テレビアニメ「そらのおとしもの」のハチャメチャなエンディングを考える

 

 
今回は、テレビアニメそらのおとしもののEDについてダラダラと語ってみたいと思います。
第二話で流れた「パンツが群をなして空を飛ぶ」という強烈過ぎる絵で、このアニメ作品の一定の評価を決定付けた感すらある本作のED。
そらのおとしもの」は、ED曲が毎回変わり、出演声優による昭和のポップソングのカヴァー曲を使用するという「遊び」が行われているわけですが、その選曲のセンスはちょっと変わっています。
 
 

■「そらのおとしもの」 EDの選曲に残る違和感

以下、各エピソードのEDで使われた楽曲や発表年やアーティスト名を、ちょっとまとめてました。
 

第2話. 岬めぐり 山本コウタローとウィークエンド 1974年
第3話. 太陽がくれた季節 青い三角定規 1972年
第4話. 戦士の休息 町田義人 1978年
第5話. ゆけ!ゆけ!川口浩 嘉門達夫 1984
第6話. 夏色のナンシー 早見優 1983年
第7話. ふり向くな君は美しい 阿久悠,三木たかし 1976年
第8話. ワイルドセブン ノンストップ 1972年
第9話. 初恋 村下孝蔵 1983年
第10話. 僕等のダイアリー H2O 1980年
第11話. チャンピオン アリス 1978年

 
年代的には、70年代〜80年代前半の曲にまとめられている感じですが、ややその選曲にはマニアックな印象を受けます。
恐らくは、「そらのおとしもの」の音楽CDを出しているコロムビアミュージックエンタテインメントがライセンスを行っている楽曲を中心としているために、このような選曲になっていると思うのですが、それでも、楽曲やアーティストのキャッチーさよりは、やや懐古趣味的なセンスが目立ち、モダンな萌え絵柄で過激なお色気ギャグを振りまく作品イメージとの間に、若干の違和感を感じるような選曲ではあります。
 
ハッキリ言ってどうにも座りが悪く、不思議な違和感のある「そらのおとしもの」EDでの昭和歌謡の引用ですが、果して、これらの楽曲は一体どのような基準で選ばれているのでしょうか?
 

 
 

■各楽曲のタイアップを考えてみる

ここで個人的に注目をしてみたいのが、これらの楽曲が当時どのように使われていたかという視点です。
映画やドラマ、テレビコマーシャルと、ポップミュージック・ビジネスとの提携、即ち「タイアップ」は70年代には音楽業界や広告、放送の分野で既に一般的な手法となっていたわけですが、「そらのおとしもの」で使われた楽曲にどのようなタイアップが行われていたのかを調べてみると、また興味深いものが見えてくるように思うのです。
 
取り合えず分かる範囲で、上記の曲の中で当時、主題歌やCMソングとして使われていたモノを調べてみました。
 

太陽がくれた季節 テレビドラマ「飛び出せ!青春」主題歌
戦士の休息 映画「野性の証明」主題歌
ゆけ!ゆけ!川口浩 川口浩探検隊」を元ネタにしたコミックソング
夏色のナンシー コカ・コーラ」CMソング
ふり向くな君は美しい 全国高等学校サッカー選手権大会イメージソング
ワイルドセブン テレビドラマ「ワイルド7」主題歌
僕等のダイアリー テレビドラマ「翔んだカップル」主題歌

 
ドラマ、映画、CMソング、バラエティ番組(を元ネタにした嘉門達夫コミックソング)、スポーツ中継…といった具合に、各楽曲でタイアップされた番組や商用意図が見事にバラけているのが分かります。
原作漫画の出版やアニメの製作に角川が関係しているかからか(?)角川映画野性の証明」の主題歌というラインがあり、70年代後半〜80年代前半に一世を風靡した「水曜スペシャル」の名物企画「川口浩探検隊」のようなバラエティ番組があり、数多くのヒット曲の発信源となった清涼飲料水のCMソングがあり、ドラマの主題歌にしても、青春ドラマ、特撮、ラブコメと各作品のジャンルはそれぞれ住み分けが行われている印象を受けます。
 
<実写版「ワイルド7」OP>

 
これが意図的なのか偶然なのかは分かりませんが、こうした傾向を見ていて一つ思うのが「そらのおとしもの」で引用されている楽曲は、当時その曲がタイアップとして使われていたドラマやCMなどの映像イメージと併せて70年代〜80年代を象徴しようとする試みが行われているのではないか? ということです。
 
つまり、映像分野との結びつきが強かった楽曲を使用することによって、昭和のテレビ風俗を再現しようとしているのではないかと。
  
以上は、私の無責任極まりない勝手なイメージによる意見なのですが、作品に対する目線の一つとして考えてみると、何となくあの不可思議な選曲にも意図や意味が見えてくるように思います。これまた、非常に個人的な印象なんですが…。
 
 

■まとめ

そらのおとしもの」のEDは何とも不思議です。各話で、昭和歌謡のカヴァー曲を使用したり、毎回アニメーションが変化する(で、この手法が一番ヒットしたのが第2話の「空飛ぶパンツ」になるのかな〜っと)という凝った試みが行われていますが、そのセンスは懐古的なセンスに基づいており、何とも分かりづらい。作品のイメージとも、やや乖離もある一方で、その辺のミスマッチ具合が逆に「そらのおとしもの」にフィットしているようでもあります。
 
同じく角川アニメの「らき☆すた」でも、マニアックな特撮ソングや各時代の流行歌が使われていましたが、アレは登場キャラクターのオタク趣味だったり、キャラクター、嗜好や年代を「立てる」のにアニメの中で非常に有効に使われていましたが、「そらのおとしもの」の場合は更なる分かり辛さがありますよね。そして、それこそが何とも不思議な中毒性を持つこのアニメの本質を端的に象徴しているようでもあります。自分は…音楽CD買っちゃいそうな気がしますね…。
 
 
 
<関連エントリ>
■「夏のあらし!〜春夏冬中〜」における昭和歌謡の引用と、新房昭之監督とテクノポップ
 
<関連URL>
■『そらのおとしもの』新大陸発見部 活動記録帳(プレセペ)
アニメファン向けのコミュニケーション&ポータルサイトの「そらのおとしもの」特設ページ。ED楽曲に関する声優さんのインタビューなんかが読めて興味深いです。