アニメ、特撮ファンの目線で観てもおもしろかったオディロン・ルドン展

 

 
先日、友人に誘われて新宿の損保ジャパン東郷青児美術館オディロン・ルドン −夢の起源−」展を観てきました。
 
恥ずかしながらアートであるとか絵画であるとかに対しての知識、教養がほとんどない自分。…これまた恥ずかしい話、美術館の中に入るまでルドンの名前も知りませんでした…。完全に、友達の付き添いみたいな感じでの鑑賞と相成ったのですが、これが予想以上におもしろくて楽しかった! …ので、今回のエントリでは、オディロン・ルドンについてのアレやコレやでBLOGを更新!
 
 

■"黒"の幻想画家、オディロン・ルドン

そもそも、オディロン・ルロンとはどのようなアーティストだったのか? 東郷青児美術館のHPに掲載をされているテキストを引用させていただきます。
 

1886年、現代生活を描いた色鮮やかな作品がならぶ第8回印象派展の会場に、幻想的な白黒の木炭画を出品した画家がいました。フランス象徴主義を代表する画家オディロン・ルドン(1840〜1916)です。外界と現実を重視した写実主義が台頭する中、内面を重視し夢の世界を描いたルドンは、やがて写実性への反動の高まりとともに注目を集め、次世代の画家や文学者、批評家たちの支持を集めていきました。しかしその一方で、ルドンは実証的な自然科学に対しても決して無関心ではなく、その影響はルドンの幻想的な作品でも見ることができます。
 
■「オディロン・ルドン −夢の起源−」展示会案内(損保ジャパン東郷青児美術館)

 
19世紀のフランスで活躍をした画家、ルドン。当時のヨーロッパの美術界で大きなムーブメントを起こしていた印象派の画家達が光が差し込む美しい風景や市井の人々の生活をモチーフにして作品を描いていたことに対し、木炭や版画を画材に使い…黒一色の景色の中で、幻想や神話の世界を描いた異色のアーティスト…というイントロダクションは、件の展示会で観た解説とWikipediaに書かれていたことを自分なりに再構築しただけのお粗末なものではあるんですが、そんな浅薄な感性と知識しか持たない私みたいな人間が観ても、このルドン展っていうのはメチャクチャおもしろかったんですよね。
 
何がどうおもしろかったかって言ったら、ルドンが描く怪物や神話の登場人物達…敢えて、ここでは自分にとって馴染みのある"キャラクター"って言葉を使いますけど、そのキャラクターの描き方っていうのが、今のアニメとか映画とかのそれに凄く近しいセンスが感じられて、アニメやら漫画やら特撮やらSF、ホラー映画が大好きな自分の琴線にクリティカルにヒットをしてきたわけなんです。
 
上記の美術館での紹介文でも言及をされているのですが、このルドンのおもしろいところって、自然学者の友人がいた影響で顕微鏡で覗いた微生物の営みだとか、植物だとか…そういった自然の世界にも強い興味を持っていたという点なんです。結果、ルドンの描く幻想、神話の世界に登場をするキャラクター達って現実の生物や植物のフォルム、生態を組み合わせたデザインになっている。今回の展示では、そういった部分を強く強調していたようで、自然科学が如何にルドンの世界観の中で重要な役割を担っていたかっていうのが分かりやすく解説をされていまして。
 
そこが私には凄く惹かれた部分なんですけど、これって要はアニメとか漫画とか特撮ヒーロー番組とか…あと、RPGとかのゲームでもそうですし、ホラーやSFムービーの世界なんかもそうなんですけど、現代的な"クリーチャー・デザイン"の技法、感性と向いている方向が良く似てると思ったんですよね。
 
 

■ルドンの絵画に感じた"クリーチャー・デザイン"

アニメや漫画、特撮作品に登場をするヒーローやモンスターって、その多くは自然界の生き物からデザインなり特徴なりを受け継いでいて…また、そういう中で神話や宗教に出てくるモンスターの姿も再構築されていくわけじゃないですか。例えば、直近の作品で分かりやすい例を一つ挙げさせていただくと、仮面ライダーウィザード」の"2号ライダー"たる仮面ライダービーストとか。
 

