「一週間フレンズ。」主題歌の泣けるJ-POP






今月から放送をスタートしたテレビアニメ一週間フレンズ。。物語のスタートラインである第一話は作劇や画面作りから非常に丁寧な印象を受けました。こういうセンチメンタルなアニメは大好きなので、春アニメの中でも特に注目をして観ていきたいと思っています。


そんな「一週間フレンズ。」で非常に興味深く思ったのが、その主題歌。ちょっと今回のエントリでは、この作品にまつわる音楽についてアレやコレやと書いてみたいと思います。




■「一週間フレンズ。」の"泣けるJ-POP"による主題歌

本作のオープニングには、川嶋あいさん作詞、作曲による昆夏美さんの楽曲虹のかけらが、そしてエンディングにはヒロインの藤宮香織を演じる雨宮天さんが歌うスキマスイッチ「奏」のカヴァーが使用をされています。


これが自分にはとてもおもしろく感じたんです。川嶋あいさんやスキマスイッチといった"泣けるJ-POP"の文脈にあるアーティスト、楽曲の起用は、同時期に放送をスタートしたアニメ作品の中でもなかなかに異彩を放っているというか、目を惹くポイントである様に思うんですね。


というのが、J-POPの持つ独特のメロウさというか"泣ける"メロディーや感動的な歌詞を何の衒いもなくピックアップをしてみせた、その強度と思いきりの良さ、これはアニメ作品としてなかなかに珍しい意匠なんじゃないかな、と。


川嶋あいさんは以前にもアニメ作品に曲を提供しているし、スキマスイッチは劇場版の「ドラえもん」や「ポケットモンスター」の主題歌を歌っていますし、「東京マーブルチョコレート」という秀逸な短編アニメ作品やテレビアニメでも「獣の奏者エリン」(個人的に大好きなNHKアニメ!)を始め数多くの主題歌を手掛けていたり…とアニメとの接点があるJ-POPアーティストなので、この二組のミュージシャンの起用はナチュラルといえば極々ナチュラルな流れだし、昨今の"アニソン"と"J-POP"の距離感を考えれば特段に珍しいことではないのかもしれません。


とはいえ、スキマスイッチの曲をカヴァーする際に、「奏」を持ってくるセンス…直球で"泣き"の曲を持ってくるセンスというのはなかなかに興味深い。…そう、「一週間フレンズ。」の主題歌のチョイスというのは、物凄くストレートだと思うんです。一週間で友達の記憶を失くしてしまう少女と彼女を見守る少年のセンチメンタルなストーリーに、メジャーアーティストが書いた直球で"泣ける"楽曲を持ってきた。その思いきりの良さですよね。




■アニメ作品に"ベタ"なJ-POPを起用するセンス

これは、ステレオティピカルなイメージ像による不確かな印象論で申し訳ないんですが、深夜アニメを好んで観るファン層というのは、こうしたセンチメンタル過剰で情動的なJ-POPの楽曲群に、どちらかというと距離感を感じる人達が多いような気がするんです。例えばJ-POPの歌詞に頻出をする「会いたい」や「瞳を閉じて」といった"ベタ"で感動的な歌詞を茶化してしまう様なちょっとシニカルな視線やセンスはネット上に溢れています。


けれども、そうした視点も恐れず、ひたすら真っ直ぐな選曲、アーティストの起用を行った「一週間フレンズ。」。自分も、こういう"泣けるJ-POP"がどちらかと言うと苦手な類の人間ではあるんですが、深夜アニメでこういった選曲を行う作品が出てきたことは非常に興味深く感じます。自分が思う本作の"思いきりの良さ"というのは、そういう部分で。感動的なストーリーのアニメに、王道かつ情動性のある主題歌を"ベタ"に持ってくるという、そんな選曲を行う作品が出てきたというのが、自分にとっては凄く新鮮に思えて。


そういった選曲のセンスを考慮した上で、このアニメの制作が東宝のアニメ事業部であるTOHO animationというのは、なかなかにおもしろいポイントだと思うんです。


というのが、ちょっとこじつけになってしまうんですが、こういうメジャーアーティストによる"泣けるJ-POP"を映像にリンクさせるという手法はアニメというよりは邦画のそれに近しいセンスを感じるのです。感動的なストーリーの作品に情動的な"泣き"の曲を併せるあの感じ。例えば、東宝が配給を行った「世界の中心で、愛をさけぶ」で平井堅さんの「瞳をとじて」が使用され、「いま、会いにゆきます」でORANGE RANGEの「花」が流れてくる、ああいう文脈に近しいんじゃないかな、と。




TOHO animationが手掛ける音楽の幅広さ

…まぁ、"東宝"という名前、ブランドが出ているからといって、そこまでこじつけるのは流石にやり過ぎかと自分でも思いますが、ただ、TOHO animationの音楽の感性ってこれまたおもしろくて、例えば、銀河機攻隊マジェスティックプリンス」やファンタジスタドールといった作品では、石川智晶さんや高梨康治さんといったアニメ音楽界の売れっ子作曲家が主題歌を手掛け、未確認で進行形では"ボカロ"出身のJunkyさんを起用、そして、最新作の「一週間フレンズ。」では川嶋あいさんとスキマスイッチ…と、アニメにアジャストをした作曲家さん、アニメ専門の作曲家さんからJ-POP畑のミュージシャンまで、作品毎に色が異なる音楽家を起用しているというか、なかなかに音の幅を感じさせるキャスティングを行っている気がするんですね。


TOHO animationは、自社で音楽レーベルも持っていますが、その所属アーティストである昆夏美さんなんて、デビュー曲である「銀河機攻隊マジェスティックプリンス」の主題歌では、石川智晶さんのプロデュースにより、あの深淵な歌詞とメロディーを持ったプログレッシヴな楽曲を歌われていましたが、それが「一週間フレンズ。」では一転して川嶋あいさんが手掛けた爽やかなポップソングの歌い手になっていたりしますし、その辺り幅の広さにもTOHO animationの音楽的なアティチュードが現れていたりするのかな、と。


何はともあれ、こういう"泣けるJ-POP"を主題歌に持ってくるアニメ作品が出てきたことは、J-POPとアニメの距離感を考える上で非常に興味深いトピックであり、そういう音楽的な姿勢を本作で打ち出してきたTOHO animationの音楽面の姿勢を自分はとてもおもしろく感じます。この辺りの作品というのは、今後とも追い掛けていきたいなと思います。


…しかし、"泣き"で"ベタ"なJ-POPってオタク文化とアンマリ縁がないものだと思っていたんですが、ZONEの「Secret Base」を使った「あの花」(の前に「今日の5の2」もカヴァーをしてましたが)とか、そういう作品も増えてきて、もう、この辺の音楽というのもボーダレスになっていたりするんでしょうか…? 自分は、アンマリそういう楽曲に馴染みがない人間なもので、「一週間フレンズ。」の様な作品を観ると、結構な驚きを感じるんですよね、未だに…。


ちなみに、本エントリは、そのインパクトと東宝というブランドへの興味だけで勢い任せに書いてしまったエントリなので、アニメとJ-POP楽曲のタイアップに関してはもっと色々と深い考察をされている方もいらっしゃるかと思いますし、このテキストも穴だらけかとは思うんですが、「一週間フレンズ。」というアニメをこういう視点で観ている人間もいるんだな…という感じで受け止めていただければ幸いでございます! 何だか勢い任せで好き勝手書いてしまって申し訳ない!!