ルイ・マル「地下鉄のザジ」

 

 
新宿の新宿武蔵野館にて、ニュープリント版の「地下鉄のザジ」を観てきました。
 
 
地下鉄のザジ」を、私は数年前にDVDで観ていて、劇中でのシュールな映像美の数々に当時かなりの衝撃を受けたのですが、本作を数年ぶりにスクリーンで見返してみての感想は、
 
「この映画って、こんなに楽しい映画だったけか!?」
 
でした。
 
「ヌーヴェルバーグ」云々とか難しいことを考える以前に、ザジが走り回るパリの風景が、明るい色彩が、ナンセンスな笑いの数々が、私の眼をとらえて離さず、上映中は完全にスクリーンに心を奪われっぱなしでした。
 
「カメラ=万年筆」どころか映画に関する自身のアイデアを、そのまま脳内から直接フィルムに焼きつけたかのような映像の数々と、映像表現に関する熱意とがないまぜになって、そのエネルギーがとにかく凄まじい。
映画は、その映像表現の上に成り立っているシュールでナンセンスなギャグとコメディ感覚で全編が構成をされているように感じたのですが、ちょっと頼りないけど洒脱なセンスを持っている「叔父さん」が今まで周囲に隠してきた自身の秘密を打ち明けるシーンなどは、非常に自由な開放感に満ちていて、そういう物語的な部分、シナリオ的な部分こそが、今回見返してみて最も私の印象に残った本作の魅力でした。
 
映画の中で描かれるザジの奔放さと逞しさ、子ども故の無知さと残酷さは確か魅力的ではありますが、それ以上に、彼女の振る舞いに翻弄される周囲の大人たちの様子こそが、本作の肝であるのではないかと個人的には思います。
 
数年前に観た時よりも、今回の方がより自然な感性で映画に接し、また楽しみことができたました。こういう思いがけぬ「再会」があるので、やっぱり映画って観るのが止められないんですよね。