『棺姫のチャイカ』雑感 - ダヴィードさんは脇腹が痛い






先日、全22話のエピソードを終え、感動的な最終回を迎えたテレビアニメ棺姫のチャイカ


この一年間、とても楽しませてもらったアニメで、年内にガッチリと感想を書き残しておきたいと思うのですが、今回はそのウォーミングアップとして、ちょっと軽めのエントリを。


そんなこんなで、今回は『棺姫のチャイカ』にまつわるアレやコレやを!




■『棺姫のチャイカ』のこの人に注目をしてみたい!

敵味方、サブの登場人物に至るまで様々なキャラクターが物語を彩った『棺姫のチャイカ』。勿論、主役であるチャイカの可愛さやトールとアカリのカッコ良さは本作にとって大きなチャームポイントだが、彼女たちの周囲にいるキャラクターもまた大変に魅力的。そんな、それぞれに語り甲斐のある登場人物たちの中から、今回のエントリではこの方にスポットライトを当ててみたい。





ダヴィード……いや、ダヴィードさんである。


"紅のチャイカ"ことチャイカ・ボフダーンと行動を共にする槍使い。その腕前は、幼き頃から戦場で生きてきたサバターであるトールも認める程であり、"白いチャイカ"であるチャイカやトール、アカリと幾度か交戦するも決して引けを取ることは無かった。普段のお気楽な性格や軽い言動とは相反した、確かな実力を有した"強者"の一人である。




■脇腹を痛めるダヴィードさん




しかし、第2期シリーズである棺姫のチャイカ AVENGING BATTLEでは、そんなダヴィードさんに悲劇が起きる。ガズ皇帝の遺産が残された島に渡る際に、乗っていた船が怪物、クラーケンに襲われ大破。海原に放り出されたダヴィードさんは、脇腹を負傷してしまう





この後、島に上陸したダヴィードさんの描写は、個人的に凄く好きなシークエンスだ。密にトールに惹かれつつある赤チャイカに対し「サバターのアンチャンが気になるのか?」と軽口を叩いてみせるダヴィードさん。口では、陽気なことを言いつつも、しかし、その腕は傷口をシッカリと押さえている。負傷によるダメージの大きさと、それでも、自身の"主君"である赤チャイカに心配をかけないように振る舞うダヴィードさんの内面の強さが伝わるシーンだ。


実際、この時のダヴィードさんの傷は相当に酷かったのだろう。この後、腹部に巻いた包帯からは血が滲み、痛みに耐え続ける姿が描かれた。しかしながら、そこはダヴィードさん。負傷を抱えながらも島にいる棄獣の群れと激闘を繰り広げ、トールたちとの共闘の果てに、この絶対絶命のピンチを乗り切ってみせる。しかも、棄獣を撃破した後に、トールやアカリ達に戦いを挑もうとしたのだから、主の目的の為なら己の身体も顧みない忠誠心、そして、不屈の精神力にはただただ感服である。


……が、そんなダヴィードさんに更なる悲劇が襲い掛かる。この後、ダヴィードさんの脇腹は全く治らなかったのである。




■脇腹が治らないダヴィードさん

棺姫のチャイカ』版の"島編"とでも呼ぶべき、ガズ皇帝の遺産を巡るエピソードが終わり、物語の最終局面であるハルトゲン公国での武芸大会に突入。参加者として、大会に紛れ込んだ赤チャイカダヴィードさんだが、この時点でも脇腹は完治しておらず、ハンディキャップを背負った状態で大会に参加する。


そして、城内で白チャイカ、トールとの"最終決戦"に挑むことになるわけだが、その際、ダヴィードさんはトールの刃を受けて再び脇腹を負傷。結果的に、この傷が元で赤チャイカはギブアップを決意することとなる(この時、ダヴィードさんを守る為に降参を選択する赤チャイカと、そんな彼女に「まだやれる!」と言い張るダヴィードさんの描写が本当に良い!)。





物語の最終話である第10話(22話)『機杖(ガンド)担う少女』でも、冒頭に脇腹を気にしているダヴィードさんの姿が描かれている。クラーケンに襲われ傷を負ったダヴィードさんの脇腹は結局、最後の最後まで治らなかった(どころか、余計に傷が酷くなった)。


しかし、それでも決して屈しないのがダヴィードさんの凄いところであり、最大の強みだ。まさに、"手負い"の状態でありながら、黒いチャイカと彼女が操る傀儡たちを相手に徹底抗戦。赤チャイカ一行とアカリ、ジレット隊とのチームワークもあいまって、これを撃破してみせる。第2シーズンの中盤から脇腹を痛めっ放しだったダヴィードさんだが、そんな満身創痍の状態でも最後まで生き残ってみせたのである。




■"普通の人"だが、メチャクチャ強いダヴィードさん

こうやって振り返ってみれば、如何にダヴィードさんが凄いのかがよく分かる。男気、不屈の精神、確かな武術の腕前、戦士としての覚悟……真の"強者"である為の条件が全て揃っているではないか。


更に凄いのが、ダヴィードさんは、劇中で徹底的に"普通の人"として描かれていたことだ。というのが、ダヴィードさんは、突出した能力を持ったチャイカでもなければ、トールやアカリのような鉄血転化の術式を使えるサバターでもない。機杖による魔法を使えるわけでもないし、棄獣を操れる能力を持っているわけでもなく、優れた身体能力を有した亜人でもない。


特殊能力を何一つ持たない、ただただ強いだけの人なのである。


だからなのか、傷の治りも遅い。トールやアカリに比べて、ダメージの回復具合は明らかに遅く、一度痛めた脇腹はなかなか治らず、物語の幕引きまで傷は疼きっぱなしであった。もっとも、劇中の描写を観る限り、化膿止めや止血などの医療系の魔法もあるようなので、白いチャイカは回復魔法を使えたが、赤チャイカダヴィードと行動を共にしていた魔法師のセルマにはそれが使えなかった……という差異があったのかもだが。


ともあれ、これだけの大怪我を負いながら、しかも、普通の人間であるダヴィードさんが数多の強敵を倒し、トールとも互角に渡り合い、そして、最終決戦にも生き残った……というのは驚愕すべきポイントだと思う。


所謂"死亡フラグ"的な脇腹の負傷を常に抱えながらも(それが原因でトールに敗北を喫してはしまったけれど)、そのフラグをへし折り、戦い抜く、生き抜く。こうして考えるとダヴィードさんというキャラクターは、ただただ強く……そして、ただただカッコ良いと思うのだ。




■最後に

魅力的なキャラクターが数多く登場する『棺姫のチャイカ』。自分は、チャイカもトールもアカリも大好きなのだけれど、ここまでで書いてきたような視点からダヴィードさんも大のお気に入りキャラクターになっている。


不運にも脇腹を痛めたダヴィードさん。それでも、最後まで戦い、生き残ったダヴィードさん。


あの陽性の性格もあいまって、第2期の中盤以降、ずっと脇腹を気にしている姿は少しコミカルですらあったけれど、アレこそがダヴィードさんが強さだったのである。間違っても片腹痛いなどと笑ってはいけないのである。