テレビアニメの最終回は難しい! けど、おもしろい!

 

 
早いもので、今年も残りあと僅か。それに伴って、アニメも各作品が物語の幕引きを、最終回を迎えつつあります。
アニメファンにとって、一年に4回訪れるセンチメンタルな別れの時間。本年度最後のお別れも徐々に近づいており、寂しい限りなのですが、いつも思うのがテレビアニメの最終回っていうのは映画や小説、漫画なんかに比べると、かなり特殊でおもしろいな、ということです。
今回は、テレビアニメの最終回について自分が思うところを色々と書いてみたいと思います。
 
 

■テレビアニメの最終回

様々なテレビアニメを見ていて特に興味深く思うのが、その放送形態の構造から生まれる「最終回」の特殊性です。
 
映画や小説、漫画といった物語の構造を持つエンターテインメントの理想的なモデルというのは、先ず始めに物語における「起承転結」の「起」があって、途中の要所要所で瞬間的な盛り上がりや、或いは適度に退屈な期間を通過しつつラストへと向っていき、最後が一番盛り上がるという構成に基づいて造られたものではないかと思います。
 
ただ、アニメというのは少々特殊で一週の放送につき30分…OPやED、CMなんかを覗けば20分と少し…の間に、それぞれのエピソードの中で起承転結が描かれるものだと思うんです。で、1クールとか2クールその積み重ねによって、作品毎の全体象が生まれてくる。勿論、1クール、2クールを使ってストーリーラインを紡いでいく作品もありますし、作品によってその描かれ方っていうのは様々なわけですが、割とその構造だけを抜き出して見てみると、オムニバスっぽいというか、自分なんかはそういう印象を受けたりするわけです。各エピソードが、ある程度独立をしていて、見る人を楽しませてくれる、という印象があります。
後々作品を振り返る時に、アニメに詳しい方ほど、作品全体の印象よりは寧ろ各エピソード毎の出来の良し悪しや、作家性を語ることが多いのも、テレビアニメのこうした構造の特殊性に依るところが大きいのではないでしょうか?
 
そして、そうした中で、各エピソードが盛り上がれば盛り上がるほど、難しくなってくるのが最終回の描き方だと思います。
 
 

■テレビアニメの最終回は難しい

テレビアニメの最終回って作るのに凄く難しいものだと思うんです。
 
例えば、原作付きのアニメ作品の場合。原作付きのアニメ作品って、ほとんどの場合がアニメの最終回を迎えた時点でも、原作はまだ続いているんですよね。つまり、原作付きのアニメ作品の最終回のほとんどは、アニメオリジナルのシナリオで展開される…ということになります。
これって、ファンとしては楽しみであり、時には不安になったりもする部分だと思うんですよね。余り、原作と乖離されてもちょっと寂しいし、ファンの反感を買ってしまう場合すらあります。かといって一先ずの区切りとしてアニメの「終わり」は描かなければいけないわけで…。
「アニメと原作は別物」と割り切って考えればいいのでしょうが、やっぱり愛着があるとなかなかそうはいかないものです。
 
 

■完璧すぎると、逆に寂しい最終回

また、見ている側としては、そもそもアニメに「終わりを求めたくない!」という気持ちもあります。
「二期、三期…」といった製作形態が一般化した昨今のアニメ製作の形態も相まって、例え一度は最終回を迎えても、ある程度の期間を置いて続編が作られるのはないか、二期があるんじゃないか…という希望を抱いてしまうんですよね。
そこで余りも、完璧に物語を締めくくられてしまうと、もう完全に終わってしまった気がして、ちょっと寂しくなってしまう。
 
例えば、私の中では「続 夏目友人帳」なんかが、そうでした。先ず、一期の「夏目友人帳」があって、そこで一区切りが行われた後に始まった二期の「続 夏目友人帳」。そして、そのラストで描かれた余りにも完璧な最終回…。満足感と同時に襲ってくる、「あぁ、もう、この続きはないんだな…」という寂寥感。
素晴らしい物語の着地を見たいと願う一方で、好きな作品ほど「next」や「to be continued」を見たくなるのはファンの本音だと思います。
 
 

■まとめ

自分なんかは単なるイチ視聴者、イチアニメファンにしか過ぎないので詳しいことは分からないのですが、アニメの「終わり」をどう描くかっていうのは非常に難しいことなんだと思います。
映画や小説のように、最後が一番盛り上がる、ラストで綺麗にまとまるのが一番素晴らしい、という価値観も勿論ありますが、放送形態や構造、或いはファン心理なんかを考えると、なかなか一筋縄ではいかないものだと思うのです。
 
しかし、だからこそ、アニメの最終回は作品毎の個性や、製作スタッフの作家性が色濃く出ておもしろい部分だとも感じるわけです。
完璧に物語を締めくくる最終回もあれば、何となくゆる〜く二期や三期を匂わせて終わる場合もあります。原作のライトノベルと同タイミングで終了した「とらドラ!」や、終盤は完全にアニメオリジナル展開ながらも圧倒的な物語の「引き」で持って最終回を締めくくった「咲-Saki-」みたいな作品もあれば、「かしまし」の「あのね…」や、「School Days」みたいなぶっ飛んだ最終回もあるわけです。(「School Days」の最後は、不可抗力によるものですが…)
 
そういう様々な「終わり」を見れることを考えれば、この時期の最終回ラッシュもそれなりに良いものなのかな、という気がしないでもありません。…いや、勿論本音を言うと非常に寂しいんですが…。