不知火舞に人生を狂わされた人間は結構いると思う
私はアニメや漫画がとても好きなので、その辺のレビューや考察サイトを巡るのが楽しいわけです。
とりわけ、可愛い女の子が出てくる、いわゆる「萌え」系の作品や、最近Blogでもちょいちょいネタにしている成年漫画関連のエントリを読むのが好きで、色々拝見させていただいているんですが…。
そうしたエントリを読む度に、とても不思議に思うことが一つあります…。
それっていうのは…。
オタク界隈って「貧乳」が好きって人が、異様に多くない!?
いや、勿論女性に対する容姿の好みは人それぞれですし、それがどうこうではないんですが、ただ自分の人生っていうのが幼少期から、割とこう豊かな大きさの胸というか…えぇっとあの…ズバリ言って「巨乳」に惹かれっぱなしの人生だったので、「男=巨乳好き」だと完全に思い込んでいたんですよ。
なので、ネットの世界で「貧乳」好きを公言する人を目にして、ちょっと驚いたというか…。
あ、あれです。野球で例えたら、物凄い巨人が好きな人がいて、その人がたまたま野球の話が出来そうな人に出会って、話し込んでたら、相手が生粋の阪神ファンだと分かって、「えぇ〜!」ってなる感じです。うん、ごめん、今の例え、失敗!
いや、でも今20代半ば位の人…私と同世代の人って、他の世代に比べて巨乳好きな人が多いんじゃないかって気がするんですよ。というのも、この世代って、幼少期の頃から接してきたサブカルチャーの多くが、豊かな胸、巨乳のイメージで彩られていたと思うんです。
アイドル、テレビゲーム、アニメ、漫画…こういうオタク系のサブカルに、巨乳のイメージっていうのが多分に含まれていて、そのイメージを幼少期から享受していたのが1980年〜85年生まれの、私たちの世代じゃないかな、なんて。
というわけで、私たち(就職氷河期世代でもなく、ゆとり世代でもない、世間一般では「狭間の世代」とか呼ばれているジェネレーションに属する人たちですね)に大いに影響を与えたと思われる、90年代サブカルをザッと振り返ってみましょう。
■ファーストインパクト! 細川ふみえ登場!
90年代前半のサブカル界において、大きなトピックの一つとなるのが、細川ふみえさんの登場でしょう。細川ふみえさんは、1990年に芸能界デビューを果たします。
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また、後に「バブル青田」のキャラクターで芸能界で再ブレイクを果たす、青田典子さんも所属していた、メンバー全員が巨乳のアイドルグループ「C.C.ガールズ」がデビューしたのも1990年。
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巨乳アイドルの細川ふみえさんとC.C.ガールズのヒットによって、90年代の芸能界では、みるくやピンクサターンといったお色気路線のアイドルグループが乱立し、90年代半ば頃まで「セクシーアイドル」ブームが起こります。
余談ですが、これまた90年に連載が開始された「クレヨンしんちゃん」の主人公、野原しんのすけも初期は「巨乳好きの園児」というキャラクターで、劇中でも細川ふみえやC.C.ガールズのグラビアが載った写真週刊誌を母親にねだる、というような描写が行われていた記憶があります。とにかく「巨乳」というのが一気に認知されたのが、90年代初期なわけですね。
細川ふみえという稀代のアイコンを得た「巨乳」のイメージとセクシーアイドルの過激な衣装は、この後数多くのオタク系文化に多大な影響を与えることになります。
■「餓狼伝説2」と不知火舞
そして、細川ふみえさんの活躍によって「巨乳」がマスレベルで市民権を得た92年の暮れ。とある画期的なビデオゲームがリリースされるのです。そう! SNKのメガヒット作「餓狼伝説2」です!
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「父親を殺された兄弟の復讐劇」という、当時の格ゲー(格闘ゲーム)ブームの中でも、ストーリー性の強い硬派な雰囲気で異彩を放った「餓狼伝説」。その続編である「餓狼伝説2」は、韓国のテコンドー使いキム・カッファンのような、後のSNKのゲームでも登場する魅力的なキャラクターが登場し、エンターテインメント性が強まった作品となりました。
体力ゲージが減った時にのみ使え、その強力な威力で一発逆転を狙える「超必殺技」の起用など、後の格闘ゲームに数多くのエポックメイキングを起こした「餓狼伝説2」でしたが、当時ゲームセンターに通っていた馬鹿ガキ共に、最も大きなインパクトを与えたのがコレ。
お色気巨乳くノ一、不知火舞の登場です!
