「オオカミさんと七人の仲間たち」ED「赤頭巾ちゃん御用心」 - 選曲センスと巡り合わせのおもしろさ!
前回の更新から、また随分と間が空いてしまいました(といっても、前々からウチはかなりマイペースな活動だったわけですが…)が、本格的にBLOGの更新を再開しようと思います。
色々と書きたい、話したいネタは溜まっているのですが、復帰戦というわけで今回は軽めに夏の新番組のエントリを。
夏アニメ、色々とおもしろい番組はあるのですが、自分の中で今のところ一番楽しんで観ているのが、岩崎良明監督の新作「オオカミさんと七人の仲間たち」です。
本編も御伽噺を下敷きにデザインや性格付けが成されたキャラクターや、新井里美さんによる超個性的なナレーションが、岩崎監督らしいスラップステッィクなコメディに彩りを加えていて、そのポップなフィーリングが大変にツボなんですけど、またEDが素晴らしいんですよね。
で、その選曲センスと巡り合わせが、個人的に大変おもしろいと思ったので、その辺の感想をアレやコレやと書いてみたいと思います。
■「赤頭巾ちゃん御用心」とは何か?
「オオカミさんと七人の仲間たち」のEDで、声優ユニットOToGi8が歌う「赤頭巾ちゃん御用心」。これは、日本のハードロック・バンドLAZYが70年にリリースしたヒット曲のカヴァーです。「赤頭巾ちゃん御用心」は、タイトル・歌詞の通り、御伽噺の「赤頭巾」をモチーフにしたラブ・ソングですが、これが「オオカミさん」の作品世界に非常にマッチングしているんですよね。
主役は、赤頭巾をモチーフしたキャラクターで、作品世界もこれまた御伽噺がベースになっている。もう、「オオカミさんと七人の仲間たち」というアニメ作品に対して、曲を選ぶとしたらこれしかないだろう! と言いたくなるくらいの抜群の選曲センス。
音の方を聴いてみると、原曲は「和製ベイ・シティ・ローラーズ」とでも言うべき、アイドル風バンドサウンドでしたが、「オオカミさん」ではアニメ主題歌としてチューンナップされ、ピコピコした可愛らしいテクノポップにアレンジが施されています。この曲調が、女性声優さんたちのコーラスにピッタリと合っていて、この改編は実に正解だなぁ、と。
大神さんを始めとする御伽銀行の面々がテクテク歩くアニメーションとの相性もピッタリで、これは何とも可愛らしいEDだと思います。
選曲、編曲、そしてアレンジを加えられた曲がアニメのテンポや世界観と合っているという…パズルのピースがカッチリ噛み合ったかのような生理的な快感すら感じるフィット感。
夏アニメの主題歌でカヴァー曲というと、「世紀末オカルト学院」のJ-POPカヴァーが話題を独占している感がありますが、なかなかどうして、こだわりとセンスの良さがキラリと光る「オオカミさん」の「赤頭巾ちゃん御用心」にもニヤリとさせられた次第です。
■で、もうちょっと「赤頭巾ちゃん御用心」の話を…
更におもしろいのが、この「赤頭巾ちゃん御用心」は、ポップスとして高い完成度を誇る名曲ではありますが、同時にかなり曰くつきの曲でもあるということです。元々、LAZYのメンバーはハードロック志向が強かった。そんな彼らにとって、「赤頭巾ちゃん御用心」は所属レコード会社のマーケティング的な戦略によって与えられた、自分たちの目指す音楽性とは異なる「作られたヒット曲」だったわけです。
この曲のヒット以降、LAZYはハードロック的なサウンド、イメージを高めていき、LAZY解散後、ギターのスージーこと高崎晃、ドラムのデイビーこと樋口宗孝(08年逝去)は、更なるHR/HMの追求のためにLOUDNESSを結成。
80年代に起きた日本のメタル・ムーヴメント。所謂「ジャパメタ」を牽引し、現在まで活動を続けるビッグネームとなります。
一方で、ヴォーカルのミッシェルはKAGEと名を改め、特撮番組「電撃戦隊チェンジマン」の主題歌でアニソン歌手としてデビュー。
その後も、数多くのアニメ・特撮作品の主題歌を手掛けることになるわけですが…そう、ミッシェルは皆さんご存知、影山ヒロノブさんの昔の芸名ですね。
ちなみに、LAZYのキーボーディストだったポッキーこと井上俊次さんは、アニメ・ゲーム関係の音楽会社ランティスで社長をされています。
まぁ、この辺はアニメファンの間では有名な話なので、改めて書くことでもないのかもしれませんが、こうやって見てみるとLAZYというバンドを取り巻くピープルズ・ツリーと、それにまつわる音楽の変遷は非常に興味深いものがありますね。
LAZYというバンドにとって、アニソンとハードロックとアイドル・ポップスという3つの音楽の境界線は非常に曖昧で、「赤頭巾ちゃん御用心」は、その中でもとりわけ扱いが難しい曲であったと言えます。故に、LAZYの再結成コンサートでも、バンド最大のヒット曲であるにも関わらず、決して歌われることはなかった「封印された曲」だったわけです。
そんな難しい曲が、女性声優にカヴァーされアニメソングとして再び復活するという巡り合わせのおもしろさですよね。で、そこで改めて評価される曲の良さとポップ・ミュージックとしての完成度。また、そんな曲がLAZYとの縁が深いランティスじゃなくて、ビクター傘下のflying DOGから"ポンッ"とリリースされる、今のアニメ音楽の楽しさと充実感。
何というか…音楽って、やっぱり楽しいですよね! アニメっておもしろいですよね! そんなことを改めて意識させられる「オオカミさん」のEDでした。めでたし、めでたし(新井里美のナレーション調)。
■まとめ
「オオカミさんと七人の仲間たち」。個人的に、今期のアニメの中でも、ED曲のセンスは抜群だと思います。キャラクターも可愛いし、これからのエピソードも楽しみです!
<関連URL>
■TVアニメ『オオカミさんと七人の仲間たち』公式サイト
■アニメワン - 作品詳細ページ「オオカミさんと七人の仲間たち」