシャラな猛攻を仕掛けてくるドクター・ミナミ。対して、ジョーイとヒーローマンは、その攻撃から人々を守りつつ、不利な状況下で傷つきながら闘わなければならない。
 

 
コントラストがクッキリと分かれた善と悪の攻防。その中で、際立つ、ヒーローマンの「ヒーロー」としての存在感、そして、それがテレビの前の人々の心を掴み、その目を真実へと向わせることになるという熱い展開がこのエピソードの中では繰り広げられます。
 
MR-1の執拗な攻撃の前に、ダメージを負いボロボロになりながらも、人を、街を守ろうとするヒーローマンとジョーイ。
そんなジョーイの咄嗟の機転が、マッド・サイエンティストの頭脳と科学力を上回り、大逆転劇を作り出すというラストのカタルシスと、この勝利によって情報操作によって着せられた「濡れ衣」も晴れるというカタルシス
「NIA編」では、今までの鬱屈が大きかった分、対MR-1戦でのド派手でパワフルなアクションと、その後に訪れるストーリー面での二重三重のカタルシスの快楽は、ちょっと言葉では言い尽くせない程のエネルギーに満ちていました。
 
で、戦いが終わった後の描写が、これまた素晴らしいんですよね!
 

 
ドクター・ミナミを助けるヒーローマン。失神した狂気の復讐者を肩に載せてジョーイの元に戻ってくる姿は、偶然にも第01話の「ビギニング」で、リナとリナの父親をタンクローリーの大爆発から助けた構図によく似ています。
使い古されたお決まりのフレーズではありますが、つまりは「罪を憎んで人を憎まず」。人の命を助け、街を守るヒーローであるヒーローマンにとって、どんなに極悪な人間でも命ある限りは守るべき存在ということなのでしょう。
 
何ていうか…メチャクチャカッコいいぜ! ヒーローマン!!
 
 

■「ドクター・ミナミ」という理想的なヒール像

とにかく、終盤の盛り上がりが凄まじかった「NIA編」。こうして、改めて考えてみると、「ドクター・ミナミ」っていうキャラクターは、本当に理想的な悪役だったな、と。初登場時から「コミカルで憎めない悪役」くらいのキャラクターに思っていたのですが、あそこまで狂気を全開にして挑んでくるとは思いませんでした。
 

 
今までのエピソードに比べても、デフォルメの効いた表情や、アクションもキレまくっていて、特にラストバトルでの宙吊りポージングの数々なんて、どうやったらこんな見せ方が思いつくの! って、作ったスタッフのセンスに驚愕した次第。
とにかく、その強烈な個性と特異な悪意によって、ファンにその印象を刻み込んだミナミですが、こういう悪役がいることで、その対極にいるヒーローマンとジョーイのヒロイックなイメージがより強調され輝く…これも、プロレス的な語彙を使って表現をさせてもらえるならば、ドクター・ミナミは理想的な「ヒール」そのものだったと思います。
 

 
タッグ・パートナーであるMR-1も良かったですね。初戦では、ヒーローマンの前に全く歯が立たなかったMR-1が、リマッチではここまで善戦したというのは敵ながらアッパレ。片腕をもがれながらも、特攻してきたシーンはカッコよかったです。
 
いや、ヒーローマン対MR-1は、アクションを見ても、ストーリー面での展開に目を向けても、本当にグレートな試合だったと思います。
個人的には、今のところヒーローマンのベストバウト! これまた、素晴らしいものを見せていただきました!
 
 

■まとめ

「HEROMAN」らしいユーモアを絡めながらも、シリアスで重い展開が続いた「NIA編」。それまでのタメが効いていた分、ラストに訪れたカタルシスとハッピーエンドの多幸感は絶大で、「スクラッグ編」とはまた違ったニュアンスで楽しめる、印象深いシリーズでした。
今度の新展開も楽しみですね〜。
 
 
 
■「HEROMAN」2つのエピソードから浮かび上がる、対照的なヒロインの魅力!