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胸やお尻、足が露わになった際どいコスチュームや、勝利ポーズ(「よっ! 日本一!」)での乳揺れなどなど、必要以上にその豊かな胸を強調したキャラクター造詣やグラフィックの数々に、当時小学生低学年だった我々ガキゲーマーは心を完全に鷲掴みされ、不知火舞見たさに駄菓子屋のNEOGEO筐体に50円玉を奉仕し続けることになります。SNKのキャッチコピーを拝借するならば、まさに「100メガショック!!」の衝撃でした。
当時は、小学校低学年で同人誌の存在など知る由もないので、不知火舞のセクシーな挙動にひたすらに妄想は暴走し、挙句の果てにうちの地元では「ラスボスのクラウザーを花蝶扇だけで倒すと、エンディングで舞が脱ぐらしい!」などというまことしやかな噂までが流れ出す始末。
そんな中、私はといえば仲間から「オカマ」呼ばわりされるのが嫌で(格ゲーで女性キャラばかり使う子どもは、うちの地元では「オカマ」と蔑称された)、テリー・ボガードを持ちキャラにしていたチキン野郎でした。しかも当時は、パワーゲイザーが出せなかった!
不知火舞は、未だにフィギュアが出てたりする人気キャラクターですからね。若いアニメやゲームファンには想像ができないかもしれませんが、当時は、ああいう大胆なコスチュームで、しかもキャラクターの胸が揺れるなんていうのは、非常に画期的なことだったのです。
元々格闘ゲームの女性キャラクターというのは、性的なイメージに満ちているものです。しかし、この不知火舞の登場は業界的にも非常にインパクトがあったのか、この後登場する格ゲーの女性キャラクターは、巨乳に際どいコスチュームというデザインが多くなっていきます。
例えば、カプコンの「ヴァンパイア」、その続編である「ヴァンパイア ハンター」に登場する女性キャラクターは、モリガンを始め、皆豊かな胸をしていますし、
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とにかく、不知火舞のインパクトは絶大で、我々ガキンチョはその豊かな胸に心を捉えられたまま、90年代半ば〜後半の美少女アニメブームを迎えることになるのです。
■「美少女アニメ」と巨乳
90年代半ば頃から、美少女のイメージがアニメの世界で多用され、今でいうところの「萌えアニメ」の雛形的な作品が散見されるようになります。例えば、「セイバーマリオネットJ」や「爆れつハンター」「VS騎士ラムネ&40炎」といった、あかほりさとる氏による諸作品や、「機動戦艦ナデシコ」や「新世紀エヴァンゲリオン」といったSF作品、「魔法少女プリティサミー」などなど。
こういった作品でも、90年代前半の格闘ゲームの流れを受けてか、数多くの巨乳キャラクターが登場します。
「機動戦艦ナデシコ」に登場する女性クルー達は、ほとんど巨乳でしたし、
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また、この時期の作品では胸の大きさが、そのまま女性キャラクターの心身の成長度合いと直結して描かれていた印象があります。つまり、胸の大きな女性は大人びて、胸の小さな女の子は、それに相応して子どもっぽかったり、幼稚なキャラクターとして描かれるという傾向が強かったのです。
例えば「セイバーマリオネットJ」で主人公の3体のアンドロイドの中で、最も大人びていて、お姉さん的な立ち位置で描かれていたのは、一番巨乳のブラッドベリーでしたし、大ブームになった「サクラ大戦」もバストサイズがそのまま女性キャラクターの成熟度と比例していましたよね。
こんな感じで、90年代のアニメにおける胸の描写というのは、今考えるとかなり単純で、90年代初期にグラビアで起きた巨乳ブームと、格闘ゲームの流れをそのまま汲んだ「とりあえず巨乳描いときゃいーや」みたいな空気を多分に孕んでいた気がします。…今だと、萌えアニメでの胸の描写というのは、恐ろしく複雑化していますからね。
今の作品でいえば、「ひだまりスケッチ」の沙英さんみたいに、内面は大人びているんだけど胸は控えめ、とか
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とにかく、小学校低学年の頃に「餓狼伝説2」を始めとする格闘ゲームをやっていて、そのままオタク方面に進んでいってしまった子たちは、高学年くらいから、90年代前半の巨乳ブームを、そのままキャラクター造詣に継承したアニメ作品を見て育つわけです。
そりゃ、女性観も狂うって!…が、更に、この世代を狂わせるサブカルチャーの洗礼が、成長したその先に待ち構えている訳です…。
■「巨乳をビジネスにした男」野田義治とイエローキャブ
90年代後半、中学生になった私の前に、細川ふみえさんや不知火舞との出会いに負けずとも劣らないビッグ・インパクトが訪れます。山田まりやさんが某青年漫画誌のグラビアでデビューをしたのです!
