ジャン=リュック・ゴダール「軽蔑」

 

 
DVDで、ゴダールの映画「軽蔑」を観ました。
 

脚本家のポールは、美しい妻カミーユと共に愛に満ち足りた生活を送っていた。
ある日ポールは、アメリカ人の映画プロデューサー、ジェレミーから脚本の仕事を受ける。それは、現在撮影中の映画が余りにも難解であるために、もっと俗っぽく作品を作り直せという依頼であった。
妻のために芸術家としての信念を曲げて仕事の依頼を受けるポールだったが、妻とのちょっとしたすれ違いから二人の愛は徐々に崩壊を始めていく…。

 
いや、コレは本当におもしろい映画でした!
私は普段、芸術とか高尚なモノとは全く縁がない人間なので、ゴダールの映画は自分の中でハッキリと3つの種類に分類することができます。
 
「好きな作品」「分からない作品」「分からないけど好きな作品」です。
 
で、本作は圧倒的に「好きな作品」のラベルを貼ることができる映画です。
つまりは自分みたいな人間でも、話の筋が比較的明快で理解し易く、なおかつ映像や演出面でのおもしろさも十分に堪能ができる作品。
 
ストーリーは単純で、早い話がとある男女の愛の終わりを描いた物語です。
 
劇中では映画制作にまつわる人間の葛藤や、「オデュッセイア」に絡めて物語が描いてあるので、この時期ゴダールが置かれていた状況や、ホメロス叙事詩の知識があれば、より深く作品を味わえるのでしょうが恥ずかしながら自分はその辺りの知識を持たないまま映画を観ました。…でも、凄くおもしろかったんですよねぇ。
 
とにかく、カミーユを演じるブリジット・バルドーの美しさといったらないです。
 
どんなに愛しても愛したりず、それどころか永遠に続くと思っていた愛は、ほんの些細なことから綻びを見せ始め、遂には修復不可能どころか、対象そのものが消失をしてしまいます。
愛と軽蔑、執着と諦念、激情と悲しみ、そして男と女。愛にまつわる相反する様々な言葉のやり取りがあり、それを長回しによるカメラで記録をしていく。そんな言葉の応酬を続けながら、中盤、部屋の中を延々と行き来する男女の描き方が、すれ違いを象徴しているようで特におもしろかったです。
(もっとも、本当はそんな単純な暗喩じゃなくて、もっと映像的、映画的に深い意味があるんでしょうけど…) 
 
あとは劇中で何度も反復される印象的なテーマ曲と、主演のブリジット・バルドーの輝きに呼応するかのような背景、海や樹木の輝きも素晴らしかったです。これは、チャンスがあれば是非とも劇場で見直したい映画でした。