TELEVISION@LIVEHOUSE CB

 

 
今回は、先日観に行った音楽ライブの感想を。
 
 
世間一般との休日がずれている我が職場。今年のゴールデンウィークも普通に仕事、仕事でどうにかこうにか3連休を会社からいただけたのは、多くの人々にとっての長い連休が終わり学校や職場へと戻り出す頃だった。この貴重な3連休。せっかくなので、地元である福岡に短期の帰省をすることにした。そのタイミングで耳に入ってきたのが、TELEVISIONがジャパンツアーで福岡にやってくるというニュース。
 
新宿のレコードショップである「VINYL JAPAN」の招聘によって実現をした今回の来日公演。福岡にまでやってきてくれたのは、地元出身者で福岡県が大好きな自分みたいな人間からしたら本当に嬉しい出来事で、せっかくだったら地元で観るのもおもしろそうだな、と敢えて東京公演は外し、帰省に併せて福岡公演のチケットを購入したのだった。
 
会場となったライヴハウス、「LIVEHOUSE CB」は福岡市の中心である天神から少し外れた長浜エリアにあるライヴハウス。地元に住んでいた時は一度も行ったことが無かったのだけれど、音も雰囲気もとても良いらスポットだった。壁を見渡せば、アチコチにSHEENA & THE ROKKETSのポスターが貼ってある辺りは、如何にも博多のライヴハウスといった趣。お酒を飲んで馬鹿話に盛り上がる地元の音楽ファンの会話の節々に出てくる博多弁が懐かしい。あ〜高校の頃とか、こんな感じのお店にいつも遊びに来ていたんだったな、アレから随分と時が経ってしまったんだな…なんてちょっとセンチメンタルな気持ちになりつつ開演を待つ。
 
鐘の音のSEと共に、遂に目の前に登場をしたTELEVISION。NYの伝説。そして、この日、博多までやって来てくれたTELEVISION。
 
トム・ヴァーレインは、レコード以上に独特のシャガレ声で歌いヘロヘロなギタープレイをする人で…正直、テクニックとしては、よっぽどその辺のアマチュアバンドの方が上手いのではないのかな、と思えるレベル。ハッキリ言ってしまえば…トム・ヴァーレインのギターは思いっきり下手だ。「30年以上に渡ってバンドを続けて、このレベル!?」と驚いた程。ただ、その下手さというのは、他の誰にも真似を出来ない唯一無二の独自性を持っている。言わば、"ヘタウマ"の究極系。
 
ギターのシールドが抜けているのに気付かず、機材トラブルと勘違いをしたり、アンプにギターを向けてしまってハウリングを起こしてしまったり、挙句の果てには1st収録曲の"Prove It"を途中で思いっきりトチって最初からやり直したり(流石に、ステージの上で本人も少し凹んでいた)…と、初めてバンドを組んだ中学生ばりのイージーミスを連発するトム・ヴァーレイン。思いっきり、"隙"が多いのだけれど、それが嫌な感じじゃなくて何とも言えない独自性と味に昇華している辺りは、流石といったところか。
 
歌もギターも技術的には拙いながらもその存在感には特異かつ強烈な個性があり、つまりはこのオリジナリティーこそがTELEVISIONというバンドの本質、芯となる部分であることをステージを生で観て再確認。
オリジナリティーという部分で言えば、「パンクバンドなのに、コードストロークをほとんど使わず、単音弾きとスライド奏法を多用する」という同時代のRAMONESの逆を行くTELEVISONのサウンドを至近距離で目撃できたのも嬉しかった。あのキテレツなギターフレーズはこうやって弾いていたのか! とか、あぁ、ここはスライドを使ってあのメロディーをクリエイトしていたのか! といった音に対する再発見が出来たのも、この日の大きな収穫だった。
 
セットリストは、やはり1stの"Marquee Moon"と2ndの"Adventure"が中心で、再結成後に発表をされた3rdの"Television"が…特に、"In World"の乾いた音とダンディズムが好きな自分は、この曲が演奏をされなかったのがちょっぴり残念ではあったのだけれど、やはり"Marquee Moon"の尖ったサウンドと一転してポップなメロディーが中心となった"Adventure"という二枚のアルバムは、バンドにとってもリスナーにとっても特別な存在なのだろう。本編ラストは、勿論"Marquee Moon"で、あのイントロが流れた瞬間には会場は大盛り上がり。トータルの演奏時間はやや短かったものの、TELEVISIONと…そして、トム・ヴァーレインという異能のミュージシャンが持つオリジナリティーに驚かされた夜。本当に素晴らしいステージだった。
 
ちなみに、フレッド・スミスやビリー・フィッカといったメンバーはテクニックもあり、演奏力も安定。クールなプレイが大変にカッコよろしかった。主に、バッキングを担当していたもう一人のギタリストは、ジミー・リップという人で、この人は2000年代の半ばに加入をしたメンバーらしい。この人のギターもスタイリッシュでカッコ良い。メンバーの中で、唯一、トム・ヴァーレインだけがほとんど技術的に成長をしてないんだよなぁ〜。