スカパンクと「仮面ライダーオーズ/OOO」と「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」

 

 
今回のエントリでは、秋からのアニメ・特撮の新番組で個人的に気になったことをアレやコレやと書いてみたいと思います。
 
今期から始まった新番組も「語りたい欲」みたいなものを刺激してくれる作品が多くて、嬉しさの余り思わずテレビを観ながらニヤニヤする毎日を送っているのですが、今回注目してみたいのが仮面ライダーオーズ/OOO俺の妹がこんなに可愛いわけがないという二つの作品の音楽について。
 
この二作品。パッと見、ちょっと対照的にも見えますが、どちらも主題歌・BGMに凄く印象的に「スカ」「スカパンク」が取り入れられている作品だと思うんですよね。
 
 

スカパンクと主題歌と「仮面ライダーオーズ/OOO


 
平成ライダー12作目の作品として放映が始まった仮面ライダーオーズ/OOO。本編も、今までの平成ライダーの中で一番好きなんじゃないかな? というくらいの勢いで自分は観ているんですが、この作品のOPがまたカッコいいんですよ!
 
<「仮面ライダーオーズ/OOO」OP / Anything Goes!>

 
90年代半ば〜後半くらいに青春を過ごした人ならば、思わず懐かしさが込み上げてくるようなスカパンク調のロックナンバー!
力強いホーンセクションとコーラスに、大黒摩季さんのパワフルなヴォーカルもマッチしていて、何とも骨太な楽曲に仕上がっています。大胆に原色をレイアウトした「絵」も印象的で、耳だけじゃなく目も楽しいオープニングですよね。
また、劇中では、もっとユッタリしたスカナンバーもBGMも使用されていて、コチラも何とも印象的。
 

 
スカパンク」は、パンクロックのサブジャンルの一つで、ジャマイカの伝統的な音楽「スカ」とメロディアスなパンクロックをミックスさせた音楽です。90年代の頭に勃興したスカパンクは、ここ日本でもインディーシーンを中心に大ブームを巻き起こし、KEMURIPOTSHOTSCAFULL KINGといった人気バンドが次々に登場。当時のインディーズ・ブームも手伝って、一大ムーブメントを起こしました。
 


 
仮面ライダーOOO」は、不思議なメダルの力を借りて次々に形態を変化・進化させながら人間の欲望と戦うヒーローですが、そのメインのビジュアルになっているのは、鷹と虎とバッタが組み合わさった仮面ライダー。異なる3つの動物のイメージをミックスさせた姿は、90年代にインディーシーンで流行をしたスカパンクやミクスチャーロックのミックス感覚とソックリ…というのは考え過ぎですが、「オーズ」にスカやミクスチャーのイメージって凄くマッチしていますよね。
 
 

■スカと神前暁と「俺の妹がこんなに可愛いわけがない


 
そして、今期の作品で「仮面ライダーオーズ」と同様に、スカナンバーが劇中で印象的に使用されているのが俺の妹がこんなに可愛いわけがないです。
「俺妹」では、日常シーンなんかでのBGMでユッタリとしたスカの曲が使われており、観ているコチラを何とも楽しい気分にさせてくれます。
 
「俺妹」の楽曲を手掛けているのは、アニメ界の大人気作曲家である神前暁さんですが、神前さんといえば同じく楽曲を手掛けたアニメWORKING!!でもまさにスカパンク! というナンバーを作られていましたよね。
 
<「WORKING!!」PV>

 
この♪ンチャッンチャッンチャッンチャッという高速カッティングが作り出すリズムは、如何にも「あの頃」のスカパンク
「俺妹」で使われているスカ調の曲は、もっとテンポ遅めのオーセンティックなスカですが、らき☆すたでは、ミクスチャーロックをアニメ音楽にアジャストさせた「もってけ!セーラー服」という伝説のナンバーも生み出した神前さん。
90年代のメロコアスカパンクやミクスチャー・ムーブメントが、神前さんの音楽的なバックボーンにおいて、結構重要な要素を占めているんじゃないかなぁと思うんですよね、個人的に。
 