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その、あどけない表情と巨乳のアンビバレンツな魅力に、すっかり骨抜きされた我々は、それまで読んでいた「週刊少年ジャンプ」を捨て去り、グラビアがある「週刊少年チャンピオン」や、あるいは「週刊ヤングマガジン」といった青年誌に鞍替えを果たすことになります。
いや、あの時期、雛形あきこさんや山田まりやさんのグラビア見たさに「ヤングマガジン」買い始めたヤツって、同年代の中に結構いるよねぇ!? いるでしょ!? どうなのよ?
先にデビューをしていた、雛形あきこさんと共に当時のグラビア界に巨乳ブームを巻き起こした山田まりやさん。
この二人のバックに付いていたのが、「巨乳をビジネスにした男」こと芸能事務所イエローキャブ社長(当時)野田義治氏です。
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チョビ髭にオールバックの頭髪、眼鏡と、その独特な風貌とキャラクターからバラエティー番組に本人が出演することも多かった野田氏ですが、ビジネス面でもこの頃が正に全盛期で、山田まりやさんを始め、所属事務所のタレントを次々に大ブレイクさせます。
小池栄子さん、佐藤江梨子さん、MEGUMIさんとグラビア界のトップ・アイドル達を数多く輩出。
根本はるみさんがデビューを果たした辺りから、イエローキャブは迷走を始め、野田氏の活動も低迷をしていきますが、いや90年代後半の「巨乳ブーム」を巻き起こした、野田氏のプロデュース能力と、イエローキャブの勢いは凄かった!
こうした流れに付随してか、この頃、若手芸人が多数登場するバラエティー「タモリのボキャブラ天国」では、巨乳をウリにした女性コンビ「パイレーツ」が人気者になったりしていましたよね。
今、考えると結構バブリーな、イエローキャブの「巨乳ブーム」でしたが、この時期に中学〜高校時代を過ごした人なら、多少なりとも、その影響を受けたのではないでしょうか?
え!? 私ですか? 私は、どっパマリしていましたよ。
多分、実家には未だに山田まりやさんが表紙のBOMBとかあります。あと、当の昔に20歳を過ぎた現在でも、ほしのあきさんや堀井美月さんや愛衣さんが大好きです。ちなみに、今一番注目しているグラビアアイドルは、渡辺万美さんです。
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責任転嫁はよくありませんが、野田社長とイエローキャブの呪縛って、自分と同じ世代の人間には絶対あると思うんですよね…。
■まとめみたいなもの
…とまぁ、90年代のサブカルチャーを駆け足で回顧してみましたが、幼少期にテレビのバラエティー番組で細川ふみえの洗礼を受け、小学校の低学年では格闘ゲームを通じて、二次元の巨乳キャラクターに出会い、そのまま格闘ゲームのデザインセンスを受け継いだ90年代半ば頃の美少女アニメを見ながら小学校の高学年を過ごし、中学校に入学する頃にはイエローキャブによる「巨乳ブーム」の流れに乗ってグラビアで微笑む巨乳タレントに夢中になる…。
という、1980年〜85年生まれの世代が…特に、世間一般から、「おたく」と呼ばれる人種が…いかに、サブカルチャーを通じて「巨乳」に親和性が高かったか分かりますね。
正確な統計をとったわけではないのですが、この世代って女性の容姿に関しては、「巨乳好き」っていう男性が他の世代に比べて多いんじゃないかな、って気がするんですよ。いや、正確な統計をとってるわけじゃないんですが…。
ただ、もうちょっと上の世代だと80年代の「ロリコン・ブーム」があって、これより下の世代になると「萌えムーヴメント」があって…。というので、世代間のサブカル受容の仕方って、この辺で大雑把に分けることができるんじゃないかな、なんて思うんですが…。
ただ、90年の細川ふみえさんの登場以降に巻き起こった「巨乳」ブームと、同じく90年代に飛躍的に発展を遂げ、2000年代の大爆発に繋がるおたく文化の黎明期が重なったということと、その影響力っていうのは、もうちょっと注目してもいいんじゃないかな、という気がします。
いや、ロリコンとかの「少女」の文脈って、よくサブカル方面でも研究や考察の対象になっている気がするのですが、「巨乳」って性的なイメージとして、見た目なんかが余りにも「分かり易過ぎる」せいか、あんまり言及される機会がないように思うんですよね。
一昔前のアニメなんかだと「巨乳は頭が悪い」みたいな偏見がよくネタにされますが、それってそのまま巨乳好きな人への偏見でもあるんですよね〜。ん〜、誰か、この辺の文化を鋭く考察してくれないもんでしょうか。
それと、今回90年代を代表するオタク系サブカルチャーである、エロゲーとAVをオミットしたんですが、別にカマトトぶるわけ1ではなく、私、この辺の文脈に疎いんですよ〜。
なので、その辺の文化にお詳しい方、もしよろしければコメント欄等でご意見いただけますと大変助かります。
さぁ、とりあえず今夜は工藤洋の漫画でも読んで寝よ〜っと。