 
あのライダーって、ギリシャ神話に出てくるモンスターのキマイラがコンセプトのベースになっていて、ビジュアルにはライオンをモチーフにしたデザインが施されている。そして、様々な生物が合体をしたモンスターであるキマイラよろしく、カメレオンやイルカ、バッファローハヤブサ…といった動物達の力を借りて戦うという。アレを初めて観た時は、本当にこのアイデアを考えた人は天才だ! って思いましたからね。実際の生き物のフォルムや生態をヒーロー、クリーチャーのフォルムや必殺技なんかに活かすという。
 
で、私がルドンの絵を観て、凄くおもしろいと思ったポイントっていうのは、正にそういうフィーリングなんです。
 
自然界に生きる動植物のフォルムや生態をリデザインし、新しいクリーチャーを生み出すという方法論って、アニメなんかの表現文化の世界で古くから行われてきたことだと思うんですが、ルドンの描く木版画もこれに近しいニュアンスを含んでいて、その幻想世界のキャラクター達には既存の生物の有機的な形態が含まれている。例えば、翼の生えた人間の頭部、例えば、巨大な眼球を持つ植物、例えば、グロテスクな容姿のキマイラやサイクロプス…。これが物凄くユニークに思えて…。
 

 
例えば、本企画展のチケットやポスターのメインビジュアルにセレクトをされている「蜘蛛」って作品がありまして…コレは、不気味に笑う人間の顔に蜘蛛の足が生えた生き物を描いた木版画なんですけど、もう、まんまジョン・カーペンター遊星からの物体Xなんですよ、見た目が。現在のクリーチャーデザインのテクニックとおもしろさに通じる部分が凄く多いんですね。アニメや映画のファンの目線で接してみると。
 
ルドンの絵画って、ギリシア神話キリスト教の世界に有機的なデザイン性を取り込んだ作品が多いんですが…そういった空想上の生き物を自然科学の知識によって再解釈し描くセンスも非常に興味深かったですし、これ「女神転生」好きな方ならどストライクなんじゃないかな、とか。そんな感じで生まれて初めて接したルドンの絵画。私は凄く楽しむことができたんですよね。美術館の空間をエンジョイすることができた。
 
 

■ルドン展…大変にオススメです!

勿論、ルドンの魅力というのは、こういったキャラクター、クリーチャー・デザイン的な世界に留まるものではありません。"黒の時代"の後には、豊かな色彩を持った風景画や静物画も描いていますし、その時代に描かれた幻想、神話の世界というのも、また一連の木炭画、版画作品とは一味違う魅力に溢れています。まぁ、美術館に足を運んで、初めてこの作家の名前を知ったような人間が観て、これだけおもしろかったのですから、絵を描く人とかデザインに興味がある人が観たらもっと楽しいだろうし、深みのある感受性を作品に対して持つことができるのではないかな、と。そこに併せて、自分みたいなアニメや特撮作品のキャラクターに強い感心がある人にもオススメを出来るという。
 

 
ルドンがその挿絵を描いたボードレール悪の華…から強烈なインスピレーションをもらった漫画作品惡の華がアニメ化をされた2013年。テレビアニメの中でも、この特異なイマジネーションを持つ作家の絵が登場をする時代となりました。これをきっかけにして本企画展に足を運んでみるのもオツなものだと思います!
 
…あぁ〜でも、こういう展示会も友達に誘われなかったら行かなかったし、ルドンの名前を知ることも無かっただろうな…。久々に文化的で楽しい時間を過ごせたんですが、やっぱり友達って色々と新しい世界を教えてくれるから良いものですね。T君、いつもありがとね!(コレ、読んでるかどうか知らんけど…)
あと、アンマリにもおもしろかったので、勢いだけで、こんな知ったかな文章を書いてゴメン…。
 
オディロン・ルドン −夢の起源−」展は、損保ジャパン東郷青児美術館にて6月23日まで開催中。