 

スカパンクとツートーン・スカとThe Specials

90年台に大ブームを巻き起こし、2000年代に入ってもアニメや特撮なんかの音楽面に影響を与えているスカパンク
アニメ関連では、これまでにも堀江由衣さんがスカバンドUNSCANDAL(同じくスタチャ関連で、白石涼子さんともコラボしてましたね〜)と共演した名曲「Scramble」や、ドルアーガの塔みたいにスカ系のバンドが主題歌のタイアップについた作品、♪ンチャンチャという特徴的な裏打ちやホーンを使用したアニメ主題歌・声優ソングなど、スカパンクの影響下にある楽曲ってかなり多い気がします。
 
<堀江由衣 with UNSCANDAL / Scramble>
 
 
スカパンクとアニメって相思相愛というか、きっとこの軽快でポップな楽曲と、ホーンセクションのエネルギッシュな音が、明るいアニメや声優ソングと相性がいいんでしょうね、凄く。
 

 
ただ、90年代のインディーズシーンを席巻したスカパンクも、突然「ポッ」と出てきたわけではありません。
RANCIDの前身パンドであるOperation IvyMighty Mighty Bosstones、ミクスチャーロックのパイオニアの一つであるFishboneといった、後のスカパンク・ブームのひな型とでも言うべきサウンドを作り上げていたバンドは80年代の終盤〜90年代の初頭において主にアメリカのパンクシーンを中心に散見されますが、その更に元祖の元祖、「本来はもっとユックリしたジャマイカの伝統的なスカを、パンク・ロックのスピードで演奏する」というワンアイデアを最初期に実践、スタイルを確立したバンドが、イギリスのThe Specialsです。
 


 


 
現在、スカパンクスカコアと呼ばれる(もしくは呼ばれた)ナンバーの数々に比べると、スピードは遅めに聴こえるかもしれませんが、ロンドン・パンクやモッズの影響を受け、そのエネルギーでレゲエやスカを演奏するThe Specialsの音楽は非常に画期的なものであり、そのスタイルは彼らが設立したインディーレーベルから名前を取り「ツートーン・スカ」と呼ばれ、世界中に無数のフォロワーを生み出すことになります。
 
そして、このThe Specialsサウンドアメリカのメロディアスでポップなパンク・サウンドメロコア)とクロスオーヴァーし、更に高速化したものがスカパンクです。サウンドの特徴だけを見るならば、「オーズ」や「WORKING!!」のOPはスカパンク寄りのスカ、「俺妹」のBGMなんかはツートーン寄りのスカという感じ。
元々ジャマイカの音楽だったスカを、The Specialsが演奏して、それがスカパンクになって一大ブームを巻き起こし、今のアニメや特撮の音楽にも影響を与えた。
 
ず〜っと長い歴史と先達へのリスペクトで繋がっているんですよね。だからこそ、おもしろいし、私は音楽やアニメが大好きなのです。
 
 

■まとめ

アニメや特撮作品に絡めて、スカパンクについてアレやコレやと。
スカパンク・ブームは、リアルタイムで経験している世代なので、この辺の音楽に影響を受けたであろう神前暁さんのような作曲家が活躍をされている現在のアニメ音楽は、自分に懐かしさとエネルギッシュな楽しさを同時に与えてくれます。好きだな〜、こういうの。
 
それにしても、「仮面ライダーオーズ」おもしろいですね。敵も味方も腹にイチモツ持ってそうなクセモノ揃いな中、徹底的に「いい人」な主人公が人間の欲望と対決する姿とか、コミカルな描写を多用しながらも哲学的・道徳的なメッセージをコッソリ忍ばせているところとか、同じ脚本家さんが手がけた「電王」の物語構造を用いつつ、また新たなヒーローのテイストを作っている感じが好きです。
自分の中で特別な作品である「HEROMAN」もそうですが、ダークだったりシニカルだったりするヒーローよりも、私はこういう真っ直ぐなヒーローが好きですね。
 
 
 
<関連URL>
■「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」の二重性、笑顔の行方(Subculic)