アニメで流れる○○○っぽいBGM - アニメの音楽パロディについてのアレやコレや

 

 
アニメを観ていると、映画やドラマのサウンドトラックやコマーシャルソング…にソックリなBGMを耳にすることってありませんか?
 
ある時は、劇中の雰囲気を盛り上げる為に、或いはキャラクターを立たせる為に、そして、またある時はコメディのイチ要素としてアニメの中で使われる、こうした"パロディとしてのBGM""音楽へのオマージュに満ちたBGM"
私は、アニメも音楽も大好きなので、結構こういった音、音楽の使い方に注目をしてアニメを観ています。で、その辺について言及したエントリなんかもこの拙BLOGでチョイチョイ書いていたりするんですが、今回はその辺のポイントを自分なりにまとめつつ、"パロディBGM"を印象的に使用したアニメ作品をいくつかご紹介してみたいと思います。
 
そんなわけで、今回のエントリではアニメのBGMについてアレやコレやと!
 
 

■「夏のあらし!」と「サスぺリア」

BGMに映画やドラマ、特撮作品…といった他の映像ジャンルの音楽をパロディとして用いた作品として、私の中で真っ先に思い浮かぶのが新房昭之監督の夏のあらし!です。
 

 
というのが、このアニメでは、序盤から中盤に掛けて"謎の人物"として登場をする(そして、その後は主人公たちと行動を共にすることになる)、やよゐ加奈子というキーパーソンがいるのですが、この二人のテーマ曲的なBGMとして、映画「サスぺリア」のメインテーマそっくりの音楽が使われていたんですね。
 


 
「サスぺリア」はバレエ学校に転入してきた女学生を襲う怪現象を描いたイタリアン・ホラーの名作。圧倒的にグロテスクで残酷でいながら、どこか美しさすらも感じさせるスプラッター描写や、プログレッシヴ・ロックバンドのGOBLINが手掛けたサウンドトラックなどなど、この映画を構成する様々な要素は今も鮮烈な輝きを放っており、数あるホラー映画の中でも未だに観る者に強烈な印象を与え続ける傑作です。
 
で、この映画のメインテーマにソックリな曲を劇中で使用することによって、このやよゐと加奈子という二人のキャラクター性、ストーリーでの立ち位置みたいなモノが観る側に凄く伝わってくるんです。この二人の謎の女性に「サスぺリア」のテーマが劇中で非常にマッチをしており、元の映画の不気味な雰囲気も手伝って、やよゐと加奈子のミステリアスなイメージを増幅をさせている。要するに、この二人のキャラが、この音楽を使うことによって見事に"立って"いるんですね。
勿論、元ネタである「サスぺリア」をご覧になっている方ならば、そのセンスに思わずニヤリとさせられる場面でもあります。
 
この「夏のあらし!」における「サスぺリア」のオマージュ的なBGMというのは、元ネタとなった映画の不気味な雰囲気をキャラクターのイメージ、観る側への印象へとフィードバックさせたなかなかに面白い音楽の使い方だと思うのです。
 
勿論、この「夏のあらし!」以前にも、こうした映画なり、ドラマなり、特撮作品なり、CM音楽なり…といった既存の音楽のパロディを使ったBGM、SEというのは数多くの前例があったと思うのですが、本作での「サスぺリア」風のBGMというのは自分の中で特に強い印象を残しました。
 
この他にも、新房作品では「さよなら絶望先生」で「サイコ」のパロディを行う際に、BGMもまんま完コピを行ったりとか、新房監督のコメディ作品におけるパロディって、音楽ネタも結構見受けられるんですよね。この辺も注目して観てみると、また色々と興味深いものが見えてくる気がします。
 
 

■「かなめも」と橋本由香利さんのアレンジャーとしてのセンス

夏のあらし!」以降、劇中での音楽パロディに注目をしてアニメを観るようになった自分ですが、そうした音楽の使い方が面白かった作品として名前を挙げておきたいのが、かなめもです。
 

 
本作も、劇中のアチコチで映画音楽のパロディが行われているのですが、「夏のあらし!」に比べるとコチラはもっとポップで明るい"ネタ"的な使用をされているのが特徴です。
例えば、ホラーチックなシーンでは「サイコ」のメインテーマが(この曲、本当にアチコチのアニメでパロディに使用されている気がします…)、縁日で金魚すくいをやるシーンのバックには「崖の上のポニョ」、銭湯に行けばスピルバーグの「ジョーズ」…と、とにかくかしましく映画音楽のオマージュ的なBGM、SEが使われている。
そして、それが、劇中のコミカルなイメージを賑々しく盛り上げているのです。
 


 
この楽しい音楽を作られたのは、作曲家の橋本由香利さん。J-POPアーティストへの曲提供から、こうしたアニメ関係の音楽まで幅広いフィールドで音楽をクリエイトされている方ですが、こういう既存の音をポップにアレンジ、編曲する能力に非常に長けた作曲家さんという印象を受けます。
 
例えば、近作ですとまよチキ!輪るピングドラムといった作品のBGM、劇中歌もこの方の"作品"です。
まよチキ!」では、喜多村英梨さんが歌うOP曲の「Be Starters!」をツートーン・スカにアレンジした音楽を劇中や次回予告に使用したり、「輪るピングドラム」では「ROCK OVER JAPAN」や「ダディーズ・シューズ」といったARBの元曲を、あそこまでポップなナンバーに"変身"させたりもしています。もう、これだけ見てもアレンジャーとしての才能が聴く側にビシビシ伝わってくるというか…。
 
