ラブコメ作品における幼馴染ヒロインのポジションとプロレスの引き立て役と

 

<週刊プロレス No.1635 (ベースボール・マガジン社)>
 
私、ラブコメが大好きで、その中でも幼馴染ヒロインが大好き(というか、「にゃんこい!」の住吉加奈子さんが大好き!)で、なおかつ、プロレス大好きな人間なんですが、そんな私から見たラブコメ作品の幼馴染ヒロイン論をアレやコレやと。
 
…ちょいちょいプロレスの話が出てくるので、馴染みがない方にはピンとこない部分もあるかもしれませんが、最後までお付き合いをいただければ幸いです。
 
 

■ラブコメには欠かせない幼馴染ヒロインだけど…


 
ブコメ作品において、欠かすことのできない存在。それが、幼馴染ヒロイン。しかしながら、近年のラブコメ作品では恋愛面において割りと不遇な扱いを受けがちな気がします。…なんてことを書くと、「そんなことはない! 幼馴染ヒロインが大勝利する『○○○○』みたいな作品もあるじゃないか!」というお叱りを各方面から受けそうな気がしますが、ちょっとここで考えていただきたい。
確かに、主人公に対してずっと一途な想いを抱いてきた幼馴染ヒロインが報われる…そんな物語も確かにあります。ありますが、でも、印象論として幼馴染の女の娘って、最近のラブコメでは負けが込んでない!?
 
だいたい、アニメとか漫画とかラノベとかのラブコメって、男の子が主人公でその子には可愛い幼馴染の女の娘がいるわけです。で、その娘は大体、主人公に惚れているんだけど、素直になれなかったり、控えめで大人しい性格だったりして、主人公に自身の好意を上手く伝えられないんですよ。
 
で、そこにいきなり学園一の美少女だったり、超絶人気アイドルだったり、神様だったり、宇宙人だったり、ゾンビっ娘だったり、幽霊っ娘だったり、獣っ娘だったりが登場して、いきなりメインヒロインになるの!
 
突然、スター選手が現れて、メインヒロインという名のラブコメ界のチャンピオンベルトを奪取するのよ! で、幼馴染の娘が、どんなに頑張ってもダメなの! もう、どんなに頑張ってもダメ! もうね、あんなん悪魔の所業なんですよ!
長州力は、新日本プロレスの現場監督時代に「努力をしても報われない奴はいる。間違いなくいる」という名言を残しましたが、まさにその通り。幼馴染ヒロインって、報われないことが多いんです。ラブコメ界に非常ベルが鳴っている!!
 
 

■献身的な幼馴染ヒロインさんの姿

ブコメアニメ、漫画とかの幼馴染ヒロインって、恋に敗れたり、想いを伝えられなかったり、恋愛に関して損なポジションを担いがちです。…でもね、コレ、哀しいかな、そんな彼女たちがいるおかげで、"ラブコメ"って凄いおもしろくなるの! 呪わしいけど、コレは紛れもない事実!!
 

<はっとりみつるさんかれあ」第3巻 (講談社) P.151>
 
正ヒロインのポジションには就けなくても、いつまで経っても主人公に恋愛の対象として見られなくても、それでも好きな人の為に彼女達が奮闘する姿というのは、我々の心をグッと掴んで離さないわけで、限りなくエモーションを刺激される。
 
また、こういう娘さんがいるおかげで、正ヒロインがより一層輝くという面もあります。幼馴染ヒロインさん達に対して"引き立て役"という言葉を使うのはアンマリですが、実際のところはキャラクター的にもストーリー的にも、幼馴染の女の娘の存在によって正ヒロインの魅力が引き立てられる…という部分は確かにあると思うんです。
 
この辺の彼女たちのポジショニングや受け手のフィーリングというのは、プロレスに例えるとより分かりやすいかと思います。というのが、プロレスには、対戦相手を引き立たせるのが抜群に巧いプロレスラーというのがいるんです。こういう選手は、各団体が売りだそうとしている若手選手やエース候補の選手、或いは、他の団体からやってきた"外敵"と戦い、そして、相手の良い所を全て引き出した上で負けることが多いんです。
 
 

■プロレスにおける"引き立て役"


 
で、こういったポジションにる選手というのは、相手の良さを引き出し、輝かせる為に、非常に高いプロレス技術を持っているレスラーがその役割を担うことが多いんです。最近だと、新日本プロレス田口隆祐DRAGON GATE横須賀享(現:ジミー・ススム)…とった選手がこういったレスラーの代表格だと思います。
 
例え、自分よりキャリアが下の選手でも、例え、小さなインディー団体の選手でも、一方的に相手を叩き潰すような真似は決してせず、対戦相手の技を全て受け切り、相手を光り輝かせ、そして観客を熱狂させる。
また、こういう選手は、タッグマッチでは、エース級の選手とタッグを組むことが多いです。そして、そこでは、身を呈して相手チームの技を受けまくってパートナーを守り、試合に負ける時は、パートナーに土を付けることなく自分が負ける。それが、彼らのプロレスです。
 
受け身が抜群に上手く、あらゆる技を器用にこなし、そして、試合を組み立てる技術も一級品。故に、対戦相手の"引き立て役"として重宝をされる選手。抜群におもしろくて、良い試合をするけれど、勝負には勝てない、なかなかチャンピオンになれない選手。…でも、こういった選手がいないとプロレスって決して成り立たないんです! そして、そのことを知っているプロレスファンは、彼らのことを愛し、心の底から応援をします。例え、試合に敗れようと、チャンピオンベルトになかなか手が届かなくても、彼らの試合に惜しみない拍手を送るんです。
 
ブコメにおける幼馴染ヒロインに私達が惹かれる理由も、これに親しいものがあるのではないかと思います。自身の恋が実らなくとも、メインヒロインの引き立て役を献身的にこなし、ストーリーを盛り上げる為に頑張る幼馴染ヒロイン。ルックスも性格も良くて、ポテンシャルは高いのに、決してメインヒロインになれない彼女たちの姿にじれったさを感じつつも、その健気な姿に我々は惹かれて止まないのではないかと…。
 
 

■まとめ

ブコメ作品での幼馴染ヒロインの姿って、プロレスにおける"引き立て役"のポジションにいる選手と自分にはちょいちょい重なります。献身的で、自分の身を呈して周囲を輝かせ、ストーリーをスイングさせる。主人公にとっての一番だったり、チャンピオンになることはなかなか無いけれど、このキャラクター、レスラーがいないと物語が成り立たない。そんな存在。
 
自分が幼馴染ヒロイン好き(というか、「にゃんこい!」の住吉加奈子さんが大好き!)で、しかも、田口隆祐のようなプロレスラーのファンで、物凄く感情移入をしてプロレスを観ているから同一視してしまうのかもしれませんが、相通ずる部分、重なる部分があると思うんですよね。凄く。
 
 
 
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"幼馴染ヒロイン"論アレコレ。