そうそう、そういえば「まよチキ!」では携帯電話の着信音に映画ゴッドファーザーの、あの悲壮な情感を携えたテーマソングも使用されていましたね。ここからピープルズ・ツリーを紐解いていくと、「まよチキ!」を手掛けた川口敬一郎監督は、にゃんこい!」においても主人公の携帯の着信音に仁義なき戦いを、そしてBGMで布袋寅泰作曲の「新・仁義なき戦い」のテーマをパロディにしています。
 
■アニメ版「にゃんこい!」における、ふり幅の大きなBGM楽曲のおもしろさ
 
この辺の選曲、音の使用法っていうのは、近年では音響監督も務める川口監督の意匠が大きいのでしょうか? ともあれ、こういう音の使い方を見ていくと作品の繋がりとか、人の繋がりなんかも見えてくるんですよね。色々と。
 
 

■「ジュエルペットサンシャイン」の"反則技"

さて、「かなめも」を、"パロディBGM""音楽ネタ"を愉快に用いたコメディ作品とするならば、音楽の使い方が同じ方向を向いている作品としてジュエルペットサンシャインも挙げておきたいところ。
 

 
こちらも、ポップかつライトに特撮作品や青春ドラマのテーマソングやサントラを元ネタにしたBGMが劇中で多用されているんですが、コチラは、これまでに名前を出してきた「夏のあらし!」「かなめも」なんかに比べるともっとラフな音の作り方をしている印象を受けるんですね。というのが、何というか、毎回毎回半音くらいズレてるんです、メロディが
その脱臼感覚というか、音のズレ具合が、「ジュエルペットサンシャイン」というアニメ作品のカオティックかつシュールなコメディ感覚と物の見事にシンクロをしていて、この作品で使われている"音"も観る側に独特のフィーリングを与えてくれます。
 
で、この作品の一番凄いトコロ…これ、もう反則だと思うんですけど…は、既存の音楽をパロディに用いるだけでなく、ド直球に「そのまま」使っちゃうところです。
 


 
いきなりの爆発シーン、焦げてアフロになる主人公、そして、バックで流れるAEROSMITH…なんて名場面は、このアニメでしかやれない芸当なんじゃないかと思います。
テレビのバラエティ番組なんかに近い感覚だと思うのですが、既存のメロディを換骨奪胎したパロディ、オマージュとしての音楽だけじゃなく、歌を丸々そのまま使っちゃう。しかも、それをコメディの文脈で、ちょっとチャカしながら使用する
 
このアニメの音、音楽の使い方っていうのは、最近のアニメ作品の中でも特に強烈なものがありますよね。
 
 

■「けいおん!」とKraftwerk、Popcron

ラストに映画やドラマといった映像作品を元ネタにしたパロディだけではなく、ロック・ミュージックを元ネタにしたBGMを劇中で効果的に使用した作品を。で、ここで名前が出てくるのは、やっぱり「けいおん!」です。
 

 
「けいおん!」のサウンドトラックでは、様々な音楽ジャンルに影響を受けた多彩なメロディやリズムを聴くことができるのですが、中でも特におもしろいのが、ドイツのテクノ・バンド、Kraftwerkの"The Model"とテクノ・ポップのスタンダード曲"Popcorn"まんまの曲があることです。
 


 


 
"The Model"はKraftwerkが78年にリリースしたアルバム「人間解体」に収録されたナンバー、後にアメリカのハードコアなオルタナティヴ・バンド、BIG BLACKもカヴァーを行うなど、電子音楽のフィールドだけではなく、ロック・ミュージックのヒストリーそのものにまで多大な影響を与えた一曲。そして、"Popcorn"は、これまた様々なテクノ・アーティストにカヴァー(自分が特に強く認知をしているのは、動画に挙げたHot Butterによるカヴァー)をされ現在まで愛され続けている、どちらも共に"テクノ・ポップ"の元祖的なナンバーです。
 
映画のサントラのパロディやオマージュに比べると、グッとその数が少なくなるロック・ミュージックを元ネタにしたアニメBGMですが、ここでは凄くストレートに原曲に影響を受けた音楽が収められている
また、一期の「けいおん!」って二期の「けいおん!!」に比べると音楽ネタ自体が少なかったりするんですが、故にここで作曲者の背景にある音楽が明確に見えるというのは何気に貴重だったりします。
 
こういう元ネタを辿って、そのバックグラウンドにある音を知る、そしてそこからまた音や人が繋がっていく…そういう楽しみ方もあると思うんですよね。アニメの観方って。
 
 

■まとめ

そんなわけで、映画のサウンドトラックやロック・ミュージックを元ネタにしたアニメのBGMについて、徒然なるままにアレやコレやと。
こういうのって注意して観てみると、もっと沢山おもしろいものやディープなものが出てくると思うので、そこからまた別のカルチャーなり、作曲者さんの個性やバックボーンを知るという楽しみ方もできる気がするんですよね。
皆さんも、こういうお気に入りの一曲がありましたら、教えていただけると嬉しいです!